コロナ不況による雇用崩壊!解雇されても仕事を見つけ、リストラされない施策

緊急事態宣言も解除されたので、6月からはやっと普通の生活に戻れると思っていますよねー。
しかし、足元では新型コロナにより経済がガタガタになっており、野村総合研究所の試算では、日本でも失業者が265万人、戦後最悪の失業率6%代という「大失業時代」が来ると言っています。
しかし、日本のビジネスパーソンは往々にして、雇用崩壊による解雇、リストラ(退職勧奨)が起こるかもしれないとわかっていても「うちの会社は大丈夫だから、解雇は起こらない」「私はリストラの対象にはならない」といった考えを持ち、「そこにある危機」に向き合おうとしません。
ただ、「そこにある危機」に遭遇して初めて考え、行動しても遅いのです。
人生100年時代、同じ会社でなくても長く働き続けたいと考えるなら、アフターコロナの新しい「働き方」「人事制度」を理解し、自分の「ジョブ(職務)」を明確にしたうえで、テレワークにおいても仕事で成果を出す方法を知っていれば、コロナ不況も怖くありません。
前職の人事で長く労務問題に取り組んできたキャリアコンサルタントの坪根克朗が、アフターコロナの「そこにある危機」対応のために、今こそやっておくべきことについてお話していきます。
コロナ不況でどう変わるの
それでは、我々の生活に関係する、「年収」「雇用」「採用」はどうなっていくのでしょう。
まずは、経済の悪化が会社に悪い影響を与える理由から説明します。
経済悪化が会社に悪い影響を与える理由
会社は社員を抱えるために「人件費」を会社の利益の中から、原資として確保する必要があります。その原資を作り出す方法には、以下の二つしかありません。
- 事業拡大で売上を伸ばし利益を出す
- 内部留保などを取り崩す
このうち1については、ゴールドマン・サックス証券の見通しによると、日本の2020年4~6月期の実質国内総生産(GDP、前期比年率)はマイナス25%になり、その結果、現在の状態が半年も続けば、日本の産業全体で40兆円以上の市場が消える、すなわち(40兆円)売上が無くなってしまうのです。
売上が無くなれば、当然利益は出ません。
続いて2に関して、「内部留保を取り崩せばいい」という主張がありますが、内部留保されているお金は、現金で手元にあるわけでないし、崩すには株主の目がありますので、なかなか簡単にはいかないのです。
年収は大幅に下がる
解雇制限が厳しい日本では、雇用を守ることを最優先し、まずは、会社の経費削減から始め、次に所得調整が行われるのが一般的です。
今年のボーナスは激減
三菱UFJリサーチ&コンサルティングによれば、今夏の民間企業(事業所規模5人以上)のボーナス支給額は、昨夏に比べ7.6%減と大幅な落ち込みを予想しています。
企業規模や業態によっては半減したり、全く出なかったりする会社も多いと見込まれています。
社員の所得増加計画のとん挫
会社は、ここ数年で社員の所得増加をデフレ脱却の起爆剤にしたい安部政権から依頼を受けて、
- 春闘での毎年の賃上げ
- 若手や成績優秀社員などの報酬を増やす
- シニア層への生涯現役を期待しての役職定年の撤廃
- 雇用延長後の給料の削減幅の減少
といった社員の所得増加計画を行ってきました。
現状、どの会社も上記のような施策を撤廃することは無いといっていますが、「若手や成績優秀社員の報酬増」を除いて、見直しが出てくるのではないでしょうか。
雇用
野村総合研究所の試算では、失業者が265万人と言っていますが、失業者とは定義されないものの「隠れ失業(失業給付を受け取る人)」にあたる人は517万人になると言われています。
失業者と合計するとなんと782万人(隠れ失業者を含む失業率11.3%)が働けない状態になると言われています。
採用
日本企業は今ある雇用を守るため、「将来の雇用」を犠牲にする傾向が強いです。
コロナの影響が長期化すれば、新卒採用が抑制される可能性が高まると思われます。
また、解雇やリストラに伴い転職希望者は増えることになりますが、中途採用は減ることが予測されるので、今までは「売り手市場」だったのですが、これからは「買い手市場」が続くことになるでしょう。
