国家資格キャリアコンサルタント集団が斬る仕事論

介護リーダーがメンバーを育成をする時に、気がついていない3つのずれ

 
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1995年 看護師のキャリアを生かし、大手複合医療法人、社会福祉法人の介護・福祉サービス事業に11年間携わる。   2006年〜 認知症高齢者グループホームを立ち上げる。開所当初離職率82%から、4%に激減させる。 2018年〜 人財育成コミュニティ「ケアびと育成Lab.」立ち上げる。 現在までに、さまざまな家族介護の相談、介護保険についての相談、認知症介護の相談、介護職員のキャリア相談など、延べ1万人以上の方の相談、支援してきた。 今も認知症高齢者グループホーム所長として奮闘する中、「ケアする人、される人が、笑顔が溢れる世界を創ろう」と、わかちあう「ケアびと」と共に地域活動・社会貢献をも実践している。

リーダーときいてみなさんは、どんなキーワードが浮かんできますか?

統率力、お手本、牽引、カリスマなどが浮かんで来ることはありませんか。

メンバーみんなの先陣をきって進むといった、強いイメージを持たれている人が多いなのではないでしょうか。これまでのリーダー像が強く印象づけられています。

しかし、これから求められるリーダーは、決してメンバーより優れているとか、強靭な人でないです。つまり、多様な価値観に対応できるしなやかさ、たおやかさを求められています。

今回は、そんなリーダー像を探りながら、そのチームにおけるメンバーとの視点、視座の違いについて一緒に考えてみましょう。

介護リーダーとメンバーとにはずれがある

介護業界のリーダーの現状とは

介護業界のリーダーと言われる人は、ユニットリーダー、フロアーリーダー、介護主任、敷いてはエリアマネージャーとか様々な言い方で呼ばれています。また、職種は、介護相談員、介護福祉士、介護支援専門員、管理者などの人たちが,リーダーの役割を持っていることがあります。

そして、多くのリーダーは現場から成り上がってきた人が多く、今も現場との兼務を強いられている人がいます。

介護現場においては、経験していることの理解はできる部分が大きいが、マネージメント、ファシリテート、リーダーシップを学ぶ機会が少なく、職位についてから、同時進行で学ぶ人が多いように感じます。

そのため、経営層と現場との板挟みになり易く、交渉場面や、噛み砕きをして双方の理解得ることや、納得を深める時にしばし、ずれが生じやすいと思います。

リーダーに対して、プレイヤーからマネジャーへの転換に向けてのサポートや、部下とのコミュニケーション力の強化など、日常的課題に対応する高度な教育プログラムが望まれれるところです。

育成種類と方法

さて、みなさんが、よく耳にされる広義での育成方法、制度として次の内容が挙げられます。

しかし、言葉と知っているが詳しくはよくわからないとか、わかりにくいと行った方が多いのではないでしょうか。

代表的なものとして、次にあげる内容があります。

OJT (On-the-job training)

上司や先輩職員が部下に対して、実務をする上で必要となる知識やスキルを教える実践形式の研修

OFF―JT (Off-the-job training)

実践的なものではなく、教育的な要素の含まれ、座学を通して行われる研修

自己啓発

本人の意思によって能力や精神面の成長を促すための訓練

社外 セミナー

外部からその分野のエキスパートである講師を招いて、専門的なスキルや知識を学ぶ研修

メンター制度

経験の浅い新入社員の精神面をサポートするために役立つ制度

プリセクター制度

介護職として雇用された新入職員に対 し、一定期間、先輩職員がマンツーマン(実践的な実務習得+メンタルケ ア)で指導する仕組み

人事評価制度

職員の能力、働きぶり、成績などから総合的に判断します。評価基準や指標の明確にし、公正な評価を行うこと

など

しかしながら、上記の育成方法を、充分に活用し効果が出ているといったチーム・組織は、どのくらいおられるでしょうか。むしろ、介護職の人手不足から、リーダー自身が、現場職の兼務から抜け出せないことや、新人未経験者の研修期間が十分にとれず、数回OJTで教わった後、新人はいきなりひとり立ちをしなくてはならなかったといったことをよく耳にしますし、私自身も経験しています。

研修期間を十分確保できずに、独り立ちをさせないとならないことにジレンマを感じていることが多く感じている一人です。

事故リスクや、質の低下のケアサービスの提供の危険性をはらみリーダーの疲弊度は増しています。

 

リーダーの勘違い

ここで、毎日自分は一生懸命にチームやメンバーのためにと良かれと思って行動する中、リーダーが起こしやすい勘違いについてお伝えしたいと思います。

  •  できないメンバーに対して、手助けをして感謝されることがいいことである。
  •  リーダーが代わりにやってあげることで、スムーズに仕事が回る。
  •  リーダーが、頑張っている姿を見せれば、きっとみてわかってくれる。
  •  チームがうまくいかないのは、メンバーの能力や技術が足らないからだと思い込んでいる。
  •  リーダー自身が、チームのピラミッドの頂点で、自分のチームであると思っている。
  •  メンバーは、自分のために働いてくれている。
  •  嫌われることを恐れて言いたいことがはっきり言えない。
  •  リーダーはメンバーから好かれなければいけない。

