【介護現場の実際】虐待、拘束はあるの?介護職の人材育成の5カ条
こんにちは、ケアびと育成コンサルタントのひらのまゆみです。
「介護現場の虐待・拘束」という記事タイトルを見て「私には関係ないこと」と思いますか?
それとも「身に覚えがある」それとも「身近にあること」と思いますか?
介護業界で働いている人たちや、そうでない人たちも、「介護業界のイメージを下げる」とか、「やっぱりそうなの?」と疑念を抱いた方もいるかもしれません。
ここでは、「人を傷つけてはいけない」「人殺しは犯罪である」と道徳や倫理としてわかっているにも関わらず、実際に起こってしまった痛ましい介護職による高齢者虐待は、どうして起きてしまったのか。
なぜ、そのことを防ぐことができなかったのかを、考えるきっかけとして、このテーマについて書いてみたいと思いました。
そして、現在、介護職員を育てている人たちの気づきとなる「人材育成5カ条」についてお伝えしていきます。
こちらの記事もご確認くださいね
虐待・身体拘束とは
虐待の定義 (法第2条第5項)
https://ja.wikipedia.org/wiki/
身体拘束(高齢者)
利用者の意思とは関係なく、体の一部を縛ったり、行動を制限したりすることと一般的に言われています
何故、このようなことが取り上げられ問題となるのでしょうか。
禁止の対象となる具体的な身体拘束行為
- 徘徊しないように、車椅子や椅子、ベッドに体幹や四肢をひも等で縛る。
- 転落しないように、ベッドに体幹や四肢をひも等で縛る。
- 自分で降りられないように、ベッドを柵(サイドレール)で囲む。
- 点滴・経管栄養等のチューブを抜かないように、四肢をひも等で縛る。
- 点滴・経管栄養等のチューブを抜かないように、又は皮膚をかきむしら ないように、手指の機能を制限するミトン型の手袋等をつける。
- 車椅子や椅子からずり落ちたり、立ち上がったりしないように、Y字型 抑制帯や腰ベルト、車椅子テーブルをつける。
- 立ち上がる能力のある人の立ち上がりを妨げるような椅子を使用する。
- 脱衣やおむつはずしを制限するために、介護衣(つなぎ服)を着せる。
- 他人への迷惑行為を防ぐため、ベッドなどに体幹や四肢をひも等で縛る。
- 行動を落ち着かせるために、向精神薬を過剰に服用させる。
- 自分の意思で開けることのできない居室等に隔離する。
しかしこの状態は、文字や言葉にするとこんなことはありえないとか、自分たちはこんなことはないと思えるかもしれません。
しかし、この状態になりかねないことが、日常に潜んでいます。
「例外やむを得ない3条件」を除いては、この行為は決してしてはいけないのです。
この行為は、人の尊厳、自由を奪うものなのです。
例外止むを得ない3原則
目的や危険を伴う行為の防止に関して「例外やむを得ない3原則」をこの場合理解しましょう。
介護職の倫理・道徳のジレンマ
以前ニュースでの取り上げられた「有料老人ホーム」転落事件や、その後映像として流された虐待の場面はとても衝撃を受けました。
この事件は、ショッキングな出来事と思ったのは、決して、私だけではないと思います。
もしかして、自分の事業所でも起きていたかも、そこまでは思わなかったとしても、もしかして頭によぎったかもしれません。
<虐待と不適切なケアの間にあるグレーゾーン>
利用者の権利利益が侵害される状態となっていれば、その行為を「虐待」とみなして、再発防止に努める必要かがあります。
明確に「虐待」と判断できるような行為と、「虐待」かそうでないか判断に迷うような「グレーゾーン」が存在しています。
介護職員の質問として、「これって(このケアは)虐待ですか?」または、「これ(このケア)は、虐待ですよね。」と尋ねられることがあります。
このパターンは一番危険な思考です。
なぜならば、虐待はしては行けない行為ということを誰しもわかった前提で、なおかつグレーンゾーンに入るケアに対して、適切かどうか自らの判断能力を持つ視点を求められることがあります。
この概念図は、明らかに顕在化した虐待の状態と、不適切なケアを底辺とした時にそこから虐待と断定できるまでの間には、とても幅広いグレーゾーンのケアを含んでいます。
白黒つける(これは、虐待であるVS これは、虐待ではない)と判断しようとすることで、判断に迷うようなケアが必ずあります。
その場合、虐待か、虐待でないかという選択ではなく、倫理や道徳での判断から、さらに深く一つ一つ問いかけてみましょう。
- 適切か不適切か?
- 心地よいか不快か?
- 何だかモヤモヤしているのは、どういうことなのか?
- 自覚しているのか、無自覚なのか?
- 一方的な見方になっていないか?
- 何がそうさせているのか?
