介護職を育てる時に失敗しないための質問!育成の5つのポイント
こんにちは、ケアびと育成コンサルタントのひらのまゆみです。
前回は、「経験」を振り返ることで、介護離職を防止できることについてお伝えさせていただきました。
そこで、新人職員に対して、先輩職員が意図的に質問することや、自分が自分に対した質問をすると言ったことに触れさせていただきました。
さて、今回はさらに「介護職を育てる時に失敗しないための質問」について、深く考えていきましょう!
「質問」とは、わからないところや疑わしい点について問いただすこと。また、「質問に答える」とか「先生に質問する」と言った場面で、質問が登場することがあります。
「質問」することは、わからないことを問いただすだけではなく、人財育成する上で質問を活用することで、学んだり、気づきのきっかけになることがあるかと思います。
その手がかりと、この質問は失敗につながりやすいパターンなどをお伝えしていきます。
介護人財育成の質問力
「私たちが得る答えは、何を質問するかによって決まる。つまり、どれだけ素晴らしい答えを得られる質問ができるかどうかだ。」“アンソニー・ロビンス”
介護人財を育成していく中で、質問することの大切さを置き去りにしていることが多くあります。ついつい忙しさにかまけて、質問する機会を飛ばして、いきなりやり方や結論を伝えてしまうことをしがちです。
なかなか結果が出せないで困っているスタッフに対して、答えを伝えてしまうことがあったりします。
そのことで、その場は一旦うまくいったような気になりますが、しばらくするとまた同じような疑問や、質問をしなくなるような事柄が起きてきます。この場合は質問をしなかったことで、相手との関係性で何かしらの影響があるのではないかと思えるのです。
この介護人財育成の場面で、質問とは、育成者が何かしら知り得えたいこと、疑問に思った時、何を質問するのか、どのように質問するかによって、どれだけの答えが返ってくるか変わってくるのではないか。そしてさらにお互いの気づきの促進につながる質問力をつけるためには、どのようなものでしょうか。
具体的質問と抽象的質問
閉ざされた質問と開かれた質問
まずは 質問の種類としてよく耳にする閉じた質問(クローズド・クエスチョン)と開いた質問(オープン・クエスチョン)があります。
この2つの質問を理解して使い分けることが必要です。 早く結論を出したいときは、閉ざされた質問、また会話を広げる時、開かれた質問を使うと効果的。 そしたこの2つの質問を合わせて使うと、さらに会話が深まるとも言われています。
では、介護現場での人材育成の場面で質問したくなることは、どんな時があるでしょうか?
閉じた質問(クローズドクエッション)の例
- 「仕事は楽しいですか?」
- 「仕事にやりがいを感じていますか?」
- 「今、忙しいですか?」
開かれた質問(オープンクエッション)の例
- 「介護の仕事のどんなところが楽しいですか?」
- 「介護をする上で、やりがいを感じることはどんなことですか?」
- 「今何処まで仕事は、進んでいますか?」
ここで、5W1H 何時、何処、何故、誰、何処、どのようにといったことを意識した質問を行うことをしてみましょう。
質問は、開かれた質問だから良いとか、閉ざされた質問だからダメだとかというものではなく、その時々の状態、状況によって、または相手との関係性にとってはよくも悪くもなります。
それは、非難や「ダメだ」と否定されているように相手が感じる。
「なんで今、このことを聞かれるのだろう?」と不信感を持つことがあります。
同じことを尋ねているにも関わらず、気持ちに寄り添ってもらえていると感じることや、安心して話そうと思えることがあります。
具体的な質問と抽象的な質問
次に、質問する時この2つを使い分けてみましょう。閉ざされた質問と開かれた質問を5W1Hを意識しながら、次の2つの質問を実際に行ってみましょう。
介護場面での具体的な質問
- 「〇〇さん、今日の△△さんの状態について、もっと知りたいので教えてもらえますが?」
- 「今、行なったこの介助は、全介助?それとも一部介助ですか?」
- 「さきほどの報告の中で、元気かないと言われたのは、どういう状態のことですか?」
- 「いつから、その観察を行っていたの?」
- 「車椅子介助で、どこに気をつけて行っているの?」など
介護場面での抽象的な質問
- 「あなたのとってそのことは、どういういう意味があるのですか?」
- 「先ほとの報告は、つまりどういう効果を期待しているのですか?」
- 「〇〇さんの一連の経過を、どのように捉えました?」
- 「色々な意見があったが、まとめて一言で言うとどういうことでしょうか?」
- 「この先は、予測をしていますか?」など
失敗しやすい質問
ここで失敗例を1つ挙げてみましょう。
「なんで、〇〇さんの状態が、こうなっているの?いつから、この状態なの?」と質問したとします。
