【男性の育休】パパの育休はママとどう違う?メリットや助成金活用も

「男性従業員が育休を取得したいと言っているが、女性とどう違う?」
「男性の育休制度をきちんと就業規則に盛り込みたい」
「助成金を活用できると聞いたけど??」
最近、事業主の方から上記のようなご相談をいただきます。
小泉環境大臣の育休取得や男性の国家公務員に1カ月以上の育児休業・休暇の取得を促す制度を2020年度に始めるなどのニュースでも分かるように、これから男性の育児休業はますます多くなりそうですね。
今回は、国家資格キャリアコンサルタント・社会保険労務士である@渡邉円が、男性の育児休業についてメリットや助成金活用も含めご紹介します。
男性の育児休業取得の現状
まずは、男性の育児休業取得の現状について見ていきましょう。
育休取得率は増加傾向にあるものの低迷
令和元年「男性の育児休業の取得状況と取得促進のための取組について」(厚生労働省)では
〇女性の育休取得率が直近10年間で80%以上を維持
〇2018年度における男性の育児休暇の取得率は6.16%で過去最高
という報告がされています。
男性の育休取得者は年々増加傾向にあるものの、2020年に男性の育児休業取得率を13%にするという政府目標には遠く及ばない状況です。
(厚生労働省:男性の育児休業の取得状況と取得促進のための取組について)
育休取得期間は短め
平成27年度「雇用均等基本調査」(厚生労働省)によると育児休業の取得期間は、女性は9割近くが6か月以上となっている一方、男性は5日未満が56.9%、8割以上が1か月未満となっています。
育休期間が短い理由として、以下のことが考えられます。
〇育児休業を取得しづらい雰囲気だった
〇業務が繁忙で職場の人手が不足していた
〇自分にしかできない仕事や担当している仕事があった
これまで育休は女性が取得するものという考えが会社側に根強くあり、男性の育児休業制度が整備されていなかったからではないでしょうか。
イクメンプロジェクトの推進
育休を取得する男性の割合が低迷していることをうけ、「育てる男が家族を変える。社会が動く」のスローガンのもと、男性の育児休暇の取得を推進するイクメンプロジェクトが始まっています。
現在、育児にもっと関わりたいという男性が多くなっています。
また、育児休業の取得希望がありながら取得できなかった男性社員の割合は、3割にものぼります。
パパが育休を取ると何がいい?
パパが育休を取ると、
- 収入の減少(育児休業給付金はもらえるが、給料の50~67%)
- 出世がしにくくなる
- 職場に悪影響を及ぼす(他のスタッフに負担が増えるなど)
などマイナスイメージが先行しがちですが、メリットもたくさんあります。
メリットは次のとおりです。
1:家族の絆が深まる
2:時間の使い方がうまくなる
3:企業のイメージアップ
では、順番に見ていきますね。
メリット1:家族の絆が深まる
産後のママは、慣れない育児や3時間ごとの授乳などで心身共に疲れています。
この時期にママのサポートができることで、育児における夫婦のコミュニケーションも増えて夫婦の絆がグッと深まります。
また、会社に対しても育児休暇の機会を与えてくれたことで感謝の気持ちが生まれ、復帰後のモチベーションアップにもつながるはずです。
メリット2:時間の使い方がうまくなる
育児は休み時間などありません。
家事を実際やってみると、思っていたよりも大変だと感じるパパが多いようです。
パパも育児を経験することで、効率のいい家事と赤ちゃんのお世話の進め方など時間の使い方がうまくなります。
この経験をもとに会社に戻っても、効率のいい時間の使い方ができるのではないでしょうか。
メリット3:企業のイメージアップにつながる
採用活動時に、男性の育児休暇取得実績をアピールしている企業が多いです。
また、厚生労働省では男性の育児と仕事の両立を積極的に推進する企業を「イクメン推進企業」として表彰しています。
外部に向けて「ワーク・ライフ・バランスのとれた会社である」とアピールすることにより、企業のイメージアップにつながります。
パパの育児休業を上手く活用
育児休業制度とは、子が1歳(一定の場合は、最長で2歳)に達するまで、申出により育児休業の取得ができる制度
基本的に、男性と女性の育児休業の違いってほぼありません。
ただし、育児・介護休業法には、両親が協力して育児休業を取得できるように、
- 「パパ・ママ育休プラス」と呼ばれるパパ・ママともに育児休業を取得する場合の特例
- 「パパ休暇」と呼ばれる男性特有の制度
があります。そのあたりを詳しく見ていきますね。
パパ・ママともに育児休業を取得する場合の育児休業取得可能期間の延長
「パパ・ママ育休プラス」って聞いた事ありませんか?
