障害者家族が障害者の自立に備えるお金のルール
今回は「お金のルール」についてお伝えします。
◎現在進行形で試行錯誤の連続で、なかなか思うようにいかないなと感じている
◎障害者に普段の生活で身につけて欲しいことがあれもこれもあるなかで、重要度が高いのはわかっているものの、でもお金の心配は山ほどもあって、ついつい自分たちで先回りしてしまいがである。
◎もしかしたら今日や明日に親やきょうだいに病気になったり、事故あったりして「一緒に」ができない状況が急にやってくるかもしれないと不安や焦りを感じている
こんなふうに思っている障害者家族のみなさんへ。
私自身も家族で模索しながらお金の向き合い方を実践中のキャリアコンサルタント@結木つばめが「お金のルール」を見直す機会と障害者本人のお金にまつわる経験の幅を一方的に狭めないためのお金のルールをお伝えします。
自立に備えて伝えておきたいお金のルール
※お金のルール決めるためには、家族と話すこと
※お金を大切に使うこと
※「イヤ」なことは「イヤ」と断る勇気をもつこと
※自分の持ち物を意識して、お財布を自分で管理できること
※困った時は必ず家族や支援者などに相談すること
当たり前のことが多いですが、当たり前が一番難しいんです。
でもこれは障害者が社会で暮らす力、生きる力を積み重ねるために欠かせないルールです。
だからこそ、しっかり身につけていきましょう。
ルールを決めるために障害者家族がすること
ルールをきめるためには、親が一方的に押しつけません。
お互いに納得できるように話し合います。
お金の話なので話しづらいと思いますが、ここは向き合っていきましょう。
家族が見守る形で一緒に挑戦していけると良いですね。
働いてからお金のルールを覚えるのではなくて、今から
自分たちのペースでルールを伝えていく
今回は自分たちの家庭にあったペースで長い目で伝えいくことを目指します。
家族の形はそれぞれで、お金の考え方も家族の数ほどあります。
他の子どもができると比べてしまうこともあると思いますが、障害の特性はそれぞれ。
マイナスばかり目をむけると、できたことも認められなくってしまって障害者本人も家族も疲れ切ってしまいます。
また、学校や療育の場面でできても家での環境はそれぞれで、なじまないこともあります。
完全を求めすぎずに、本人にあわせて「できる」ことを積み重ねていって少しずつバージョンアップしていくこと
数や量は見えにくいものだからお金は難しい
「好きな果物は?」「今日は何の乗り物で来ましたか?」と問いかけられたら、パッと答えがでます。
でも、障害の特性によっては「果物、乗り物、遊び」などの言葉は質問されても答えられないことがあるんです。
これは抽象的な言葉だからです。
例にあげたような目に見えず触れにくい抽象的な言葉は、苦手で理解が難しいんです。
数や量も目に見えないものなので、捉えにくくお金の理解もその人その人で違います。
だから家族が障害者本人にあった方法で進めていきましょう。
どこまでお金を理解しているかを知ることからスタート
障害者家族の皆さんは、障害者本人がどんなふうに日頃から買い物をしているかをどれくらいわかっていますか?
時間がないから、周りに迷惑をかけちゃいけないからと障害者本のお金を使う機会を少なくしてませんか?
思い当ったら一度、本人の買い物の姿を見守ってみましょう。
目の前いる障害者本人がお金に対してどこまで理解をしているか、どのように使っているかの現状を知ることでルールを決めやすくなりますよ。
例えば、
☑コインよりもお札の方が沢山買えるという生活上の価値観があるかどうか
☑10円玉5枚と50円玉1枚は色も数も違うのに「同じ50円」とわかっているかどうか
☑表示されたお釣りの金額を迷わずだせるかどうか
など
ルールを決めるポイントはお金を使うという学び
楽しみながら買い物をしてお金のやりとりを体験させてみてください。
レジでもたついたりすると周りのことが気になって、お金を取り出してサッと済ませちゃうことも。
でも、それは障害者本人が【お金を使う】という学びの機会を失ってしまうので、ぐっと我慢です。
それからもう一つ気を付けたいことがあります。
自分の欲しいものはあって買いたいものはあるけど、障害者本人と出かけると親は大変そうだから、わがままを言っちゃいけないかなと思っているところへ、≪目を(手を)離さないでね≫といったり、≪なんでちゃんとみてなないの≫、なんて追い打ちをかけられる言葉を言われて楽しい気持ちが急降下。
つまらないものになってしまい、障害者本人と出かけたくないまでになってしまう可能性もあります。
きょうだいも笑顔になれる買い物をしましょう。
そして、日常生活を通じて体験を増やしながら、“自分でできる”を積み上げて、ルールをつくっていきます。
社会にでる前にルールをみにつけていく
大人になったら自由にお金を使える?
学校図書館にいた時、子どもたちは一人暮らしに憧れを持っている話をしてくれました。
一番大きな理由は、「大人買い」をしてみたいというぐらい、大人になって一人暮らしをしたら自分で自由にお金を使えると思っているから。
でも、就職してすぐは手元にある貯金も少ない可能性の方が大きいですよね。
だから“生活に必要なお金もいる”という考え方は、まだまだだなぁと感じていました。
障害者が20歳なったら得られる収入とは?
