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【はじめての認知症介護】不安、注意点などプロが語るリアルな実例

 
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1995年 看護師のキャリアを生かし、大手複合医療法人、社会福祉法人の介護・福祉サービス事業に11年間携わる。   2006年〜 認知症高齢者グループホームを立ち上げる。開所当初離職率82%から、4%に激減させる。 2018年〜 人財育成コミュニティ「ケアびと育成Lab.」立ち上げる。 現在までに、さまざまな家族介護の相談、介護保険についての相談、認知症介護の相談、介護職員のキャリア相談など、延べ1万人以上の方の相談、支援してきた。 今も認知症高齢者グループホーム所長として奮闘する中、「ケアする人、される人が、笑顔が溢れる世界を創ろう」と、わかちあう「ケアびと」と共に地域活動・社会貢献をも実践している。

「認知症になったらもうおしまい」認知症になったら、治ることはないからもう、介護者が我慢をするしか方法はないのでしょうか。

もしも、今あなたが、認知症の介護がはじまりどうしていいのか、不安の中にいるとしたら、認知症の本人がどういう状態なのを知り、その不可解な症状に隠れている心理やその理由を考えることがとっても大切です。

きっと、介護者のあなたが、この先の見通しをつけることで、今の不安や悲しみの軽減につながることになります。

今回は認知症の介護がはじまったばかりの介護者の方が少しでも今の状態から楽に前向きな認知症介護ができることをお話します。

認知症ってなあに

そもそも、認知症ってどういう状態をいうのでしょうか。

  • 何らかの脳の疾患により、
  • 認知機能が障害されて、
  • 生活に支障が生じる状態である。

これってどういうことをいうのでしょうか。

たとえば、

  • 脳の画像検査をして脳の萎縮の状態が見られる
  • ついさっきのことを忘れる
  • 何度も同じ物を買い物してきてしまい、冷蔵庫の中は同じ物であふれている

この3つが揃って認知症と言われています。

認知症って「認知病」とはいわないんですよね。つまり「認知機能の低下による生活のしづらさがある状態、症状のこと」を言います。

何が言いたいのかといいますと、仮にアルツハイマー型認知症が何人かいたとして、その人の生活環境や、家族の状況、生育史、職業歴などによっては、ひとりひとり症状の出方が全く異なります。

個別的で、認知機能が低下していても、生活のしづらさがあったり、なかったりするのです。

6つの認知機能

そもそも、認知機能ってなんでしょうか。認知機能には6つの機能があります。その認知機能が低下するということはどういう状態のことをいうのでしょうか。

1 学習と記憶

短期記憶:新しいことを覚えられない。会話の中で同じ話を繰りかえす。

長期記憶:言葉の意味がわからない。自分の体験を忘れる。

2 言語

言葉が出にくい。「あれ」「それ」など代名詞が多くなる。人の名前が思い出せない。相手の話を理解できない。

3 知覚と運動

空間認知:迷子になる。洋服を脱ぎ着できない。

視覚認知:人の顔がわからなくなる。

4 複雑注意 

料理や運選ができない。同時に2つ以上のことができない。気が散りやすくなる。

5 実行機能

予定が立てられない。意欲が減退して無気力になる。暗算ができない。

6 社会的認知

表情から気持ちが読み取れない。思いやりの欠如。我慢できない。暴言する。攻撃する。

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この6つの機能のいずれかの機能を果たす、脳の一部や全体が萎縮し、または変性したことで機能低下が見られるようになります。

生活のしづらさを嘆くだけでなく、どうしたら生活しやすく出来るかと考えることが必要です。また、誰と関わって、どこで過ごし、できない所を誰に介助してもらうのか、どのようにつながって生活していくのかを考えていくことが重要です。

