【主人の死】夫が仕事中に亡くなった場合、どんな保障があるの?
家族と幸せにいつまでも暮らしたい・・そう思っていても、人生何が起きるかは誰にも予想できません。
私も2年前母親が亡くなった時は、「まさか・・」と全く予想していませんでした。
予想しない出来事の精神面でのダメージは相当大きかったです。
私の場合は母親だったので、経済面でのダメージは感じませんでしたが、この時お金面での不安もあったら、どうなっていたんだろう、と思います。
万一を想定して、気持ちやお金の面で備えておくことも大切です。
今回は、社会保険労務士として、亡くなった方のご家族のご相談を受ける中で感じている、「事前に知っておくと安心の保障制度」や、「今からできるお金面で備える方法」について、ご説明します。
仕事中に亡くなる人ってどのくらいいるの?
平成30年中に亡くなった方の状況を厚生労働省が発表しています。
平成30年における労働災害発生状況(確定) 厚生労働省労働基準局安全衛生部安全課
- 全産業 :死亡者数 909人 (平成30年1月~12月)
製造業 183 人 、鉱業 2 人、建設業 309 人、交通運輸事業16 人、陸上貨物運送事業102 人、
港湾運送業 4 人、林業31 人、農業、畜産・水産業 19 人、 第三次産業 243人
- 死亡災害は、製造業で増加し、建設業、林業及び陸上貨物運送事業で減少。
- 事故の多い、高所からの「墜落・転落」、交通事故(道路)」、機械等による「はさまれ・巻き込まれ」及び「激突され」といった件数も減少。
国や事業者、労働者等が重点的に取り組む事項を定めた「第 13 次労働災害防止計画」(2018~2022 年度)では、死亡者数を 15%以上減少させることを目標としています。
夫が仕事中に亡くなったら、どんな保障があるの?
労災保険からの保障
労働者災害補償保険(労災保険)とは
労災保険は、原則として、一人でも労働者を使用する事業所は、加入が必要です。
保険料は全額会社が負担し、従業員個人が払うことはありません。
加入対象者は、パート、アルバイト等を含むすべての労働者です。
※代表権・執行権等のある役員は対象外。
労災となるのは?
夫の死亡原因が「業務上の災害」と認められた場合には、労災保険給付の対象となります。
業務災害になるかどうかは、原則として管轄の労働基準監督署長が次の2つの基準で判断します。
- 業務遂行性 労働者が労働契約に基づいて事業主の支配下にある状態
- 業務起因性 業務と傷病との間の因果関係
何だか言葉が難しいですよね。
簡単に言うと、仕事をしていたことが原因で亡くなったかどうかがポイントです。
労災に該当するかどうかは様々な判例があります。
申請すれば必ず支給されるものではなく、労災であると「認定」されることが必要です。
労災からの保障は?
夫の死亡原因が労災と認定された場合の保障
①遺族補償年金
②遺族特別支給金
③遺族特別年金
④埋葬料
①遺族補償年金
- 遺族補償年金の額は夫の死亡当時、生計を同じくしている遺族(配偶者、子、父母、孫、祖父母及び兄弟姉妹)の数によって変わります(給付基礎日額の153日分~245日分)。
- 労働基準法12条の平均賃金に相当する額(働いていれば本来貰えることができた賃金)
②遺族特別支給金
- 遺族の数にかかわらず、一 律300 万円
③遺族特別年金(ボーナス特別支給金)
- 遺族の数等に応じ、算定基礎日額の153日分~ 245 日分
- 次のア~ウのうち、最も低い額 ÷ 365日
ア)1年間に支払われた特別給与(ボーナス等)の総額
イ)年金給付基礎日額 × 365 × 20/100
ウ)150万円
④葬祭料
- 31万5千円+給付基礎日額の30日分
社会保険(公的年金)からの保障
公的年金からの保障
①遺族厚生年金
②遺族基礎年金
夫が厚生年金加入中に死亡した場合、遺族厚生年金が対象となります。子どもがいる場合は遺族基礎年金も支給されます。
遺族年金が貰えるのは?