- 他に方法はないのか?
- 虐待の芽になっていないか?
- ケアする人、される人は、笑顔でいるか?
意図的な虐待と非意図的な虐待
このグレーゾーンの中には、意図的な虐待の場合と非意図的な虐待とがあります。
つまり、知っていて行なっているか、それとも知らないで行なっているかの違いがあると思うことです。
同じ虐待や、身体拘束の行為が行われていたとして、この意識の差は、とても大きく対応方法も違ってきます。
このグレーンゾーンにある、意図的なケアと非意図的(無自覚)なケアについて考えてみたいと思います。
この学習の5段階の図に落とし込んで考えてみましょう。
人は無意識であれば出来なくて当然です。しかし段階を経て最上級になると、無意識しできるようになります。このことを置き換えて考えてみます。
レベル1 虐待や身体拘束を知らないし、その行為をやっている。
レベル2 虐待や身体拘束の行為はいけないと知っているが、その行為をやめることが出来ない。
レベル3 虐待や身体拘束の行為はしないと意識しながら、その行為をやめることができる。
レベル4 虐待や身体拘束の行為を意識しなくても、その行為を自然にしない。
レベル5 虐待や身体拘束の行為を意識しなくても、意識して教えることができる
あなたはどの段階でしょうか?
このレベルを、時と場合によっては行ったり来たりしながら揺れ動いてはいませんか?
グレーゾーンのケアに無意識化して無能な状態になっていませんか。
虐待の芽チェックリスト
高齢者施設・事業所における虐待防止学習テキスト
http://www.fukushihoken.metro.tokyo.jp/zaishien/gyakutai/torikumi/doc/zero_tebiki.pdf
不適切なケアの弊害
利用者本人の意思に反して行う拘束の弊害があります。
動かなくなることで、認知症が進み、床ずれができ、体が固まる。四方を囲ったベッドの柵を越えて転倒する。
ベルトで固定された車いすから降りようと、車いすごと倒れるなど、拘束が重い事故につながる危険性もあります。
何より怖いのが「仕方がないことと諦め」につながることです。
利用者の表情が乏しく、食欲が落ちたり、生きる意欲を失ってしまう。
こう言ったことの負のスパイラルを遮断して、ケアを問いかけていきたいものです。
https://www.mhlw.go.jp/bunya/shougaihoken/cyousajigyou/dl/seikabutsu10-1.pdf
介護職の人材育成の5カ条
1. 一人で抱え込まない。
自分だけで悩まず、「あれっと」心に引っかかる場合は、虐待の芽は早めに摘んでおきましょう。
2. ダメか良いかの2者選択ではない。
これは虐待、拘束にあたるとか、これは当たらないと言った正解、不正解というよりも、グレーンゾーンに注目しよう。
3. 良いケア・悪いケアである前に、一人一人が大切な人であることが大前提である。
一人一人、利用者も介護スタッフも、人間である。人から大切にされ生活の質を高めた人生を送りたいのは誰しも同じである。ますは自分を大切にしよう。
4. チーム・組織で話し合い、考える。
多方面から、取り組もう。何度の話し合おう。これで良いということは決してない。
5. もしも、起きてしまったら、隠さない。
隠蔽、通報義務を怠るは、法律違反です。大きな事故や事件にならないような手立ては必要です。しかし、不幸にしておきてしまったことは、次の不幸を引き起こさないために、向き合い対応すること。
まとめ
あなたの働いている介護現場では、良かれととして徹底した管理体制や、また人手の足りない中で、時に過剰な要求や対応にまで時間を割き、精神的に追い詰められていることはありませんか。
もしも、虐待の芽としてのグレーゾーンな不適切なケア実態があることに、配慮に欠けた態度が組織やチームの中で、事態を最悪な方向へと向かわせることが、さらに虐待や身体拘束の芽を大きくさせる原因となりかねません。
一人一人が自分自身に問いかけ、働く意義や、対人支援をしていることのあり方を見つめ直し、気づきを得ることを、私たちは日々研鑽して行きたいです。
介護人材が圧倒的に足りない「介護2025年問題」を抱える中で、私たちの目指す高齢化社会は豊かでともに支え合うものであることを切に願います。
今回、書いていてこのテーマはとても深く、ネガティブな感情が湧き上がってきました。
もっとこのグレーンゾーンな不適切なケアに対して、日常的にオープンな話題として話し合える、アウトプットできる機会が不足していると感じます。
介護は明るく、優しく行うものといったボジティブなイメージが先行しているとしたならば、もっと、人間臭く、生身の人対人の関わりが適切なケアに結びついていってほしいです。
次回も、この虐待・身体拘束のテーマにおける介護人材育成について書きたいと思います。
最後までお読みくださいまして、ありがとうございます。