国家資格キャリアコンサルタント集団が斬る仕事論

【共働き夫婦】どちらかが病気で働けなくなった時どんな制度や保障があるの?

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キャリア設計デザイナー(国家資格キャリアコンサルタント、社会保険労務士、CFP)。 信用金庫の人事を18年間担当後独立開業。トリプル資格を活かし、「くらしにまつわる各種制度・ファイナンスの知識」と「質問の力・言葉の力」を掛け合わせ、「自分らしい豊かな人生」をサポートするプロフェッショナル。

もしも病気になって長期間働けなくなったら・・

今は、夫婦二人の給料でやりくりをしているけれど、どうなるんだろう・・

そんなことを不安に感じること、ありませんか?

家族が病気になると、これまでの日常が一変します。

そのうえ、お金面での不安まで・・

いざという時に困らないためにも、どんな制度や保障があるのか、自分達の生活にどのくらいのお金が必要なのか、知っておくことが大切です。

長年、企業内の人事担当として、いろいろなご相談を受けていましたが、その時になって初めて制度や保障について聞いて来られる方がほとんどでした。

必要な人に、その人が必要とする「より豊かな生活のヒント」をできるだけ早く届けたい。

そんな思いで、現在はキャリア設計デザイナーとして独立開業。

トリプル資格(社会保険労務士、キャリアコンサルタント、FP最高位資格CFP)を活用して、その人にあったベストな人生設計をサポートしています。

今回は、病気になって働けなった時の会社の制度(休職制度・介護休業制度)、健康保険(高額療養費、傷病手当金)、厚生年金(障害年金)について、お伝えしていきますね。

入院した場合、どのくらいお金が必要なの?

生命保険に関する全国実態調査

病気で入院した際にかかる費用は、人それぞれ違います。

でも、平均的にどのくらいかかるものなのか、気になりませんか?

そんな時に参考となる資料として、「生命保険に関する全国実態調査」があります。

世帯主が2~3カ月入院した場合

  • 必要と考える資金額平均 月額25.7万円

(差額ベッド料、交通費等、健康保 険診療の範囲外の費用に対して必要と考える資金額)

入院した場合の必要資金額の分布をみると、「20~25万円未満」が22.1%で最も多く、「10~15万円未満」20.9%、「30万円以上」 の割合は29.6%となっています。

キャッシュフロー表で確認

経済的備えは大丈夫?

生命保険に関する全国実態調査では、経済的備えに関する安心感・不安感についても調査されています。

世帯主に万一のことがあった場合の現在の経済的備えについて

  • 『不安』(「少し不安である」 と「非常に不安である」の合計) 65.8%
  • 『安心』(「大丈夫」と「たぶん大丈夫」 の合計)       30.1%

調査結果では、不安と答えた人が、安心と答えた人を大きく上回っています。

起きるかどうかわからないことに対しての備えは、後へ後へなってしまいがちですよね。

家族が病気になると、これからどうなるのか、大丈夫かなという不安や心配が色々頭をかすめます。

その上お金の心配まであると、心に余裕がなくなってしまうかもしれません。

少しでも不安要素を減らしておくことが大切です。

キャッシュフロー表作成のメリット

お金に関する漠然とした不安を和らげる一つのツールとして、「キャッシュフロー表」があります。

キャッシュフロー表は、今後の収入と支出・貯蓄残高等、お金の流れを「見える化」していくことができます。

仮の金額でシミュレーションすることもできます。

収入欄を、給料が支給されなくなった場合の社会保障の金額で作成してみることで、どのくらいのお金を準備しておくと、自分たちの「不安」が和らぐのか、事前に計画を立てることができます。

社会保障だけでは足りない場合、保険会社の商品(所得補償保険・就業不能保険等)で備えることもできます。

キャッシュフロー表を作成することで、加入が必要なのかの判断や、必要以上の保障に加入してしまうことを防ぐ効果もあります。

会社の制度を確認しよう

病気で働けなくなったら、会社を辞めないといけないのかも・・と思うと不安ですよね。

そんな時に確認したい制度が「休職制度」です。

休職制度があれば、一定期間従業員の身分が保障されるので、安心して治療に専念できます。

休職の制度はある?