夫に生計を維持されていた妻は、遺族年金を受け取ることができます。
参考:遺族厚生年金を受け取ることができる遺族
- 妻
※子のない30歳未満の妻は、5年間の有期給付となります。
- 子、孫
(18歳到達年度の年度末を経過していない者、または、20歳未満で障害年金の障害等級1・2級の者)
- 55歳以上の夫、父母、祖父母
(支給開始は60歳から。
ただし、夫は遺族基礎年金を受給中の場合に限り、遺族厚生年金も合わせて受給できる。)
どのくらい保障があるの?
①遺族厚生年金
- 亡くなった夫の報酬比例部分の年金 × 4分の3
※夫の加入期間が短い場合は、年金額が少なくなってしまいます。
そのため、加入期間が300月(25年)未満の場合は、300月とみなして年金額を計算します。
〇遺族基礎年金(子どもがいる場合のみ)
- 780,100円+子の加算 令和元年度
※子の加算:第1子・第2子(各 224,500円)、第3子以降(各 74,800円)
- 18歳到達年度の年度末を経過していない者
又は
- 20歳未満で障害年金の障害等級1・2級の者
いつまで貰えるの?
- 遺族基礎年金は、子どもが成長すると受け取れなくなります。
代わりに、40歳から65歳になるまでの間中、高齢の寡婦加算額(585,100円)を受け取ることができます。
- 年金がもらえなくなることがある
再婚した場合(事実婚を含む)等は、遺族年金を受け取る権利がなくなります。
再婚した後も年金を受け取っていた場合、返さないといけません。
- 複数の年金がある場合は選択
自分自身の老齢年金又は障害年金を受け取ることができるようになると、金額の高い年金を選択することになります。
※65歳以降は自分の老齢厚生年金が支給されます。(遺族年金の額が大きい場合は、差額が遺族年金として支給されます。)
- 子どもが高校を卒業するまで
①遺族厚生年金:夫の報酬比例部分の年金 × 3/4
②遺族基礎年金:780,100 + 224,500円 = 1,004,600円
- 子どもが高校を卒業したら(妻40歳以降65歳まで)
①遺族厚生年金:夫の報酬比例部分の年金 × 3/4
②遺族基礎年金:0円
③中高齢の寡婦加算額:585,100円
労災と社会保険(遺族年金)の調整
労災の給付(遺族補償年金)と社会保険給付(遺族基礎年金・遺族厚生年金)どちらも受け取れる場合は、労災保険(遺族補償年金)の給付が減額されます。
①遺族補償年金:(年金給付基礎日額の200日分) × 0.80 ②遺族特別支給金:300万円(一時金) ③遺族特別年金:算定基礎日額 × 200日分 ④埋葬料:315,000 + 給付基礎日額 × 30日分(一時金) ①遺族厚生年金:夫の報酬比例部分の年金 × 3/4 ②遺族基礎年金:780,100 + 224,500円(子の加算) = 1,004,600円
保障だけでは足りない?どうやって備えたらいいの?
万一の場合のくらしをイメージしておく
万一夫が先に亡くなってしまう、そんなことは考えたくない・・と思うかもしれません。
でも、人には必ず死が訪れます。
夫が先かもしれないし、自分が先かもしれない。
そのことを意識することが、一日一日を大切に過ごすことに繋がるかもしれません。
亡くなったあと、どんな暮らしをしていたら「自分らしく」生きていると感じられるか、イメージしてみましょう。
足りない額があるかどうかライフプランで確認しよう
STEP① 現在の家計費は?
どのくらい足りない額があるかの目安を確認するツールとして「ライフプラン」があります。
まずは、今現在、暮らしてていくためにどのくらいのお金を使っているかを把握するからスタートです。
現在の収入と支出、貯蓄額等について洗い出してみましょう。
ライフプランについては、こちらの記事も読んでみてくださいね。
STEP② 夫が亡くなったあとにかかるお金は?
どんな暮らしをしていたいかを軸に、かかるお金を予想してみよう。
- 子どもが独立するまでの生活費【現在の家計にかかるお金の70%が必要と仮定】
計算方法:現在の基本生活費 × 70% × 子どもが独立するまでの年数
- 子どもが独立した後の生活費【現在の家計にかかるお金の50%が必要と仮定】
計算方法:現在の基本生活費 × 50% × 89歳(女性の平均寿命)―子どもが独立したときの妻の年齢
- 子どもの教育費
- 子どもの結婚援助費
- お葬式第 等
子どもの教育費については、下記の記事を参考にしてくださいね、
「子どもの学費っていくらかかるの?ライフプランで計画的に準備しよう」
STEP③ 夫が亡くなったあとの収入は?
