介護現場におけるリーダーシップに疲れた時の、チームづくり10個の秘訣

「ケアびと育成コンサルタント」平野真弓です。
介護現場での、リーダー像とはどのようなものでしょうか。
リーダーにもいろいろなタイプがあります。
PM理論を学びながら、介護現場で必要とされるリーダーについて、一緒に考えていきましょう。
理想のリーダーとは
ところで、どんなリーダーが理想のタイプなのでしょうか。
リーダーとは、リーダーとは、目標や方向性に向かう道筋を示し、組織を一体化させて統率する任務を遂行する「役割」のことです。
PM理論からいうリーダーのタイプ
一般的に言われているリーダーのタイプは、以下のPM理論の4つがあると言われています。
PM理論とは、1966年に心理学者の三隅二不二氏らが提唱した理論で、リーダーとリーダーシップは「P機能」と「M機能」の2つで構成されているという考え方のことです。三隅らはリーダーの行動にP機能(Performance function:目標達成機能)と、M機能(Maintenance function:集団維持機能)」の2つの因子を見出しました。P機能(以降はP行動と呼ぶ)は、集団の目標達成や課題解決に関する行動とされ、M機能(以降、M行動)は集団の維持を目的とする行動とされています。
- P機能とは 目的達成機能(Performance function)のことで、組織の目標達成や問題解決をする働きを差します。
- M機能とは、集団維持機能(Maintenance function)のことで、メンバーとの人間関係を良好に保ち、組織の雰囲気作りをする働きのことです。
介護リーダーのPM理論の具体的な例
P機能の具体例
目的達成機能を発揮する介護現場での具体的な場面を、考えてみました。リーダーの役割の機能とし次にあげる5つの場面あるかと思います。
1 ケアカンファレンスの場面で、ケア目標を掲げ長期目標や、短期目標を明確に示す。
2 ケアサービスと業務を区別し、利用者の方のサービスを優先しケア目標を提示する。
3 ケアの問題発生は起きた時に、対処、具体策を組織全体で考える
4 チーム内でのメーバーの役割を分担する
5 事業所、法人の理念に照らし合わせて、日々のケアを見つめ直す
M機能の具体例
では、集団維持機能をリーダーが発揮する介護現場での具体的な場面はどんなことがあげられるか、考えてみました。次にあげる5つがあるかと思います。
1 メンバーの悩みや不安に対して、個別面談し対話する。
2 カンファレンスで意見が言いやすい雰囲気や環境づくり。
3 チームで取り組めるように、根回し、土台づくり
4 季節のイベントや交流をはかる、仕掛けづくり
5 利用者の方の状態変化に合わせて行った介護対して、励ましや、叱咤激励する。
介護職の育成するリーダーの悩み
かつての私
教えたい相手に、何度も言葉や身振り手振りで教えても、なかなかうまく伝わらない。
相手が、一人前になるに時間がかかり、途中で退職してしまったことや、わたし自身のイライラがつのって、つい「なんで、そんなこともわかんないのか」ってつい怒鳴ってしまい、言ってしまってから後悔をしました。
リーダーの陥りやすいパターン
一人でいろんなことを抱え込んでしまうリーダーがいます。責任感が強い人ほどありがちです。
リーダー自ら、メンバーをグイグイ引っ張っていくことをしがちです。また、リーダーは指示、命令を決断していくことに揺るぎない確信を持つことで、メンバーがそのことに意見が言えない。
そんな裸の王様的なリーダーが、強くて一見良さげな印象ですが、実は意気込めば、意気込むほど、空回りをしはじめます。また、「私は、こんなに頑張っているのに〜」とメンバーに対する接し方が、厳しくなってきます。
リーダーが陥りやすいパターンとしてあります。
リーダーシップについて
6つにわかれるリーダーシップのタイプ
1 ビジョン型
リーダーが夢を持ち、その夢に向かって周囲を動かすというスタイル
2 コーチング型
メンバーの実力を伸ばしながら、発揮しうる可能性を目論みそれを組織の目標としていくスタイル
3 調整型
メンバーに対し細かい指示をしないのが特徴で、職人のようないわゆる「後ろ姿で導く」リーダーシップスタイル。
4 仲良し型
周囲と同じ目線に立ちメンバーからの信頼を得て友好的に物事を進めていくスタイル
5 実力型
メンバーに対し細かい指示をしないのが特徴で、職人のようないわゆる「後ろ姿で導く」リーダーシップスタイル
6 指示命令型
リーダーが常に引っ張っていくスタイル
引用:ダニエル・ゴールマン氏が提唱する分類方法
理想のリーダーシップってあるの?