休職制度がない場合もある

休職制度は、法律上、会社が「必ず定めないといけないもの」ではありません。

ですから、もしからしたら休職制度自体がないかもしれません。

休職制度があるかないかで、働く場が保障されるどうかも変わってきますので、大変!

休職制度がある場合は、「就業規則」に記載されていますので、確認してみましょう。

いつまで休めるの?

休職期間についても、それぞれの会社で自由に決めることができます。

勤続年数に応じて「休職期間」を定めている場合もあります。

この場合、勤続年数が長くなるにつれて休職期間も長くなることが通常です。

就業規則に記載されている上限までであれば、主治医の診断書等で必要とされた期間を休職期間とすることができます。

休職が終わったらどうなるの?

では、会社で定めた休職期間を過ぎてもまだ働けない!という場合はどうなるのでしょうか?

業務上生じた病気でない場合、「休職期間満了をもって退職とする」と定めている会社も多くあります。

こちらも就業規則の「休職」項目について確認してみましょう。

お給料はいつまで支給される?

業務外の病気で休職する場合、会社には、お給料を支払う義務はありません。

でも、会社によっては、お給料を一定期間保障してくれる、福利厚生が手厚い会社もあります。

会社がどのような取決めをしているのか、確認しておきましょう。

どんな保障があるの?

①健康保険 高額療養費制度

②健康保険 傷病手当金

③厚生年金 障害年金

高額療養費制度

健康保険には、家計の負担が重くならないようにしてくれる、「高額療養費制度」があります。

病院等の窓口での月単位の支払いが上限額より多かった場合、超えた額が支給されるありがたい制度です。

医療費の上限額は、年齢や所得によって変わります。

ここからは、70歳未満の場合の上限額をみてみましょう。

70歳未満の場合

1ヵ月の上限額

  • 標準報酬月額83万円以上   252,600円+(医療費-842,000)×1%
  • 標準報酬月額53万~79万円  167,400円+(医療費-558,000)×1%
  • 標準報酬月額28万~50万円  80,100円+(医療費-267,000)×1%
  • 標準報酬月額26万円以下   57,600円
  • 住民税非課税者        35,400円

※標準報酬月額とは、お給料から引かれている健康保険の保険料のランクです。

通常、4月~6月のお給料の平均で標準報酬月額が決まり、毎年見直されます。

健康保険組組合に加入している場合、組合独自の「付加給付」として、この額よりも低い上限額を設定しているところもあります。

配偶者の加入している健康保険が分からない場合、健康保険証で確認してみてくださいね。

対象にならない費用もある

かかった費用の全てが高額療養費の対象になるわけではありません。

対象外

  • 入院中の食事代
  • 患者の希望によってサービスを受ける「差額ベッド代」
  • 先進医療費(健康保険の対象となっていない治療法・手術法) 等

これらの費用は、自己負担となります。

入院が長くなった場合

療費に上限額があっても、何か月も続くと家計への負担がどんどん重くのしかかってきます。

そんな時には上限額がさらに低くなりますので、安心してください。

要件

過去12か月以内の期間に3回以上、上限額を超えた場合

上限額

4回目からは下記上限額

  • 標準報酬月額83万円以上       140,100円
  • 標準報酬月額53万~79万円       93,000円
  • 標準報酬月額28万~50万円      44,400円
  • 標準報酬月額26万円以下     44,400円
  • 住民税非課税者          24,600円

限度額適用認定証

高額療養費を受けるためには申請が必要です。

支給されるまで、受診月から少なくとも3ヶ月程度かかります。

後から帰ってくるとわかっていても、配偶者のお給料が支給されなくなった家計にとっては、負担が大きいですよね。

そんなときに安心な「限度額適用認定証」があります。

この認定証を病院の窓口に出すことで、窓口での支払いが、自己負担限度額までとなります。

高額な医療費がかかることが分かっている場合には、まず「限度額適用認定証」を取得しましょう。

限度額認定証には有効期限があります。原則、発行してから1年間です。

傷病手当金

病気で働けなくなってお給料が支給されなくなると、全く収入がなくなるのでしょうか?

