国家資格キャリアコンサルタント集団が斬る仕事論

障害者家族の定年後の働き方に備えていくための心構え

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国家資格キャリアコンサルタント。 ヤングケアラー・元ヤングケアラー・障害者家族のためのカウンセリング 「カウンセリングルーム あしたの」代表 学校図書館専任職員として障害を持つ子どもたちに、今は障害者の日中活動の支援を行う。弟も障害者であり、自身もかつては亡くなった母の介護と弟のケアを継続しているケアラーという当事者。障害者の家族の生活は雨や嵐の日もあるが、大好きな絵本「ぼちぼちいこか」(偕成社)の言葉を合言葉に今日を生きている。

定年後はどんなライフプランをたてていますか?

70歳まで働く?

それとも、子育てから解放されて余裕が生まれて、仕事も一度リタイアして自由な時間ができる?

ぼんやりとしたイメージでは、障害者家族として、お金や生活など先の見通しが持てないといざという時に役に立ちません。

また、何とかしようと気持ちはあっても、50代以降になると体力は20~40代と同じように動かず、物事が進みづらくなります。

そんな中で、障害者本人のための「親なきあと」と自分たちの親の介護、体調の変化も視野に入ってきます。

今回は定年後の働き方を中心に、今何をすべきか自覚し、それをやり抜く覚悟を持つための心構えをお伝えします。

障害者と共に暮らしていくために定年後のキャリアの設計図を用意する

定年までは仕事優先だったかもしれません。

でも、定年を迎えるにあたっては収入も築いてきた地位も今まで通りとはいきません。

また、障害者本人も家族も年齢を重ねて介護という役割も増えるかもしれないという老後も見据えていく必要があります。

退職してからでは働き方を考えるのは遅い

40代、50代から障害者と共に暮らしていくために、定年後のキャリアの設計図を用意しておかなければいけません。

年齢を重ねると体力的・精神的にも負担が出てきます。

余裕が出てきたらしようと希望やビジョンを頭の中で描いているだけはいつまでたっても形になりません。

今は目の前のことで一杯と言わず、普段の時間の過ごし方を少しずつ見直していきましょう。

動き出さないといつのまにか時間は経ってしまって、いざという時には困り果ててしまいます。

また、定年後への準備不足では、例えば、預金を取り崩していくと生活を続けるのも危うくなってしまいます。

情報収集をして、具体的な将来の計画を立て、準備をし、動いていくことが大事

障害者本人の収入を視野に入れる

就労継続B型事業所の平均工賃でも収入があればよいという考え方で家族で支えていくと決めたとします。

平成30年度 月平均工賃 16、118円

そうなると健康に気を配りながら70代まで働く覚悟がいります。

そのためには、定年後は正社員でなかったり、収入減、週5日フルタイムではないなど以前の肩書や収入に執着しないで、何事も受け入れる心づもりがいることを覚えておきます。

定年後の働き方の種類

定年後の働き方はどんな働き方があるのかを5つ紹介します。

再雇用

メリット

  • 65歳まで働ける。
  • 収入は安定している。
  • 大きく生活スタイル変わることもないので、障害者本人の環境変化も少ない。
  • 仕事内容の想定はおおむねできる

デメリット

  • 1年契約更新となる。
  • 65歳以降の働き方を考え、転職活動が必要になる。
  • 責任の重さがなくなったこと、年下の上司からの指示に従うなどで不満がたまったり、戸惑うことが出てくる
転職

メリット

  • 今まで培った人脈を生かして仕事につける可能性がある。
  • 今まで培った能力と経験を期待されているのでやりがいはある。
  • 結果によっては収入アップものぞめる。
  • 70歳以上も働くことができるので、障害者本人とのライフプランも考えやすい

デメリット

  • 前職と違う職種であれば慣れるまで時間がかかるし、今まで通りの働き方が難しい。
  • やりたい職種と求人のギャップがありなかなか決まらない。
  • 前職にこだわらずなんでも学ぶ姿勢が大切になる
I・Uターン

メリット

  • これまでの枠にとらわれることなくやってみたいことを試せたりしてやりがいはある。
  • 都心から離れてテレワークでも仕事ができる。
  • 70歳以上も働ける可能性もあり、障害者本人との生活プランも考えやすい