亡くなった後の収入合計額を予想してみよう。
- 妻の収入(給料・老齢年金など)
- 社会保障(公的年金(遺族基礎年金・遺族厚生年金)、労災)の額
- 夫の勤務先からの死亡退職金・見舞金 等
STEP④ 足りない額の目安は?
ステップ②③をもとに足りない額の目安を算出してみよう。
- 万一のときにかかるお金②-万一のときの遺族の収入―現在の貯蓄
目安は、状況が変われば変化します。
一度計算して終わりではなく、何度も見直すことが大切です。
備える方法は?
家計を見直そう
万一に備えて、今のうちに家計を見直し、今できることから始めてみましょう。
家計の見直し方法
①収入を増やす
②支出を減らす
③計画的に貯蓄する
④資産を運用する
①収入を増やす
- 働き方を変える方法はありませんか?
(勤務時間を増やす・パートから正社員になる・副業を始める)
- 老後に受け取る年金額を増やす方法はありませんか?
(新たにイデコに入る・厚生年金に加入する等)
②支出を減らす
- 回数を減らす、もしくは予算を下げることができる支出はありませんか?
(外食・旅行・車の買い換えなど)
- 毎月決まって払う支出で、改善できそうなものはありませんか?
(携帯電話の付加プラン・カード会社の年会費・保険の見直し・今より家賃の低い所に移る)
- 住宅ローンの見直しを検討したことはありますか?
(借り換え・返済額軽減型の繰上げ返済)
- レンタルやシェアリングで可能なものはありませんか?
③計画的に貯蓄する
- ①②の家計の見直し等で無理なく貯蓄できる額を決めよう。
- 決めた金額を毎月、最初に、定期的に貯蓄しよう。
(財形貯蓄、定期積み金、社内預金等)
④資産を運用する
- 預貯金にもリスクがあること、知ってますか?
預貯金だけに偏っている人はいませんか?預貯金にも、物価が上がった場合、お金の価値は下がってしまうというリスクがあります。
- 資産運用のリスク=損失、と思っていませんか?
資産運用のリスクとは「値動きの揺れ幅」のことをいいます。この揺れ幅が大きいほど損失の危険性も高くなりますし、期待できる収益も高くなります。
- 分散して運用しよう
状況に合わせて利用する商品や通貨を分散しておくことがトータルで備えることにも繋がります。
- 買う時期や売る時期も分散しよう
- 長期的な視点で運用しよう
保険を見直そう
保険は、万一のときに備える「転ばぬ先の杖」です。
いざという時になって、保険金が下りない、金額が少ない等「こんなはずではなかった」ということにならないように契約内容をしっかり確認しましょう。
死亡保障の保険のタイプも色々とあります。
現在加入している保険の種類や、夫が亡くなった場合、どのくらいの金額が出るのかなど、知っていますか?
保険証券などに内容が書かれていますが、見てもよく分からない、という時には、保険会社の担当の方か、FPに相談してみてくださいね。
①終身保障 保険料の一部が積立てられるため、途中で解約した場合でも、解約返戻金が支払われます。※掛け捨ての保険と比べて保険料が高めです。 ②定期保険 保険期間が過ぎた後に亡くなった場合には、保障はありません。終身保険より保険料は安くてすみますが、更新ごとに保険料が上がるタイプもあります。 ③収入保障保険 毎月受け取るタイプや、毎年受け取るタイプがあります。
まとめ
今回は、夫が仕事中に亡くなった場合の保障や、お金面で備える方法について書かせていただきました。
備えあれば憂いなし。
万一に備えつつ、老後を二人で仲良く迎えることが理想ですよね。
お金面でも備えていた分、老後の生活にもゆとりが出てくるはずです!
制度や家計運営等でよくわからないということがあれば、中立的な立場でサポートさせていただいているFPにご相談くださいね。
長文をお読みいただきありがとうございました。
何か、ご家族で心豊かな生活を送るためのヒントがあれば幸いです。