アフターコロナでの働き方、会社はどう変わる
アフターコロナの社会では、「新しい生活様式」が推奨されることになり、テレワーク(在宅勤務)が標準の働き方になってくるので、人事制度、会社(仕事)の在り方も大きく変わってきます。
テレワーク(在宅勤務)が働き方の標準
ビフォーコロナでは、テレワーク(在宅勤務)と言えば、子育てや介護をしている社員、障がい者が利用するものでした。
しかし、テレワークでは、社員の通勤費、オフィス賃貸料といった固定費を削減できるだけでなく、社員の介護離職や育児離職を防ぐことができるようになります。
また、若者にとっても魅力的な企業に映ることもあり、会社にとってテレワークがあたりまえになってきます。
日立製作所、富士通、東芝では、テレワークを標準として、再びウィルスの感染拡大や自然災害などがあっても事業活動が維持できる、働き方「ニューノーマル」(新常態)を作ることを決意したそうです。
人事制度は、「ジョブ型」に変化
働き方がテレワークになってきた時、「社員の成果を適正に把握すること」がより重要になってきます。
勤務時間に応じて給料を払う人事制度では、在宅時の勤務状況をどのように把握するかが課題になってきます。
その結果、従来の年功で給料の決まる「メンバーシップ型」から、ジョブ(職務)に応じて賃金を決める「ジョブ型」と呼ばれる制度への導入が進んでいくと思われます。
ポストごとにジョブ(職務)の内容が「職務記述書(ジョブディスクリプション)」によって明確に定められていて、そのポストを担えるスキルとキャリアを築いてきた人材に、労働市場に準拠した水準の賃金を支払い任用します。この時、年功的な要素も終身雇用的な要素も入る余地はないことになります。
会社はプロジェクト運営が主体
会社の仕事は、生産性を上げ、スピード重視なので「少数精鋭のジョブ(職務)遂行を優先した適任人材(スペシャリスト)をジャスト・イン・タイムで招聘するプロジェクト運営」に変わっていくでしょう。
そして、会社に人材がいなければ、専門スキルを持つフリーランスに門戸を開いていくことになると思われます。
そうなると、権利で守られた正社員であっても競争にさらされることになり、その結果、会社には、管理職含めてジョブ(職務)が明確になっているスペシャリストしか残らなくなります。
コロナ不況を乗り越え、今後も働き続ける対策とは
今後も働き続けるためには、まずは、自分のジョブ(職務)を明確にし、そのジョブをテレワークで成果をだしながら、専門性を高めて、会社含めてどこでも働ける(副業含む)スペシャリスト(ジョブ型の専門領域あり)になることだと思います。
【働き続ける対策②】キャリアの棚卸で自分のジョブを明確にする
まずは、キャリアの棚卸によって、会社に貢献したり、役に立ったと思われる自分のジョブ(職務)を明確にしておく必要があります。
キャリアの棚卸とは
今まで培ってきた経験や知識・スキルを整理することです。
その際、人事、経理といった大きな括りだけではなく、その時どきで経験した具体的なタスクや成果を限りなく、実績数字で表現し、他人が読んでわかる文書にしておく必要があります。
文書化にあたって、職務経歴を時系列に思いつくまま、並べるだけでは意味がありません。
将来の異動、出向、転籍や転職に備えて、今から「ジョブ(職務)経歴書」として少しずつ準備しておくのです。
ジョブ(職務)経歴書は転職会社のサンプルを利用
効率よく作成するには、自分の仕事の職種(ITコンサル、経理等)のジョブ(職務)経歴書のサンプルを転職サイトで検索して見つける必要があります。
転職サイトに掲載されているサンプルを勧める理由は、転職サイトが職務経歴書を掲載している意味は「このサンプルと同じくらいの記述ができていないと転職は無理ですよ」ということですから、内容を理解したうえで真似して記述していけばいいのです。
【働き続ける対策③】テレワークを活用する
今後は、テレワークでの仕事があたりまえになるので、テレワークを使いこなして成果に結びつけなければいけません。そのための方策を「経営者」「管理職」「担当」にわけてお話していきます。
【経営者としての方策①】テレワーク効果の把握