デメリット

  • 移住であれば候補地を探し、情報収集し、現地体験、仕事、家を決めるなど時間がかかる。移住の場合は収入減の可能性もある
  • 障害者本人と一緒となれば、治療先、支援先など一からのスタートとなる。
  • また、障害者本人の環境の変化が大きいとなじむまでに時間がかかる
  • Uターンであれば、自分の親の介護と障害者のケアを考える必要がある
フリーランス・起業

メリット

  • 社会との接点が持てる
  • 今まで培った人脈を生かして仕事につける可能性がある
  • 今まで培った能力と経験を期待されているのでやりがいはある。
  • 趣味を仕事にした場合、好きなもののため、満足度が上がる
  • 70歳以上も働くことができるので、障害者本人との生活プランも考えやすい

デメリット

  • 起業に必要な資金の調達や企業までの段取りを考えるための時間がかなり必要となる。
  • ビジネスが軌道に乗らないと収入は期待できない。
  • 体調や資金面でどこまで続けられるかどうかが不明な点がある。
アルバイト

メリット

  • 精神的には楽になる
  • 障害者に関する親なきあとの手続きにかける時間が増える

デメリット

  • お金が余裕にないため障害者のケアと自分たちの親の介護の資金面で不安感が増す。
  • 今まで通りの生活リズムではなくなるので、崩れがちになり、体調を整えていかないといけない。

自分にとって働く意味を考える

定年後も働く理由は何ですか?

  • 親なきあとも見据えて家計の足しにする、
  • まだまだ社会参加したい、
  • 生活費やそのほかの出費を考えて働けるまで働きたい

など

なぜ、定年後も働きたいと思っているのか一度紙に書き出して、「働く」に向き合っていきます。

自分にとって〈働く〉という意味は?