とはいっても、自分はどのタイプのリーダーで、どういうリーダーシップを発揮できるがよくわからない、と思われるのではないでしょうか。
それよりも、いまのチームの中で、様々な個性のあるメンバーがいて、仮にビジョン型タイプのリーダーシップを発揮すれば、うまくいくのかというと、そうとは限りません。
確かにPMタイプで、成果をあげ、メンバーをまとめることができるP機能とM機能の両方を兼ね備えているリーダーが、リーダーシップを最大限に発揮できる状態が理想と言えます。
正解のないリーダーシップ
しかし、チームメンバーによって、また、リーダーのタイプもそれぞれです。リーダーシップに正解がないと思います。
目的は、個々のメンバーの能力を最大限に発揮できるように、チームの目的、ビジョンを達成させることがリーダーの役割であると考えます。
リーダー自身が、苦手とするリーダーシップのタイプがあることを、リーダー自らの弱みを自覚していること。
また反対に、リーダー自身が、今のチームメンバーには、どのタイプのリーダーシップが最適かどうかを見極め、自らの強みを最大限に発揮できることことが、理想のリーダーシップのかたちと言えます。
介護現場におけるリーダーシップ
介護現場において、ビジョンを掲げ、利用者の方に良質な介護サービスを提供するにあたって、個性豊かな介護スタッフが、生活支援というメンバーの裁量や、価値観が反映されやすい仕事であるがゆえにリーダーシップを、うまく使い分けるバランス感覚が求められます。
ケア計画(ケアプラン)に基づき、利用者の方に介護サービスをチームで提供していくのですが、介護スタッフの力量や、知識、経験によって自らの我流や、慣れから相手の状態にあわせたケアが提供できなかったり、基本やマニュアルがあっても、その時その時の現場の変化や、相手の心理的な状態によってケアサービスの質が低下することがあります。
その時、介護リーダーはその現状を対処していくことがあります。
みてみぬふりをしそうになったり、しょうがないよねと妥協することを選択してしまうことがあります。そんな時、リーダーは自分を責めたり、中にはメンバーが育っていないからと、責任転嫁しがちです。そのことに疲れてしまうことがあります。
理想論だけでは解決しない、介護現場の生の現実を踏まえさらに、介護スタッフをメンバーとし、チームケアを遂行していく理想のリーダーに、しなやかさ、力づよさを求められます。
ここでは、メンバーとともにどのようにメンバー育成し、チームづくりして行ったら良いのか、考えてみたいと思います。
強いチームづくりの10のスキル
強いチームの条件
しなやかな力強いリーダーのもと、チームケアを遂行していくための、強いチームは、どのようなことが必要なのでしょうか。
理想のリーダーシップを、発揮できる条件として、次にあげる10のポイントをあげます。
1 チームの目的を明確にする
「なぜやるのか」「なんのために行うのか」行動の理由を語ることができると、なりたい自分や、あるべき姿にちかづく、早道である。チームが迷ったら、まずは目的に立ち返ることが大切です。
2 メンバーそれぞれの目標、コミットメントを持つ
メンバーは、「いつまでに」「何を」「どれくらい」「どうするのか」手順や手段をそれぞれに持つことが必要です。できれば小さくステップを踏んでいくように設定することです。
3 一人ひとりのスキル(わざ)を磨く
介護サービスを提供する上で、良質なケアを担保していくには、日々の研鑽が大切です。介護技術に限らず、リーダーとしてのスキルを磨くことが、他のメンバーへも刺激となり、相乗効果として発揮されていきます。
4 メンバーがその都度、成功のチャンスの機会をもつ
リーダーひとりの手柄にならないように、メンバー一人ひとりの力量や能力、特技をよく見て、日頃から気にしておくことで、その場面が現れたらまずは、失敗してもよいという前提で、メンバーにトライする機会を与えることです。
5 仕事の進捗を、絶えず調整する
一度、仕事を与えたらぱなしではなく、当初の計画通りには、いかないのが常です。たえず気にかけながら、時々声かけをし、進捗をみていき、微調整していくことです。場合によっては、期日や目標の再設定も必要かもしれません。
