人材紹介会社と人材派遣会社の違い?どっちに登録したらいいの?
仕事を探すとき、どうしますか?
新聞広告?ハローワーク?いまの時代、ネット登録して、リサーチするのが当たり前になっています。
色々な転職サイトがありますが、マッチングなのか派遣なのか、いまひとつ分からないままに、登録していませんか。わが国の労働環境や人材サービスについて、調べてみました。
職探しの時、働き方に悩む時、知っていると案外役立つかもしれませんよ。
雇用形態別人数
働いている人って、何人くらいだと思いますか?
わが国の労働者全体は、5,620万人(役員除く)。
無期雇用者(正社員など)は約6割、有期雇用者(非正規など)は約4割です。
パートは1千万人超、アルバイトと契約社員・嘱託は夫々500万人規模となりました。派遣社員は案外少なくて、2.5%で約142万人、ここ15年ほど大きな変化は見られず毎年2~3%を推移しています。
種 別 | 人 数(万人) | 割 合 | |
無期雇用 | 無期雇用者 | 3457 | 61.5% |
有期雇用 | パート | 1048 | 18.7% |
アルバイト | 464 | 8.3% | |
契約社員・嘱託 | 423 | 7.5% | |
派遣社員 | 142 | 2.5% | |
その他 | 84 | 1.5% | |
合 計 | 5618 | 100.0% |
総務省「労働力調査詳細集計」(2019年1~3月平均)
就職の経路(斡旋機関など)
どういう経路で就職したのでしょうか?
広告が最も多く約3割、縁故が2割、ハローワークおよびハローワークインターネットサービスで2割、これで約7割を占めます。
特筆すべきは、縁故が2番目です。友人・知人を含めて、常日頃の人脈づくりが大切であること、改めて感じますね。
民間職業紹介所が33万5千人、4%とは、案外少ないですね。
統計は、調査を基にしているので実数ではないものの、大まかな傾向はとらえていると思われます。
ネット、人脈、ハロワ、学校/会社、民間の順であること、覚えておきましょう。
区 分 | 入職者数(千人) | 割 合 | 備 考 |
広 告 | 2,212 | 29% | 求人情報誌・ インターネット等も含む |
縁 故 | 1,466 | 19% | 友人・知人等も含む |
ハローワーク | 1,384 | 18% | |
学 校 | 589 | 8% | 専修学校等も含む |
前の会社 | 383 | 5% | |
民営職業紹介所 | 335 | 4% | 学校を除く |
ハローワーク インターネットサービス |
248 | 3% | |
出 向 | 174 | 2% | |
出向先からの復帰 | 76 | 1% | |
そ の 他 | 800 | 10% | |
合 計 | 7,667 | 100% |
厚生労働省 平成30年雇用動向調査 ※重複無しの単一回答
人材サービス業界
人材サービス業界全体をみてみましょう。
求人広告、職業紹介、人材派遣、請負事業(アウトソーシング)の4つの事業形態があります。
市場規模は約10兆円。国家予算が約100兆円なので10分の1、コンビニ業界が約11兆円と比べると、人材サービス業界は、相当大きな業界であることがわかりますね。
事業形態 | 年間就職者数 | 年間取扱求人数 | 事業所数 | 市場規模(売上) |
求人広告 | 229万人 | 1471万件 | − | 8530億円 |
職業紹介 | 59万人 | 564万件 | 19355事業所 | 3876億円 |
派遣 | 177万人 | 72万件 | 37380事業所 | 6兆5798億円 |
請負 | 77万人 | 16万件 | − | 2兆1500億円 |
一般社団法人 人材サービス産業協議会(JHR)『2030年の労働市場と人材サービス産業の役割』
求人広告
求人広告は、新聞広告や情報誌やネットを使って、求職希望者へ企業からの求人情報の提供行い、マッチング機能を担います。
就職の経路では求人広告のシェアがトップでした。今後ますます、広告のネット化が進み、人材サービス情報のインフラ(※)として活用されることでしょう。ネット上の「求人サイト」や「転職サイト」を利用して、気軽に自分で求人情報を探し、ネット上で応募までできるのが魅力です。
また、企業側がどのような点に留意して求人情報を出しているのか、気になる方は、ご参考までに。