今回は、現在、20歳になれば支給される障害者年金と福祉就労の工賃の収入についてみます。
毎月一定の収入が入ってきます。
一定の障害の状態にある障害者に支給される。偶数月にその月の2カ月分振込(厚生省)
平成30年度の金額
1級 年額974,125(月額81,177円)
2級 年額779,300(月額64,941円)
就労継続A型事業所 月平均工賃 74,085円
就労継続B型事業所 月平均工賃 15,603円
出典:厚生省
以上が毎月一定の収入として入ってきます。
毎月必要なお金はなにがあるの?
◎グループホームに住んでいればグループホーム費用
◎一人暮らしであれば生活費
◎成年後見人制度を利用していれば成年後見人への後見報酬、
◎余暇費、治療費、クレジットカード請求など
今までのおこづかいとは違う大きなお金を手にすることで、あれもこれも欲しいものを使ってしまうとあっという間にお金が減ってしまいます。
そうなると毎月生活していく上で必要なお金が足りなくなり、次に収入があるまで困ってしまいます。
おこづかいがおすすめ
では、社会に出る前に何にどれくらい使えばいいのかといったスキルを積み重なるにはどうすればいいのでしょうか?
それはおこづかいです。
学校図書館にいたと子どもたちは大人の姿を良く見ていて、お金の使い方も物の値段もすごく関心を持っていました。
値段の興味を持ち始めた子どもたちが片っ端から図書館の本の値段を見ていたのは、今では楽しい思い出です。
だからこそ興味関心があるうちにスタートするのがおすすめです。
小遣い帳をつける、レシートを忘れずもらうなどを習慣化しておくことで、お金の出入りの記録をつける、見える化すること。
失敗したことは障害者家族がしっかりと受け止める
障害者家族としては、どうしても障害者本人に失敗させたくないなという気持ちが強いかもしれません。
でも、その中からおこづかいで使いすぎると自分が買いたいなと思うものが買えないという体験も重ねていって使いすぎないことを覚えていきます。
ここで大切なのは、失敗した時に頭ごなしに怒らない、です。
皆さんも失敗した時に、追い打ちをかけるように責められたら、もっと落ち込んでしまいませんか?
失敗したことを受け止めつつ、次はどうすればいいか話し合いながら行動に繋げていきます。
将来、きょうだいにも頼りすぎない。
大人になっても親と同居していれば、小遣いや貯金、家に入れるお金などは親と話し合いながら自分のお金を管理することができます。
しかし、いつまでできるか誰にもわかりません。
じゃあ、きょうだいに、という考え方はよくありません。
きょうだいにはきょうだいの人生があります。
仕事、家庭を持った場合、自分のお金の管理で精一杯なことも。
障害者自身のお金の管理まで手が回らなくなります。
お金が絡むと余計に関係がこじれてしまいます。
頼りすぎないためにも自分で考えながら入るお金と出るお金のバランスを根付かせていくのが大切です。
お金のトラブルはすぐそこにあります
将来、親が亡くなった時に障害のある子ども行く末を案じて高額なお金を残した時に起こるトラブルもあります。
今回は、障害者自身で通帳からお金を引き出すことができる場合として
➤悪い人にだまされてしまって、お金を騙し取られた
➤お金があるから欲しいものを欲しいだけ買って大金を使い込んでしまう、
➤高額なものを買ってしまう
➤誰かに勝手にプレゼントしてしまう
➤お金の貸し借りでトラブルになった
社会に出る前に何にどれくらい使えばいいのかを学ばないとお金を価値あるもので、大切に使うことができないのです。
働いてからルールや使い方を覚えるのでは、間に合わないこともあります。
スマホが身近な存在だからこそ気をつけたいこと
障害の有無に関係なく子どもたちは無料のオンラインゲームはとてもよく知っていました。
ネットの情報は子どもたちの方が先を行っていて、オンラインゲームからのノベライズ化は情報提供もらうことも。
それぐらい身近にあるゲームなので、無料の中で遊べればいいのですが、ゲームには課金トラブルもあります。
それから、ネットショッピングは解らないだろうと思っていると痛い目にあいます。
ボタンをクリックして進めていくので意外とスルッとできてしまいます。
スマホを持っているなら制限機能を活用しつつ、ルールと約束ごとを決めて、本人が納得する付き合い方をしていきましょう。
「嫌」と言える「断れる」力を持つために
成長するにつれて特に友人や知り合いの中でお金のやり取りも出てきます。
お金の貸し借りは厳禁であること、ワリカン、おごる、おごられるはしないこと。
お金の理解が難しい障害者にとっては、お金のやり取りで」事実を聞き取るのは難しい場合もあり、問題が複雑に発展してしまうこともあるのです。
友人からしつこくねだられてつい、という可能性もあります。
断りたい時に使えないのは不便なので、必ず身につけたい言葉です。
どうしてもの時は保護者や相談できる人に確認してからというルールを徹底していきます。
大きくなるにつれて行動範囲も広がる
ヘルパーさんや家族が一緒に出かける時はよいのですが、一人になった時、勧誘の人に声を掛けられることはありえます。
そんな時、断る勇気も必要です。
これは、私たちだってハードルは高いことです。
しかし、あとあとトラブルにならないためにも障害者本人に応じないルールを粘り強く伝えていきます。
突然のことに対して反応できるかは練習の積み重ねとなりますが、「嫌です」「急いでいます」と声を出すといったトラブル回避方法が必要です。
トラブルに巻き込まれないための「嫌」が支援者と相談をしながらでもいいので、身につけていきましょう。
何か困った時、SOS発信できることがポイント
こういったトラブルは身近にあります。
何か困った時、SOS発信できるようにします。
自分で抱え込んで身動きが取れなくなる前に、家族や支援者などの周りの人に自分は何に困っているか言えるように日々練習しておくことが大切です。
日常生活の中で「選ぶ」を体験する
では、どうしたら自分の気持ちを話せるようになるのでしょうか?
