国家資格キャリアコンサルタント集団が斬る仕事論

障害者家族がサポートしておきたい障害者自身の就職準備

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国家資格キャリアコンサルタント。 ヤングケアラー・元ヤングケアラー・障害者家族のためのカウンセリング 「カウンセリングルーム あしたの」代表 学校図書館専任職員として障害を持つ子どもたちに、今は障害者の日中活動の支援を行う。弟も障害者であり、自身もかつては亡くなった母の介護と弟のケアを継続しているケアラーという当事者。障害者の家族の生活は雨や嵐の日もあるが、大好きな絵本「ぼちぼちいこか」(偕成社)の言葉を合言葉に今日を生きている。

「働く」ってどんなイメージを持っていますか?

その人その人によって考え方はそれぞれで、正解はありませんが、障害者家族のみなさんは、障害者本人と話したことはありますか?

そもそも働いた経験がなければ、イメージや働くことの意味があいまいになってしまうこともあります。

また、一度仕事をしたものの、再度、就職活動することになった場合。

自分の生き方や働き方に自信を持てなくて、どんな姿になりたいか言葉にできず戸惑いを感じているかもしれませんね。

今回は、これから就職を目指している障害者本人に働くというのはどういうことか、身をもって体験をすることの大切さと、その時、障害者家族のサポートをお伝えします。

就職準備のための自己理解に時間をかけてるということ

自分のことなのに自分について話すって難しい

長く付き合っているから一番わかっているようでいてわかっていないのが自分。

周りの人から言われて、ハッとすることもあるのでは?

就職活動は、「自分のこと知る」=「自己理解」が求められています。

でも、なかなか言葉にするのは難しいです。

だから、

時間と手間がかかるので、障害者家族としては力を入れすぎないのが大事です。
我が家の障害者自身も最初から“自分を理解する”や“働く”ということがどういうことかわからず、失敗も繰り返してきました。そして、支援者と一緒に就職活動をして仕事を続けていくなかで本人なりにやっと言葉にできるようになりました。

自分を知るための第一歩。職場体験に出かけてみよう

思い切って職場体験という行動をしてみる理由は?

  • 働けるのかなという気持ちを抱えているというのは、知らないから不安や恐怖に繋がっているから。
  • 働きたいなと思いつつ動けないのも、働くということにたいして具体的にわからないことが多いから。
  • 就職してから職場の雰囲気や人間関係、仕事内容が合わないことが原因で、最後は自分を苦しめて、やっぱり就職するんじゃなかった、と後悔して辞めてしまうこともあるから。
  • 反対にせっかく就職したんだからと我慢しながら仕事を続けることもあるから。

頭の中で悩んでいるより、大学生の場合ならインターンシップや就労移行、公的な職業訓練にかよっているなら職場体験に参加してみましょう。

将来のなりたい姿に近づいていくために行動を始めます。

仕事をする上で、配慮はあっても障害者だからといって特別扱いされることはありません。

一人の社会人として会社の利益に貢献する存在です。

そして、仕事の役割には責任も伴います。

学生生活のように常に細やかなアドバイスがあるとは限りません。

一人でどんどん物事をこなせないなら、職場体験をしてみる。

すると、自分を知ることは働く上で心強い味方になって、なりたい自分に近づける一歩になります。

インターンシップや職場体験はなんのためにするの?

職場体験はなんのため?

働くってどういうことかな?職場はどんなところかな?

自分ができることむずかしいこと、支援があればできることを実際に現場に行って、確認するためです。

大変だし、嫌だなってことはたくさんあるかもしれません。

でも、それだけ価値のある経験をします。

なので、就職活動中や仕事を始めてから自分にとって必要なヒントはないのか、アンテナをたてておくのがポイントです。

学ぶべきことは山のようにあるので、採り入れてみてくださいね

職場体験をする時にしておきたい自分を知るためのチェックポイント。

チェックポイント①
  • 次のことが家族や支援者のサポートがありながらでもできますか?

①言葉づかい

⓶健康管理

③生活リズムを整える

④時間管理

⑤身だしなみ

チェックポイント⓶
  • 仕事をする時に確認しておきたいこと

①仕事への意欲

⓶報告・連絡・相談

③メモをとること

④支持されたことへの理解力

⑤急な予定変更への対応

⑥ルールを守る

⑦仕事のペースや正確さ

たくさんあると思いましたか?