公益社団法人 全国求人情報協会『募集・採用の基礎知識 ~募集・採用を行う求人企業・事業主の方へ~』
※インフラとは、道路・通信・公共施設など「産業や生活の基盤となる施設」のこと
職業紹介(人材紹介)
職業紹介会社は、求職者と、求人企業のマッチングを行います。
求職者からみれば職業紹介、企業からみれば人材紹介で、同じ会社のことです。リクルートやパソナですね。雇用が決定した場合に、求職者と企業が雇用契約を結びます。職業紹介会社は「転職エージェント」と呼ばれることもあります。次項の人材派遣会社との最も大きな違いは、雇用契約を結ぶか、結ばないか、です。
職業紹介会社は、サービスの形態によって3つに分類されます。
- 一般紹介・登録型 : 企業の求人の依頼を受けてから、求職者に企業を紹介し、希望する候補者を求人企業に紹介する
- サーチ型 : 企業の求人の依頼を受けて、条件に合う人材を探して、求人企業と引き合わせる。ヘッドハンティングなど、幹部候補、役員クラスでの求人依頼が主
- 再就職支援型 : リストラ対象や定年後の社員等の再就職を支援
求人企業は「質の高い人材」を採用する為に、高額な紹介料を払って紹介会社を起用します。
企業に人材を紹介する場合、求職者の意欲や興味・関心、強みや弱みなどを含めたキャリアの志向性やキャリアパスなど、学歴や職業経験の有無などの募集要件を超えた独自のスクリーニングを行うことにより、マッチングの精度を高めています。
求職者は、経験豊富な専任の担当者からサポートを受けて職探しが出来る点が、利点と言えましょう。
職業紹介会社は、成功報酬として求職者の想定年収の30%〜35%を相場として、紹介手数料を企業より徴収します。これが売上げとなります。
- 想定年収が500万円であれば、500×30%=150万円
- ヘッドハンティングの場合、想定年収が3000万円であれば、9百万円〜1千万円
マッチングすが成功すれば、教育訓練の必要なもなく、求職者にかけるコストが殆どないため、利益率は高水準となります。
以前『ヘッドハンター』というTVドラマがありました。さまざまな事情を持つ働く人々に焦点を充て、葛藤を乗り越えて転職を遂げていく人間模様が描かれていました。TVドラマは、時代を反映しているので、ヘッドハンティングが、社長さんなどのトップの引き抜きだけでなく、スキルを持っている一見普通のおじさんもヘッドハンティングの対象となっており、興味深かったです。ドラマでは、紹介手数料の話はなかったのですが。
再就職支援は、リストラ対象の社員や定年後の社員に対し、企業が紹介会社に費用を払って、行うものです。再就職支援は、わが国の中でも上位3%の大企業のみが行っている、と言われています。
紹介手数料は、法律により以下のいずれかを選択可能です。
- 上限制手数料 : 支払われた賃金額の10.8%相当額を上限に徴収
- 届出制手数料 : 求職者の年収の50%を上限に徴収
現状のビジネスモデルでは「届出制手数料」を選択するケースが大半と言われています。
有料の職業紹介業を行う場合の財産基準 ※事務所が一カ所の場合
・資産の総額から負債の総額を控除した額が500万円以上
・現金・預金が150万円以上
人材派遣事業
人材派遣会社が雇用主となり、就業希望者と雇用契約を結び、企業が必要とするスキルを持つ人材を、一定期間派遣する形態です。
業務の指示は派遣先企業から受けますが、給与は派遣会社から支払われ、社会保険料や教育訓練も派遣会社の責任で行います。正社員との違いは、雇用契約を結ぶ会社と、実際に働く会社が違う点です。リクルートやパソナなどは、人材紹介と人材派遣の両方を行っています。
派遣には、現在2つの形態があります。
- 一般派遣(登録型派遣) : 派遣の仕事を希望する人材を人材派遣会社に登録し、希望や条件の合う派遣先企業との派遣契約が結ばれた時に、派遣社員として雇用契約を結ぶ。
- 紹介予定派遣 : 派遣社員が派遣先企業と直接契約(正社員・契約社員)を結ぶことを前提に、一定期間(6ヶ月迄)の人材派遣を行う。
2015年9月の労働者派遣法改正により、すべての派遣社員は、業務の区別なく同じ派遣先企業の同じ組織(課等)で働くことができるのは3年までという所謂「3年ルール」が設けられました。
厚生労働省HP 派遣で働く皆様へ
派遣料金の70%を派遣社員の賃金を占め、社会保険料が約11%、有休費用約4%、85%が派遣社員の実費、そこから会社経営に関する諸経費を差し引いて、残った約1.2%が営業利益となります。