普段の生活の中で例えば洋服や趣味の物を買ったり、外食で食べたいものを注文するなどしますよね。
するとその中で自分で「選ぶ」体験を積むことができます。
私たちも生活をしていく時に小さなことでも毎日、毎日選択を繰り返しながら過ごしています。
障害者だって同じです。
自分で選ぶ意思と選ぶ力を育てること。
これがだんだん積み重なると自分の気持ちを周りに伝えることができるようになります。
好奇心を引き出したり選ぶ体験をしたりして社会で生きていく力を伸ばしてあげましょう。
自分の持ち物と意識するためのお財布の管理
お金は、残念ながら見た目で自分のものとわかる印をつけることはできません。
家族だから親の財布でいいかと思わずに障害者本人の財布を用意して、自分の持ち物と言う意識を高めていきます。
これは、今後、お財布がわりになるかもしれないスマートフォン、預金通帳や障害者手帳など自分にとって失くしてはいけないものを自分で管理していくためにも重要です。
財布も障害者本人が使いやすいのを用意します。
良く例えられますが、軍手のような分厚い手袋をして財布からお札をだしてみて下さい。
出したいお札は取りだしにくいです。
コインの場合は手先が不器用でコインを取り出しにくい、また、障害の特性によっては小銭の種類がわかりにくいなどもあります。
目指すは自己管理ができるように
財布が用意できたら自己管理をしていきます。
必要な時以外は不用意にカバンやロッカーからださない
目につくところに置いたままにしない
ポケットに入れたままにしない
お財布の管理ができていないと起こるトラブル
成人後、作業所や就労先で財布を出しっぱなしにしていて
〇どこに置いたかわからない
〇お金が無くなった!
となったら大問題になります。
だからこそ、リスクを限りなく小さいものにしていくためにお財布の管理が重要なのです。
買物や出掛ける時には、置き場所から自分で出して、帰宅時には決まった場所にしまうを習慣化していくこと
キャッシュレス時代へのお金のルール
政府がキャッシュレス化政策を始めました。
後日払いのクレジットカード、先にお金を入れておく電子マネー、支払いと同時に口座から引き落とすデビットカード、スマホ決済などここ数年で広がっています。
家族にとっても取り入れている部分もあれば世の中の変化についていけない部分もありますよね。
だからこそ、メリット、デメリットを家族で話したって本人の希望するお金の使い方を選んでいきます。
▲デビットカードはあらかじめ使える金額が決まっている、
▲クレジット制限額を設定できる
▲財布からお金を出すとき時間がかからない
▲お金を数える必要はない、お釣りの計算が苦手なためチェックもいらない
▲クレジット決済の場合、支払いの明細書が届く
▲いつどこでなににつかったか管理が難しい
▲金額が見えないため使いすぎてしまうことがある
▲電子マネーなどの使い方を家族はどうやって伝えていくのか
現金かカードか葛藤は続くとは思いますが、現実に折り合いをつけながら柔軟に取り入れることができたらいいですね。
ルールが守られない時への向き合い方
ルールを決めてできたことはしっかりと認めてくださいね。
成功体験と「できる」を受け止めてもらうことは、自信にもなって本人の約束を守る原動力にもなります。
でも、せっかくルールを決めても時には守られないこともあります。
家族の方ががっくりきてしまったり、怒ってしまっては今までの積み重ねがストップしてしまいます。
ルールを決めたらずっと同じではなく、できなかったことは障害者本人と振り返りながら、できることに修正をすること。
守れるようにスモールステップを繰り返りして対応していくこと
終わり
お金のルールは人生を歩いて行くうえで、切り離せないものです。
その中で障害者家族が一番できることは障害者本人のお金のルールを知った上での社会で暮らす力、生きる力の土台作りです。
一気にではなく、ゆっくりでいいです。
本人の成長を伸ばしていきましょう。
あと、買物って楽しいものですよね。
お互いが気持ちよく過ごせるように楽しみながらお金のルールを伝えることを心がけてくださいね。