などといったリーダーが陥りやすい勘違いしやすい事柄を羅列してみました。

リーダーは、その勘違いに気がついていないままに、良かれと思ってリーダーの職務をこなしていることがあります。

「ずれ」とは、

ここで、「ずれ」についてお伝えします。

「ずれ」とは、現状と理想の未来との違いまたは、現実での勘違いのことを言います。

例えばあなたの憧れの先輩、なりたい自分との能力のギャップや、リーダーとメンバーとの目標のギャップのこと、部下との解釈のギャップなどを様々なギャップ=ずれがあります。つまり、あなたと関わる相手との価値観や意識の違いが、「ずれ」として存在します。

具体的には、3つのずれがある。

人は現実の自分となりたい自分、あこがれの自分とのあいだに、①わざ ② こころ ③ものさしの3つのずれが起きています。

わざとは、技術、コツ、手順、やり方、

こころとは、 志、希望、夢、願望、あり方

ものさしとは、 ルール、基準、評価、考課、倫理、道徳

この3つのずれが、リーダーとメンバーの中にもそれぞれに生じています。

また、双方のなかにも「ずれ」が生じています。

なぜ、ずれがおきるのか

では、様々な「ずれ」が存在する中で、リーダーとメンバーの双方の『ずれ』はなぜ生じるのでしょうか。

結論からいうと、経験や体験によって影響されている考え、思考の準拠枠がそれぞれに違いがあるからです。

考え、思考の準拠枠とは、大人は誰しも、過去の人生経験の中で形成した「準拠枠」(ものの見方・感じ方・行為の仕方の習慣的な枠組み)と呼ばれるフレームワークを通して、思考・行動しています。この準拠枠が強固になればなるほど、その枠の中の発想に捉われ、結局、視野の拡大が阻害されてしまうのです。

メジロー「変容的学習理論」

メジローは, 人々が経験や事象を捉える際の自己の枠組みの変容に ついて考察している。メジローは,過去の経験の意味付けや,その過去の経験から生じた知識が,新たな経験を解釈して意味づける際に応用されることを示している。ここでは過去の経験による新たな経験の解釈 や意味付けが「意味パースペクティブ」と「意味スキーム」という経験を解釈する際に用いる準拠枠を通して行われている(「メジローの変容的学習理論」引用)

つまり、過去の経験・体験によって自分が解釈、意味付けしたことがあなた自身の価値観、信念の大きく影響しているために、「こうでなけれなならない」とか、「こうすることがいい」「これはあり得ない」などと自分の思い込みになって相手とのずれが生じると考えます。

ミラーリングとモデリングについて

では、このずれを埋めるためには、どんな方法かあるのでしょうか。

わたしも、あなたも自分の価値観や、信念を変えることは容易ではありません。

しかし、次に挙げる2つの方法で、できなかったことや、わからなかったことを習得することができるようになると言われます。

 ミラーリングとは

相手が楽しそうに笑ったら、同じように笑う。相手が悲しそうな表情をしたら、同じように悲しい表情をする。メンバーに同調することで、好印象を与えることができるのです。関係性を築くために有効な方法としてあります。

この場合、自然体に振舞うことがコツとしてあります。

 モデリングとは

憧れの人を具体的にマネることをいいます。具体的な行動や言葉の使い方をマネることで、自分自身を成長へと導きます。人が未知のことに挑むときや、自分ひとりでうまくいかないときは、お手本となるモデルの行動や価値観をマネすることでうまくいくことがあります。

介護現場における具体的な3つのずれ

しかし、ミラーリンクやモデリングを行うことで、できなかったことや、知らなかったことで、わかるように、できるようになればそれは良いことでしょうが、ケア場面では、人相手に行う行為やわざは、流動的サービスであるといわれています。この時は、うまく行ったが、次の時は同じようにうまくいくとはかぎらないのです。

 

わざのずれ

・同じ利用者の方におむつの当てる時、ある人は漏れることなく当てることができているが、別の人が行って時は漏れる結果になる。

・転倒のリスクが高い利用者に、転ばないように見守り、声をかけるタイミングが違うと、大きな事故に繋がらない場合と、骨折や怪我につながる場合がある。

・認知症の利用者の方が、帰宅願望が出現した時に、頭ごなに否定して対応する場合と寄り添ってゆったり対応することで、利用者の方の安心感した表情に差が出る。

こころのずれ

・そもそもなんでこのケアの仕事について働いているのかわからない、ただただ毎日無事にすぎたらいいと考え仕事しているメンバーがいる。

・自分のなりたい、ありたい自分像を思い描いているが、到達するにはモチベーションが保てずになやんでいる。

・人から感謝されたい、人の役にたちたい、ありがとうと言われたいと思ってケアサービスを提供している人と、できないから、やってあげる、時間がかかから、待てずに手伝って挙げるという意識が強い人がある。