有料の職業紹介業を行う場合の財産基準 ※事務所が一カ所の場合
- 資産の総額から負債の総額を控除した額が2000万円以上
- 上記の基準資産が、負債の総額の1/7以上
- 現金・預金が1500万円以上
1986年に労働者派遣法が作られ、それまでは人材派遣は国に正式には認められていませんでした。今般の派遣法改正は、有期雇用(非正規)を3年に限定し、長期にわたる派遣での雇用から、無期雇用化(正社員)を進めようとしたものですが、正社員になった人がいる一方で、逆に派遣切りに使われるケースもあります。法律は解釈次第のところがあり、難しいですね。
『派遣の品格』の大前春子のように、即戦力のスキルを武器に時給3000円で3ヶ月限定で働く、という選択も “あり” かもしれませんね。
請負事業(アウトソーシング)
請負は、企業から人事業務や経理業務、コールセンターなどの仕事を一括で請負い、業務指示や労働者の管理も行う業務形態です。アウトソーシングともいいます。
企業は、大量・単純な機械的な作業業務をアウトソーシングすることで、コア業務に人材を集中できるなどのメリットがあります。
請負は、企業に対し仕事の完成を約束します。企業と請負社員との間に指揮命令関係は生じません。請負会社は、業務遂行上必要な能力やスキルを持っている人材を採用し、業務に習熟するように教育や育成を行います。請負事業には様々な業種がありますが、コールセンターなら、りらいあコミュニケーションズやトランス・コスモスなど。
アウトソースされた仕事は、数年のうちに企業側にはその仕事のノウハウが社内に無くなり、誰も分からなくなる事態になる可能性があります。
わたしは以前、アウトソースされていた、システムの社員教育とヘルプデスク業務を、システムのバージョンアップ時に、会社に取り戻す仕事をしたことがあります。一度失ったノウハウを取り戻すのは大変な労力と作業でした。
人材マッチングにおける重要な4つの要素
人材と企業のマッチングの際、特に重要なのは、希望条件、スキル、人柄、属性の4つといえます。
- 希望条件 : 職種、業務内容、報酬、勤務時間などの基本的な雇用条件
- スキル : 募集職種の業務を遂行する上で必要となる専門的な知識や技術、コミュニケーション力、問題解決力、汎用的な知識や経験(ポータブルスキル)
- 人柄 : 求職者の価値観、ものごとのとらえ方、性格など
- 属性 : 居住地、保有資格、募集職種における過去の経験年数など
これらについては、ジョブカードやキャリアシート等を用いて確り棚卸しを行いましょう。
法律関係
人材サービスには様々な法律が絡んできます。ここでは、名称のみあげておきます。
わたし達は、普段気にしていませんが、いろいろな法律に守られているのですね。
- 労働契約に関する法律 : 労働基準法、労働契約法、労働安全衛生法、最低賃金法
- 労働市場に関する法律 : 職業安定法、労働施策総合推進法、労働者派遣法、職業能力開発促進法、高齢者雇用安定法、障害者雇用促進法、若者雇用促進法
- 均等、均等待遇に関する法律 : 男女雇用機会均等法、パートタイム・有期雇用労働法
- 社会保障に関する法律 : 健康保険法、国民健康保険法、厚生年金保険法、確定給付企業年金法、確定拠出年金法、国民年金法、労働者災害補償保険法、雇用保険法
- 税金に関する法律 : 所得税法、法人税法、消費税法、地方税法
人材紹介と人材派遣のメリット・デメリット
最後に、ビジネスとしての人材紹介業と人材派遣業のメリット・デメリットをあげておきます。
人材紹介業 | 人材派遣業 | |
市場規模 | ○ | ◎ |
継続収入 | ○ | ◎ |
利益率 | ◎ | ○ |
参入障壁 | ◎ | ○ |
いつか仕事を探す時、人材紹介なのか人材派遣なのか、少なくとも違いをわかって取組みたいですね。こちらは必死でも、先方はビジネスです。稼がせてあげてるんだ位の強い気持ちを持ちましょう。
まとめ
わたし達が働く環境は、日々刻々と変わっていきます。アフターコロナ後、雇用環境やテレワークの導入で、働き方がどんどん変わっていくことでしょう。
変化する環境の中で、自分らしい生きがいや働きがいを、どのように見つけて、どのように自分の人生を設計していくのか。
人材サービスのサポートを得て、幸せな未来をつかみましょう。