この場合、質問した育成者は、利用者の方の状態に何かしら疑問を感じた為、ケアスタッフに質問をしたのでしょう。しかしながら、受け取ったケアスタッフは、おそらく「なんで?と言われても、」とか、「いつから?と言われても、そもそも見ていない方が悪い。」などといった苦言的な感情が湧いてくるかもしれません。
[質問の失敗パターン]
- 相手を傷つけ、へこますためのコミュニケーション
- 一方的、強制的、命令的、否定的、高圧的
- 指示の背景が不明など、納得しにくい対話
- 話の腰を折る、頭から否定する
- 笑顔がない、笑いがない
- 利己的、閉鎖的、冷たい、機械的
- 話し手だけが納得してしまっている抽象的なコミュニケーション
- ハラスメントを伴う(セクハラ、パワハラ等)
- 言いたいことが伝わってこない
- 言いっ放し、フォローがない
- 投げかけた問いに対する返事がない
(『3分間コーチ ひとりでも部下がいる人のための世界一シンプルなマネジメント術』より抜粋編集)
- 信頼関係の構築が先である
- いつも見守られているという、安心感の上に成り立つ
- いきなり質問しない
- 相手の状況、状態を確認する質問をする
- 口調は緩やかに、コンパクトにする
- 質問は対話の中に生まれる
相手への質問と自分への質問
相手に気づきを与える質問
「気づき」とは、他人から教えらたり指摘されることなく、自ら心で感じ、物事に対して今までとは異なる理解や認識を持つようになることだと定義づけられます。
具体例
- 「現在の進捗度は、何%くらいですか?」
- 「もしそれをしなければ、どうなりますか?」
- 「周囲からどのようなサポートを得ることができますか?」
自問自答
自問自答とは、自らに問いかけて、自ら答えをいうこと。納得がいかないことや疑問を、自分自身で、反芻(はんすう)すること。また、あれこれ考えて思い悩むこととあります。
具体例
- 「その課題において自分が得たい結果とは何なのか?」
- 「なぜその結果を得たいのか?」
- 「どうすればその結果を得られるように課題を解決できるのか?」
- 「この課題や方法は自分の将来にとってどのような意味があるのだろうか?」
- 「この課題に取り組むうえで、今自分がなすべきことは何か?」
これは、育成したい相手が自問できるような問いかけではありません。育成者自身が自ら、自身に問いかけてみる質問であります。そうすることで、相手に対しての関わり方の気づきの促進につながると可能性があります。
しかし、ここでやってはいけない自問自答があります。
- 「何故、自分だけがこんなに大変なことが起きているのだろうか?」
- 「どうすることが一番良いのだろうか?」
- 「誰も助けてくれないのは、どうしてなのだろう?」
「これは、いつまで続くのだろうか?」といった自問自答することは避けたいです。
質問の内容が悪いと言っているのではありません。一見ネガティブな感情を伴う自問自答の質問ですが、この質問を自分に投げかけた時いつまでもその場で留まっていることで個人やチームにとって成果や良い結果をもたらしているかどうかを考えてみてください。
また介護を受ける利用者の方にとって良質なサービスを提供できることにつながるものであれば、必要であるかもしれません。
もし、そのような結果に結びつかないとしたならば、次にあげる質問を行ってみてはどうでしょうか。
介護職の育成に効果的な質問の5つのポイント
育成したい相手に対して、あなた自身も効果的な結果つながる質問のポイントを5つ挙げてみました。
1 視点を変える
虫の目、鳥の目、魚の目といったいわゆる多角的な視点で質問をしてみよう。
2 未来記憶が描ける
目標や目的を明らかにできる質問をしてみよう。
3 選択できる
相手が自ら選択できるような質問をしてみよう。
4 強み、個性に気づく
日頃から相手を見守りよく見て、感じたこと(アイメッセージ)を付け加えた質問をしてみよう。
5 本気・やる気につながる
目標や目的に向かって戸惑いや、勇気が持てないでいたら、行動スイッチが入るような質問をしてみよう。
まとめ
私たち育成者は、相手の様子を見ながら、リアルな現状に寄り添うことから始まります。
育成者として質問力を高めていくことは、介護スタッフ、新人スタッフが成長できることや、利用者に満足していただける介護サービスを提供できることの結果に繋がります。
もちろん、育成者のあなた自身の育成力や、生き方そのものにも大きな影響をもたらすことにもなりかねません。
良い結果やよい未来を創り出すために、相手に質の高い質問をしているのか、相手はそれによって気づきを得られているのか、何に気をつけ、何をしようとしているのかと、自分自身の対しても質問(問いかけ)をしながら行動を進めていきましょう。
最後までお読みくださいましてありがとうございました。