6 チームを応援してくれる人と、関わりをもつ
チーム内だけで、関わりを完結しようとすると、行き詰まりを起こしかねません。できれば、チーム外で、近くに関わりのある関係する機関やメンバーをも、巻き込みながら、時には応援してもらうことを力にしていくことで、チームの仕事の成果を加速させることがあります。
7 責任と権限をメンバーに、具体的に移譲している
最終の責任は、リーダーがとるという覚悟はありますか。メンバーは、責任だけ押し付けられ、権限を持たされていないといったことが多くみられます。ここでは、より具体的な責任の範疇と権限の範囲をお互いに役割を与える前に、明確にしておきましょう。
8 メンバー自らが、主体的に行動できる
やらされ仕事は、自分ごとになりません。私は知らない。聞いてないなどの言葉がかえってきます。現場のことを一番に知っているのはメンバーです。まずは、聞かせて欲しいという姿勢で、たずね、メンバーの意見を取り入れることを行ってみましょう。出切れ大きな事柄より、小さなことを積み重ねていきましょう。
9 メンバー同士、フィードバックできる
いいことは褒め合い、悪いことは隠さず、お互いが事実を意見交換できる、雰囲気、風土を作っていくことを注力していきましょう。リーダー自身にも、メンバーから、ボジティブも、ネガティブも両方の意見を言ってもられる関係づくりをしていきましょう。どうしたら意見が出るのか工夫していきましょう。
10 情報がオープンで、必要な情報が共通できる
チームの中で、公平に情報は公開されることが第一です。初めからこの情報は必要ないのではないかと、公開しないことより公開することで、メンバーが役割を遂行する上での必要な情報を取りに置くことが、チームの活性化につながります。その場合守秘義務やプライバシーの保護には十分配慮する必要はあります。それ以外は、情報はオープンな方が、チームは活性化します。
これからのリーダーのすがた
では、この10個の秘訣をおさえていれば、最強のチームが作れるのでしょうか。そんなことであれば、どのチームリーダーは悩むことはないでしょう。
やはり、これからのリーダーは、強さだけでは存在しましせん。強さと弱さの両方を自覚し、メンバー一人ひとりに対しても、弱さや心の痛みを察知し、適応することが求められます。また、指示と支援のバランス感覚を兼ね備えることも必要です。
ケアチームのメンバーが、自ら行動しようとする環境を整えることも役割のひとつです。
一筋縄ではいかない最強チームづくりは、ビジョンを掲げ、リーダーはなぜこのことを行う必要があるのか目的を、自らの言葉で語り、リーダーもメンバーの一人として、一人ひとりが目標を持てるよう、共に進んでいくことがこれからのリーダーに求められる姿であると思います。
まとめ
ケアびとは、どういう人のことを言うのか、「ケアびと」はケアする人にも、ケアされる人にもなります。
「ケアびととは、対人支援する人」つまり、人を育てることを生業にし、ケアしたり、時にはケアされたりしながら、チームの中で生かされるひとを「ケアびと」と定義しています。
そんなケアびと達の苦しみ、悩み、希望に寄り添い、伴走したい私は、「ケアびと育成コンサルタント」です。
今回は、「介護人材育成者必見!リーダーシップに疲れた時の、チーム作り10の秘訣」について紹介したしました。
介護現場におけるチームづくりは、理想を語るだけでは解決しない現実があります。
しかし、変わらない現実にたいして嘆いているだけでは、あなた自身の現実も、辛いことばかりです。強さだけではない弱さも露呈できるしなやかさを持ち合わせるような、日頃からの意識をすることとして10個のポイントをお伝えしました。
リーダーのあなた自身の意識を変えることで、必ず周囲のメンバーにも良い効果が現れると信じています。
チームを最強にする一番の近道は、リーダーのあなた自身が成長することであると思います。そんな成長していきたいあなたを、私はいつでも応援しています。
それでは、最後までお読み下さいましてありがとうございました。
私が主宰する対人支援職のコミュニティの詳細は、こちらになります。
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