介護相談の実例紹介

事例1 52歳(Yさん)からの相談

父親から、「お母さんが(母親)が、夜眠ろうとしない。一晩中片付けをしている。どうしたらいい」と電話がかかってきました。母親は、片付けをしていると言っても、こっちのものをあっちにやって、いつまでたっても片付かず、また探し物をしている。整理整頓になっていない状況や、寝むれない状態で、父親はとても心配になりました。何とか片付けることやめ、眠るように言っても、聞き入れる様子はなく、逆に怒りだし困り果てて、私に電話をしてきました。このことが受診のきっかっけでした。前頭側頭型認知症と診断されました。ショックでした。まさか、母親が認知症になるとは思ってもいませんでした。

母親は、今でいうキャリアウーマンの先駆けです。私をベビーシッターさんに預けても、働き続けてきました。60代頃より通い始めた俳句教室に、現在も通っています。毎月の俳句投稿で賞を何度もいただいたことありました。それが今は、言葉が浮かばず、思うような作品が作れないことに苦しんでいる様子を見ているのが辛いです。「片付けても、ちっとも片付かない」「なんでこんなに物がなくなる」「自分の作った俳句がどれだかわからなくなる」ということを口にするようになり、気丈な母嫌が弱音を吐くことや、今起きている状態を、何とか受け止めようしているのだと思うと、とても悲しいし、やりきれないです。

今まさに、認知症の介護がはじまったばかりのリアルなご相談内容でした。

ご本人が、誰よりも一番辛い思いをされています。それを傍で支えていて本人には変わってあげることはできない、介護者の苦悩やもどかしさがあります。混乱や戸惑な中、家族からのご相談から始まることがほとんどです。

身近なご家族から、ご相談が来る時点では何らかの生活の支障(生活のしづらさ)の状態にあり、困って相談に来られます。

まずは、ご相談内容を丁寧に伺いながら、今後の生活方法や、本人の受診や、服薬について、介護者の方の仕事や生活について、様々な観点から相談支援を行っています。

こんな時、あなたならどうする

事例2 60歳(Kさん)からの相談

「私は認知症なんか、じゃない!」言い張り、母親が受診しようとしてくれなくて困っています。

「私は認知症でない。私をみんながおかしいと言っているが、誰だって年だから物忘れする、寄ってたかって、私を病人にしようとしている」というというご相談でした。

あなたなら、母親(ご本人)にどのように対応しますか?

  • 忘れてしまっている事実を、突きつけ理解をしてもらう。
  • 「もう歳だから、仕方ない」と諦めるように話す。
  • (父親に)おかしいと言っている人がおかしいから、気にしないようにとはなす。
  • 怒りだすから、そっとしておく。
  • 病気かもれないから、うそをついて無理やり連れていく。
  • こんこんと説明をして、納得をしてもらう。
  • 私(介護者)が、あなた(母親)の事が心配である、私のために受診して欲しいと懇願する。

など、いろいろな関わりが考えられます。「これはそうだ」「いやいやこれは違うな」など、それぞれに思われたのではないでしょうか。

ここでポイントとしてお伝えしたいことは6つあります。

1.一方的意見を押し付けない。

押し付けられた方も、話した方も両方ともにいいことはない。

2.原則、嘘はつかない

その場しのぎの対応は、あとで介護者を苦しめる

3.無視、放置はしない。

片目をつむってでも、気にかけよう。

4.説得よりも納得

本人が「あ、そうか」「ま、いいか」って納得することが一番。

5.認知症も早期診断、早期対応

進行を遅らせる要因になります。

6.何もかもが、失った訳ではない

できることがまだあり、その力を信じよう。

このキーワードを頭の隅に置きながら対応してみるのはどうでしょうか。また第3者とも相談しながらすすめて、介護していくことをお勧めいたします。

認知症の症状をゆるやかに

認知症は、進行性していきます。しかし、この進行を緩やかにしていくことは可能です。

認知症の症状のひとつに、見当識障害があります。見当識とは3つあります。

時間の見当識

場所の検討識

の見当識

認知症初期は、いつなのかわからない

中期には、ここがどこなのかわからない

後期には目の前の人が誰なのかわからない

といった順序を辿って進行していくといわれています。後期の状態になった時には、目の前の娘さんだったり、息子さん、またはこれまで一緒に生活を共にしてきた人の顔がわからず、記憶にある人物がご家族だったりします。