就職活動においては書類選考で落とされるということもあり得ます。

一度だけではなく、何度もということも。

そうなれば、就職活動への気持ちもしぼんでしまってますます上手くいかないという悪循環に陥ってしまいます。

そこで、定年後の働き方を考え始める時に職務経歴書を書くこともあるので、次のことを振り返って書いてみます。

これまで仕事を通じて学んだこと、経験したこと、成長したことなど積み上げてきたキャリア。

「自分という人間とは」に冷静に自分を振り返る時間を取り、丁寧に向き合っていき、頭の中を整理していきます。

周りの手を借りて人生の棚卸しをする

自分のことになると意外とわかっていないということも。

仕事を探す際に利用したハローワークなどでこれまでの人生の棚卸しをしてみるのもありです。

どんな選択をしてもやっぱり選ばなければよかったと後々後悔してしまうのは残念なこと。

選ぶ理由をしっかりと見つめてどの働き方をしていくのか結論を出していきましょう。

定年後の働き方の心構え

これまではキャリアアップや収入アップを目指したりして競争の世界にいていたと思います。

まずは、定年後は今までとは違った価値観や視点を持つことを心がけていきます。

・自分のために職場以外の趣味などのプライベートを豊かにしていく

・家族のために親なきあとを近くに感じながら取り組んでいく

・ちょっと相談したり応援してくれる仲間を探していく

肩の力をいれずに変化になじんでいくための心の持ち方

初めての場所、人間関係、新しい環境に身を置くことは今までとは全く違うもの。

最初は戸惑ったり、不安を感じたりします。

そんな中で、先入観を持たず、どう目の前の現実を受け入れていくのかを難しいと感じるかもしれません。

でも、すでに障害者家族は違いを認めていく力は持っています。

肩に力を入れ過ぎずにいろいろな人がいて、いろんな環境があるんだぐらいの心の持ち方で、変化になじんでいきましょうね。

そうやって心がけるだけで「やっていけるかも」とちょっとずつ自分の自信にもつながります。

一人でできる仕事はない

自分も何かしら応援してもらいながら仕事を続けてきています。

決して一人で仕事をしている訳ではないのです。

定年後の働き方は、さらに若い世代の人と仕事をすることにもなります。

「今どきの若い人は」なんて眉をひそめないでくださいね。

世代が違えば置かれている環境や価値観が違います。

そのことを理解してお互いに協力して仕事を成し遂げていきます。

一緒に働けるのは、家では味わえない素敵な刺激があると視点を変えて、柔軟な思考を持ってみましょう。

また、周りの声を素直に聞いて、臨機応変に合わせていくことも定年後は大切なスタイルとなります。

定年後はチャレンジ精神も大切

以前テレワークなんてとおもっていたのに、コロナ発生から導入されて働き方も大きく変わりました。

「定年後に働く」ということ。

ポイント
  1. 今までの人生の経験プラス新しい経験ができて増えるという気持ちを持つ
  2. チャレンジ精神をも忘れないこと

新しい環境では、周囲の人たちがどんな仕事をしているのか関心を持ってみると意外な発見もあったりして面白みも出てくるもの。

今までのやり方をいったんストップして、現在の習慣に変えてみるように工夫と実行を繰り返していきます。

家族で話し合う

定年後の働き方は、障害者家族としてどこまで責任を負うべきなのかという問題でもあります。

どんなに親なきあとを心配していても家族ができることは限りがあります。

働き続けることでどこまでできるのか、限界と向き合います。

そこから障害者家族として障害者と共にどんな定年後の暮らしをつくりたいのか具体的に形にしていきます。

家族でライフプランを共有していくのです。

定年後のリスクと備えを想定していく

自分だけではなく家族のライフプランも考えていきます。

障害者本人も確実に年を重ねます。

ということは、どこまで一緒に住むのかだったり、いつまで仕事や通所施設に通えるのかも視野に入れて検討しなければいけません。

●リスク:住まいや介護などについて資金面など

●備え:自分の周囲と取り巻く人や環境を見直して、どれくらい支援先があって、応援してくれる周りの人たちがいるのかを洗い出します。

そんなのないと思わずないで、これまでの人の財産が必ずあります。

ライフプランのメンテナンスをしていく

時間がたてば今何が必要でメンテナンスがいるのは何かを定期的に見ていきます

その時々で優先事項が変わってくる中で、先の見通しが立てられないことは不安になります。

そこで、今取り組める目標を立てます。

 

ポイント

高い目標を設定すると、思い通りにいかない途中であきらめてしまいます。

一段ずつ階段を上るように確実にできる目標ににし、毎日取り組めるようにします。

 

まだまだ大丈夫と過ごしていては時間はいくらあっても足りません。

年を取るということは今までできていたことがちょっとずつできなくなっていきます。

まだまだではなく、決めた日から動き出します。

話し合いのポイント

障害者本人やきょうだいの意見もしっかり聞きます。

それぞれの考え方を否定せずに語り合います。

また、悩んでいること解決しておこうと思っていることについてしっかりと話してください。

自分は伝えたつもりでも、家族に届いなければ伝わったことにはなりません。

時間はかかるかもしれませんが、話し合うことは自分では見落としていたり、プランを立て直した方がいいななどの発見もあるので、大切にしてください。

過去に目を向け過ぎません

定年後をみて、これまでを振り返ってもっと地位や収入を目指していれば、こんな風にならなかったと思いません。

いいことは全くありませんし、前に進むエネルギーにはなりません。

障害者と共に過ごしてきた時間は大変なことばかりですか?

心がほわっと温まったり、笑いあったり肯定的に受け止めることが次の人生を自分らしく歩き出せます。

終わり

定年後の働き方はいつかだれかの問題ではなく、自分に起こる出来事です

介護やケアは家族で何とかなると思っていても若い頃のように無理はきかなくなっていることを自覚していきます。

仕事をしながらたくさんの役割を担っているうちに「つらい」「誰かに助けてほしい」「疲れた」という時は自分のキャパオーバーになっているということ。

今からでも遅くありません。

ちょっと先の未来を見据えて自分から定年後を意識して始める時間です。

時間的な自由も簡単にいかないことも出てきますが、これからの障害者と共に過ごす定年後の目標、自分の時間の過ごし方、これまでの生活スタイルや能力があった働き場所選んでいきましょう。

 

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国家資格キャリアコンサルタント。 ヤングケアラー・元ヤングケアラー・障害者家族のためのカウンセリング 「カウンセリングルーム あしたの」代表 学校図書館専任職員として障害を持つ子どもたちに、今は障害者の日中活動の支援を行う。弟も障害者であり、自身もかつては亡くなった母の介護と弟のケアを継続しているケアラーという当事者。障害者の家族の生活は雨や嵐の日もあるが、大好きな絵本「ぼちぼちいこか」(偕成社)の言葉を合言葉に今日を生きている。










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