当たり前だけど当たり前のことがなかなかできないんですよね。

社会人としての姿に注目しなければならないこともあると知っておきます。

自己理解では苦手を知ることも大事です。

仕事をするなかで≪苦手なことってなに?≫と聞かれるとどれくらい思いつきますか?

仕事をするというイメージがわかないとあれこれと思いつかないことも。

苦手なことは仕事をする時も失敗になる可能性は高いから目を向けたくない気持ちもわかります。

それに、失敗するって嫌ですよね。痛いし、気持ちは落ち込むし…

私だってできればしたくないもの。

家族だって、つまずくとわかっていることは避けたいですよね。

だから、先回りしてしまいませんか?

失敗という経験から見えるものがある

でも、失敗という経験をすることで「働く」について学習するものもあります。

障害があってもなくても誰でもあるのが「苦手」なこと。

「苦手」をなくそうとするのではなく、上手につきあっていくという考え方を持ちます。

障害者本の失敗した姿を見て、心を痛めている家族もいるでしょう。

そんな時は、苦手を自分で自覚することは働き続けるときに、本人なりに試行錯誤したりできるきっかけにもなると障害者家族としても発想をしてみてください。

違う視点から自分を知るということ

自己理解するうえでは、自己評価と他者評価もズレをなくしていくのを目指します。

他者評価

長所や短所、印象などを第三者の意見も聞いて、受け入れて、自分を理解するヒントにしょうということ。

障害者本人が自分に自信がなくて自己評価と支援者から見た評価はずれているなと学校や福祉の現場にいてもどかしく思っています。

毎日していることが実は他の人の視点からみると頑張っているんだって思うことも出てきて、自信にも繋がります。

客観的な評価を受け入れながら自己評価と他者評価のズレを少しずつ減らしていくことも自己理解する中では大切です。

就労パスポートを知っておくと便利です。

自己理解するって大変!って思いましたか?

そんな時に活用して欲しいのが、厚労省が出している「就労パスポート」です。

対象

精神障害、発達障害、高次脳機能障害のある方

希望があれば、それ以外の障害のある方

就労パスポートは、就職前からと就職後の振り返りに使えます。

障害者本人と支援者が一緒に作ることで自己理解のツールの一つになります。

なんのために作成した方がいいの?

家族や障害者本人が特性など言葉で伝えたと思っても、会社側がしっかりと受け止めていなければ伝わっていないことと同じなんです。

書く理由は

紙に書き出してお互いに目で確認できたり、就労パスポートの原本は障害者本人が持っておくことで振り返りなどで意識のズレをなくしていくため。

注意する点
  • 採用時に必ず出す書類ではありません。
  • 自分の希望する配慮などを伝えて会社が環境整備の活用するためのものです。
  • 就職前に障害者本人の特徴などを会社側と情報共有することは、お互いに仕事をする際に役立ちます。
  • また、ストレスの対処法を書く欄もあるので会社側の安心に繋げることになるツールの1つと思ってください。

自己理解が難しいと思ったら、支援先に一度、問い合わせてみて下さい。

備えておくとあわてなくてすみます

こういうバックアップを作っておくことは仕事を続ける中で何かあった時の備えになります。

例えば

働いてから指示の仕方など改善点。

仕事内容や上司が変わったなど環境が変わるとストレスを抱えた時。

そんな時は障害者本人と会社で話し合うのですが、パスポートや支援者いれば振り返りもスムーズに行えます。

知っておくと便利ですね。

伝えるは相手に伝わるということだから一方的にしない

そうそう仕事続けるっていうのは簡単にいきません。

知識や技術を身につけていきますが、すぐには形にならないもの。

スタートをどう乗り切っていくのか、そのあとどう定着していくのか。

自分ができることはもちろん、どんな支援があれば仕事ができるのかも自分で伝えていく必要があります。

ただし、こうなればいいという一方的なお願いやできない言い訳ばかりをするのではありません。

配慮を希望したいことを素直に会社に伝えたり、相談できることが必須の態度になってきます。

そういう行動が力を貸してくれる仕事仲間もできるようになります。

障害者家族としてできる就職準備は?