ものさしのずれ

・「私は、聞いてない、知らない」と言う理由で、伝達事項が途切れる。

・不適切なケアを目の当たりにしても、正すことを言い出せずにみてみぬふりをすること。

・なんで、このケアサービスをやり続けているのか、目的がわからず行っていること。

・声の大きい人、意見が強い人が、カンファレンスのケア内容が決定していくこと。

・これぐらいなら、わたし一人ぐらいなら、これをやってもわからないだろうというメンバーがいる。

・手伝ってほしいのに、声にだして言えない。

など、3つのずれが介護現場で起きています。

チームケアがうまくいかないわけ

チームケアを行う上では、このメンバー一人ひとりの力量が違うのは仕方がないことで、わざのずれはあって仕方がないことです。

しかしながら、こころのずれは非常にやっかいな状態です。協力しようとしない。私は知らない。勝手にやっているなどの意識をもっていることでうまくいかないことが多いのではないでしょうか。

またものさしのずれは、目的、目標を明確にしていないことのずれが生じています。

利用者の方に、ケアプランに基づいてケアサービスを提供することが私たちの目的です。利用者の方の生活がどのようになってもらいたいのかなぜこのケアを提供する必要があるのかなど、利用者の方を中心とした生活に着眼しチームメンバーが、目的、目標を自覚して、メンバー同士で明確にできるようにすりあわせをしていくことが求められます。

介護リーダー自身が育成するためのポイント

リーダーはチームメンバーの行うケアがわかっていることを促し、リーダーの手助けを自然にできる仕掛け作りが実は重要なんです。

そのためには、いくつかの仕掛けの5つポイントをあげてみました。

1.どうしたらもっとメンバーの能力が、最大限に発揮ができるか?と考えつくす視点をもつこと。

2.メンバーのため自分は何をやるべきなのか?考えてみる。

3.メンバーを変える前に、自分が変わることはなにか。まずは自分から実践してみる。

4.メンバーに貢献する視座をもつこと。(サーバンドリーダーシップ)

5.メンバーに対して適度なタイミング、必要な量を、フィードバックをする。

このときのフィードバックの内容は、いかにあげることを意識して行ってみましょう。

メンバーに対して、次の言葉かけを行うことで、メンバーの反応をみていきましょう。または、リーダー自身にも自問自答してみましょう。

フィードバックする上でのポイント

・○○なことを、○○と良かれ思って行った結果はどうだったか

・その時のどんな気持ちだったか。感情が湧いたか。

・それはどう意味があるのか。

・「あなたはどうなりたいのか?」(理想の状態、あるべき状態は)

・それに対して現状はどうなっているのか?」(現実の状態は)

・これからどうしていきたいのか。(一緒に考える)

このように、リーダー自身が、成長すること、意識することを意識することで、チームメンバーへの影響が非常に大きいと思います。

メーバーが自分で考え、できるようになるにはリーダー自身がメンバーに対してどう関わって、メンバーから手助けをもらうのか、力をチームの注いてもらえるのかが重要なポイントであります。

まとめ

今回は、介護リーダーが育成をおこなう時にメンバーとお互いに気がついていない「3つのずれ」についてお伝えいたしました。

リーダー自身、一生懸命チームのためにと無我夢中に育成しようと取り組んでいたとしても、空回りしてうまくいかないことで、悩んだり、イライラした時に、今回お伝えした3つのずれを意識しながら、メンバーつまり相手の状況にあわせた対応が求められます。

自然にメンバーから、手助けをもらえるリーダーこそが、チームケアをする上で、非常に大切なキーポイントになります。

是非とも、メンバーひとりひとりの力を最大限に発揮させる目的のために弱さを露呈できるリーダー助けを声にできるリーダー貢献意識をもてるリーダー、支えるリーダーをめざしてみてはいかがでしょうか。

 

最後までお読みくださいまして誠にありがとうございました。

それでは、またお会いしましょう。

私が主宰する対人支援職のコミュニティの詳細は、こちらになります。

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1995年 看護師のキャリアを生かし、大手複合医療法人、社会福祉法人の介護・福祉サービス事業に11年間携わる。   2006年〜 認知症高齢者グループホームを立ち上げる。開所当初離職率82%から、4%に激減させる。 2018年〜 人財育成コミュニティ「ケアびと育成Lab.」立ち上げる。 現在までに、さまざまな家族介護の相談、介護保険についての相談、認知症介護の相談、介護職員のキャリア相談など、延べ1万人以上の方の相談、支援してきた。 今も認知症高齢者グループホーム所長として奮闘する中、「ケアする人、される人が、笑顔が溢れる世界を創ろう」と、わかちあう「ケアびと」と共に地域活動・社会貢献をも実践している。










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