私の働くグループホーム(認知症対応型生活介護)におられる入居者の方も、見当識障害が進行していきますと、会いに来られた息子さんが「自分の息子ではなくて」「弟だ」と言われることは珍しいことではないです。

むしろ、ご本人にとっての息子さんは20代くらいの若々しい姿の息子さんかもしれません。目の前の白髪まじりで初老の息子さんは、弟さんにしか思えないのです。しかし、社交性のあるその方は、「よく来てくれたね。会いたかったわ。」と笑顔で話されます。薄々自分のことを息子だとわかっていないじゃないかと寂しいと感じていた気持ちも少しは軽くなります。

見当識障害が、進行度が急激な場合、認知症の本人も、その介護者も混乱し、対応に苦慮します。できるだけ、緩やかにかつ本人のペースに合わせた対応が望まれます。

見当識障害への対応として、7つのポイントをお伝えします。

  1. まずは同調する
  2. メモや表示を活用する
  3. 苦労話、自慢話の会話をたいせつに
  4. 得意なこと、今できることを行ってもらう
  5. 気になってもすぐに口にしない
  6. 環境を急に変えない
  7. しばらくしたら話題を変える

まとめ

今回は、認知症の介護がはじまった介護者に対して、長年、認知症の方や、そのご家族と関わってきた私が、多くの相談を受けたことで気づいたことや、つねづね感じていることを書きました。

現在、介護真っ只中の介護者の方のお役にたてることがあったら嬉しいです。これから認知症になる人が増えてくると言われています。いつ私自身も認知症にならないとも言えません。

「認知症は大変」「なったらおしまい」ということではなく、「身近に共に支え合う」地域、職場、家庭を目指して行きたいと思います。

その為には、普段の会話の中で、自然と認知症の話題になったり、腫れ物に触るように、タブー視せずに、認知症介護のことを語れるといいですよね。だれしも、自分を大切にして欲しい。その人らしさを大切にしたいと願っているのではないでしょうか。

ケアする人(介護者)も、笑顔で過ごせるような関わりをしていきたいですよね。いかにして一人一人が豊に暮らせることを考えていくことを求められています。

そんな私自身、「ケアする人、される人が笑顔溢れる世界を創ろう」を目標に、日々考えて生活しています。

最後まで、お読みくださいましてありがとうございます。

ところで、告知があります。どうか、みなさん、メモをとってくだささいね。

★オンライン講座のお知らせ★

2019年 12月 12日(木)19:00〜20:30

ZOOMを使った認知症講座を行います。

参加申込み希望の方は、下記のURLから御入室ください。

↓ ↓ ↓ ↓ ↓

URL    https://us04web.zoom.us/j/2469053684

内容

第1部

認知症ってなあに

リアルな認知症介護者のおはなし

(休憩)

第2部

あなたならどうする

ワークショップ

参加方法  12月12日(木)19時になりましたら、下記のURLをクリックして入室ください。

URL:https://us04web.zoom.us/j/2469053684

参加費   無料 

前半・後半も同じURLで、ご入室くださいね。

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前準備  ZOOMアプリを予めダウンロードする。

WiFi等ネット環境の良い場所で参加する。

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もしも、入室方法や、ダウンロードの仕方、その他設定等でご不明な方は個別にご連絡ください。ご説明させていただきますね。

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1995年 看護師のキャリアを生かし、大手複合医療法人、社会福祉法人の介護・福祉サービス事業に11年間携わる。   2006年〜 認知症高齢者グループホームを立ち上げる。開所当初離職率82%から、4%に激減させる。 2018年〜 人財育成コミュニティ「ケアびと育成Lab.」立ち上げる。 現在までに、さまざまな家族介護の相談、介護保険についての相談、認知症介護の相談、介護職員のキャリア相談など、延べ1万人以上の方の相談、支援してきた。 今も認知症高齢者グループホーム所長として奮闘する中、「ケアする人、される人が、笑顔が溢れる世界を創ろう」と、わかちあう「ケアびと」と共に地域活動・社会貢献をも実践している。










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