障害者家族の中には、人事に関わっている人や新人に仕事を指導したりという方もいるでしょう。

会社で仕事している時は、仕事モードのスイッチが入って、会社で活躍する人をどうやって育てていくかなど真剣に取り組んでいるはずです。

ところが、家族になると突然、仕事モードのスイッチオフ。

目の前の問題しか目に入らなくなり理性的には捉えられなくなりますね。

でも、一度立ち止まって社会人としてどんな姿に将来なって欲しいかを考えてみると目線が変わって見えます。

障害者家族ができる役割の1つです

その目線をもったら障害者本人の特性はなに?と改めて振り返ってみましょう。

障害者家族ができる役割の一つで、これまでをじっくりと振り返ってみてみましょう。

その中で、例えば音、匂い、光に敏感やコミュニケーションのあり方で仕事をする中で配慮があればできることを書き出してみます。

改めて見直すことでこれって意外と苦手かもと意識してみたり、出来ないと思っていることもできてるかもって自覚できます。

目に見える形になるといろんな視点をもって自分らしさを発揮して仕事をしていけるはずです。

支援者との信頼関係を築くための心の持ち方

でも、見直す作業って家族でなかなかスムーズにいかないですね。

そうなるとわからないこと、不安に思っていることを支援者に相談することも。

信頼関係を築いていますか?

本気で障害者本人に向き合っているからこそ、現状をお伝えしています。

空気を読むのは苦手と思っているかもしれませんが、家族が思っている不信感などは肌で感じているものです。

障害者本人がせっかく働きたいという気持ちを持って支援者と信頼関係を気づこうとしている時に、停滞させるのはいただけないものです。

支援者とは話し合いながら少しずつできる目標を共有して、働きたい気持ちを支えていくのも必要です。

期待しすぎないこと

様々な体験をしているからといって、すぐに就職できると期待しすぎないでくださいね

就職活動がはかどらないと、すでに就職できている周り障害者家族と比べて焦ったりしてしまうかもしれません。」

それから、いい会社に就職して欲しいという気持ちもわかりますが、「いい会社」というのは家族基準なんですよね。

だから、本人に合っている会社に出会うまで待っていてください。

一歩、チャレンジできたことを大事に!

障害者本人の就職は、時としてやっとやっとその気持ちになって重い腰を上げた人、高い壁だなと思っているのをようやく乗り越えて活動しているということもあります。

働きたいと決めたのは障害者本人です。

期待や励ましも大事だけど、本人がプレッシャーとして受け取らないように心がけてください。

見守るのはもどかしいけれど…

家族としては、ただ見守るだけというのは、もどかしいかもしれません。

仕事をするということは、障害者本人の自立へ進む入口です。

いつまでも親として側にいてあれこれ面倒をみたいと思っていても、年齢を重ねるにつれて厳しくなっていきます。

きょうだいがいてもきょうだいは自分の人生を歩んでいく存在でもあると忘れないでください。

障害者家族としては、側にいて応援したり、必要な時には支えたりできる“安心感”がある存在であればいいんです。

スローペースでも仕事をする気持ちは育っていきますよ。

終わり

はじめに「働く」イメージについて書きました。

我が家の場合は、社会と繋がること、生活の一部であること、お客様のために仕事をすること、自分の得た収入で家族の生活費にしたり、好きなものを買ったりすることでした。

障害者家族のみなさんはどうですか?

障害者でも就職活動に苦労しながらも就職して活躍している人はたくさんいます。

一緒にぜひ、一度考えてみて下さい。

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国家資格キャリアコンサルタント。 ヤングケアラー・元ヤングケアラー・障害者家族のためのカウンセリング 「カウンセリングルーム あしたの」代表 学校図書館専任職員として障害を持つ子どもたちに、今は障害者の日中活動の支援を行う。弟も障害者であり、自身もかつては亡くなった母の介護と弟のケアを継続しているケアラーという当事者。障害者の家族の生活は雨や嵐の日もあるが、大好きな絵本「ぼちぼちいこか」(偕成社)の言葉を合言葉に今日を生きている。










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