平成21年に育児介護休業法の改正が行われ、パパ・ママ育休プラス制度がスタートしました。
育児休業は、原則としてひとりの子に対して1回のみ取得できる制度です。
ですが、パパ・ママともに育児休業を取得する場合、子が1歳2か月に達するまでの間に、1年まで休業することが可能になります。
(厚生労働省:イクメンプロジェクトサイト)
育児休業を取得していたママが、子供1歳になるタイミングで仕事に復帰した後、1歳から1歳2か月の2か月間はパパが育児休業を取得することや、ママの復帰前からパパが育休を1歳2か月まで取得できます。
例②の場合だと、パパが育休を取ってくれているので、ママも安心して復帰できそうですよね。
出産後8週間以内のパパの育児休業取得促進(パパ休暇)
こちらも平成21年に育児介護休業法の改正が行われスタートした制度です。
原則、ひとりの子に対して1回のみ取得できる制度ですが、ママの出産後8週間以内に、パパが育児休業を取得した場合、特例として育児休業を再度取得できます。
(厚生労働省:イクメンプロジェクトサイト)
私自身の記憶では、出産後、入院中は助産師さんや看護師さんが24時間お手伝いをしてくれますが、退院後は自分たちでお世話をするのでかなりしんどかったです。
私が出産した当時には、パパの育児休業は普及しておらず、夫は取得しませんでしたが、産後8週間にパパが育児休業を取ってくれると本当に助かると思います。
産後のママのサポート後、ママが育児に慣れてペースをつかめた頃にパパは復職し、再度ママが職場復帰する頃に再度育児休業を取るなど、上手に活用して子育てをできますよね。
また、ママが専業主婦でもパパの育児休業はできますよ。
助成金の活用
育児関係助成金についても、たくさんのお問い合わせがあり、ほぼ毎月のように申請のお手伝いをさせていただいています。
男性の育児に関する休暇には、両立支援等助成金の出生時両立支援コースが活用できます。
2つのコースがあり、ご紹介しますね。
男性労働者の育児休業取得コース
こちらのコースは、男性労働者が育児休業を子の出生後8週間以内に取得した場合に活用できる助成金です。
支給額は、1人目の育休取得時の場合、中小企業は57万円、中小企業以外は28.5万円です。
事業主の規模や取得した育児休業期間によって金額が異なりますので、申請時に確認してくださいね。
〇育児休業の制度、短時間勤務制度を労働協約、就業規則に規定
〇男性が育児休業を取得しやすい職場風土作りのための取り組みをする
〇子の出生後8週間以内に開始している連続14日以上(中小企業は連続5日以上)の育児休業を取得する
〇次世代育成支援対策推進法に基づく一般事業主行動計画を策定、届出、公表、周知する
育児目的休暇コース
まずは育児目的休暇について簡単にご説明します。
平成29年10月の法改正により、男性の育児参加を促進するため、就学前までの子供を有する労働者が育児にも使える「育児目的休暇」を設置するように努力することが定められました。
あくまで努力義務ですので、整備していなくても問題はありません。
どういった時に取得できる?
〇配偶者の出産休暇
〇入園式等の行事参加を含めた育児にも使える多目的休暇
などが厚生労働省の事例として挙げられています。
育児目的休暇期間については、1年につき何日付与するのか、有給なのか無給なのかを会社が決めることができます。
助成金の活用
会社として育児目的休暇を導入しようとする場合、助成金を活用することができます。
支給額ですが、中小企業は28.5万円、中小企業以外は14.25万円です。
場合によっては、支給額がアップすることがありますので、申請時に確認してください。
〇育児休業の制度、短時間勤務制度、育児目的休暇制度を労働協約、就業規則に規定
〇育児目的休暇を取得しやすい職場風土作りのための取り組みをする
〇子の出生前6週間から出生後8週間以内に、労働者1人につき合計して8日以上(中小企業事業主は5日以上)の育児目的休暇を取得する
〇次世代育成支援対策推進法に基づく一般事業主行動計画を策定、届出、公表、周知する
専門家に任せるのが楽
どちらのコースも厚生労働省のHPに詳しく書いていますが、聞き慣れない単語が並んでいてなかなか難しいですよね。
ご自身で読み解き、分からない箇所を労働局へ問い合わせながら申請を進めることもできますが、こういった事に時間を使って、事業がおろそかになるのは本当にもったいないです。
少し費用は掛かりますが、契約されている社労士などにご相談されるのがいいのかな、と思います。
まとめ
今回、男性の育児休業について書かせていただきました。
私が第一子を生んだのが2008年。その当時って、男性の育児休業はほとんど聞きませんでした。
子どもは女性がするもの、育児休業は女性が取得するものであって、会社も世間も男性が育児に参加するというアタマが無かったのではないでしょうか。
2017年度の入社半年後の新入社員を対象としたアンケートでは「子供が生まれたときには育児休暇を取得したい」との問いに、男性の79.5%が「そう思う」と回答した、というデータがあります。(日本生産性本部:2017年度 新入社員 秋の意識調査)
今のところ男性の育児休業取得率は6%ほどですが、2017年に入社した若者たちが子育てをする数年後には、取得率は2桁になっているかもしれませんね。
男性労働者が育休を取得したい!と申出があってから慌てて制度を整備するよりも、この機会にしっかり整備されてはいかがでしょうか。
「パパ・ママ育休プラス」、「パパ休暇」を上手く活用し、男性労働者の取得したい時期に取らせてあげることにより、積極的に子育てをしたいという男性の希望を実現することができます。また、外部に向けて「ワーク・ライフ・バランスのとれた会社である」とアピールすることで、企業のイメージアップにつながります。
経営者の皆様にも従業員にも笑顔で働ける職場になりますように☆