会社の評価として、社員からアンケートをとって、メリット/デメリットを把握することも必要ですが、会社としてもテレワークによって「会社の生産性や受注活動にどのような影響が出たか(仕事は廻っていたか)」を経営者自らが現場の意見を聞いて、テレワークの有効性を検討する必要があります。
【経営者としての方策②】社員自宅のテレワーク環境の支援
テレワークが会社にとって、メリットが大きいものと判断すれば、社員のテレワーク環境の充実のために、通勤費やオフィス代などの固定費が浮いた分、会社は、社員に還元(ネット環境、通信料、机、椅子等)しても良いのではないでしょうか。
日立などでは、「光熱費」を負担するそうです。
【管理職としての方策①】家庭事情を配慮する
テレワークは、「ワークライフバランス」ならぬ「ワークライフミックス」になります。
テレワークで成果を出してもらうため、社員の各家庭の事情を把握してあげて、それなりの配慮が管理職には求められます。
【管理職としての方策②】業務報告だけにしない、一言付け加える
テレワークでのメールやテレビ会議では、ついつい「○○の件はどうなっているの」「△△期日に間に合う」等の要件だけのやり取りになってしまいがちです。
それだけだと、対面コニュニケーションが少なくなっている分、部下から「冷たい」「ドライ」と感じられてしまいます。
そんな時は、人柄が感じられる一言(近況とか、最近気がついた良い話等)加えることを考えてみてはいかがでしょうか。
【担当者としての方策】能動的でアウトプットしないと評価されない
会社は、テレワークで社員が「待ちの状態」になっていることを嫌います。
そのため、自分は今、何をやって、いつまでにアウトプットを出せるか、常にアッピールが必要です。
そして、より高い評価を得るためには、能動的に業務プロセスを周囲と共有し、テレビ会議で積極的に発言するなど、自分が何をやっているかをアピールする努力が必要になるでしょう。
【働き続ける対策④】スペシャリストになるための環境も重要
ジョブ(職務)が明確になったからと言って、簡単にスペシャリストにはなれません。
そのため、会社内だけでなく、副業含めていろいろ場面で働いて、スペシャリストになるために腕を磨く必要があります。
インディペンデント・コンストラクター
インディペンデント・コンストラクターとは、「会社から業務を請け負う自営業者」を意味していて、最近では定年退職後や雇用延長後のシニアの方々の働き方として注目を集めています。
そして、この働き方は、現役中でも可能なのです。
会社の中の組織を超えた複数のプロジェクトから、「予算・労務管理」「プロジェクト管理」「セキュリティコンサル」「ITインフラ構築」等の各専門領域のスペシャリストとして、業務を受け入れておけば、ジョブの専門性は磨かれてきます。
スキルマーケットや副業人材マッチングで仕事を見つける
そして、スキルマーケット(coconala)で自分のスキルを売ったり、副業人材マッチングサービスで副業をみつけてもいいかもしれません。
ギグエコノミーの世界で働く
ギグエコノミーは、欧米を中心に広まっている仕事のやり取りで、それぞれの楽器のプロフェッショナルが個人的に集まって音楽を奏でるように、各分野のスペシャリストがプロジェクトごとに集まり、イノベーションを起こしたり、インターネットを通じて個人が単発の仕事を受注できる場になります。
まとめ
アフターコロナでは働き方に対する価値観が大きく変わります。
そして、会社に依存し、ジョブを明確にせず、スキルや専門性を磨いてこなかった社員は会社にとっての一番のリスクになる可能性があります。
今回は、そうならないためのお話しをしてきました。
ただ、「先行きが不透明だからこそ、正社員として会社だけに依存するのは怖い。会社が傾いてリストラされたらどうしようもなくなる。だったら自分のがんばり次第という環境の方が安心」といって、スペシャリストのフリーランスになる人もいます。
人生100年時代、自分のキャリアは自分で考える(キャリアの自律)が言われています。
TC坪根キャリアコンサルティングOfficeでは、キャリアの自律(キャリアデザイン)を支援する「中高年キャリアデザイン相談サービス」を提供しています。