そんな時には、健康保険から「傷病手当金」が支給されます。

どんな人が対象になるの?

傷病手当金は、以下の条件をすべて満たすときに支給されます。

※健康保険に加入している人のみ対象です。(扶養に入っている人は対象ではありません。)

要件

  • 業務外の病気やケガのための休業であること
  • 療養のために仕事に就くことができないこと

働くことができないかどうかの判断は、医師の意見及び業務内容やその他の諸条件が考慮されます。

  • 4日以上仕事を休んでいること

連続して3日間休んだ後の4日目から支給がスタートします。

  • 給与の支払いがないこと

給与が一部だけ支給されている場合は、傷病手当金から給与支給分が減額されます。

どのくらいの期間支給されるの?

傷病手当金は、支給開始から1年6ヵ月の間の休業が対象です。

実際に傷病手当金を受給した期間ではありません。

例えば、休職した後、一旦仕事に戻ってまた休み始めた、ということもあるかもしれません。

そんな場合でも、最初の受給開始日から1年6ヵ月後に受給期間が満了します。

傷病手当金は、退職した後も、次の2点を満たしている場合は支給されます。

退職後の支給要件

  • 退職日までに継続して1年以上の被保険者期間があること。
  • 資格喪失時に傷病手当金を受けているか、または受ける条件を満たしていること。

※退職日に出勤した場合は、上記の条件をクリアできませんので、注意が必要です。

いくら支給されるの?

支給額休業開始前のお給料の約3分の2が傷病手当金として支給されます。

具体的な計算方法は下記のとおりです。

1日当たりの金額=【支給開始日の以前12ヵ月間の各標準報酬月額を平均した額】÷30日×(2/3)

障害年金

申請すれば支給されるものではない

障害年金は、法律で定められた「障害の状態」として認められた場合のみ支給されます。

申請すれば、必ず支給されるというものではありません。

例えば障害者手帳2級の人が、障害年金2級に該当する、というわけではありません。

えっ?と思いませんか?

様々な年金のご相談の中で、わかりにくいなあと感じるのは、障害年金です。

自分達では、難しいかも・・と思った場合は。私のように「社会保険労務士」が専門家としてサポートさせていただいていますので、ご相談くださいね。

障害年金3つのハードル

障害年金を申請するためには、下記の3つのハードルがあります。

①初診日

初診日
 

  • 申請をしようとする病気に関して、「初めて病院に行って診察を受けた日」

初診日は医師の証明が必要です。

障害年金では、この初診日の考え方が独特です。

例えば、うつ病等の場合、最初は「お腹が痛い」等身体に症状が現れることがあります。

この時に内科で診察を受けていたら、障害年金でいう初診日は、この内科にかかった日です。

②保険料納付要件

保険料について、決められた期間納めていることが必要です。

※厚生年金加入期間は、「未納」ということはないと思いますので、こちらは、「国民年金」の期間がある方のみ目を通してくださいね。

一月でも足りない場合、障害年金の申請はできません。

年金のご相談の中で、1ヶ月だけ足りなくてどうしよう・・という人もいらっしゃいました。

保険料納付要件は、①で説明した初診日より前の実績で判定されます。

いざ申請の段階で、納めていなかった保険料を納めても、そちらはカウントされません。

保険料納付要件

  • 初診日のある月の前々月までの1年間に保険料の未納がないこと

又は、

  • 公的年金の加入期間の2/3以上で保険料を納付または免除されていること

初診日に65歳を超えている場合は、②のみで判定します

③障害の状態

障害年金を受けられるかどうかは、障害認定日に一定以上の障害状態にあるかどうかで判断されます。

障害の状態については、医師の診断書が必要です。

この診断書が認定を得るための重要な書類となります。

障害認定日
  • 初診日から1年6か月が経過した日

又は

  • 1年6か月が経過する前に症状が固定し、それ以上治療の効果が期待できない状態となった日

具体的な障害の状態については、日本年金機構のHPを参照してください。

障害認定日より後に、傷病悪化により障害等級に該当する場合にも障害年金の申請が可能です。

いくら支給されるの?

障害年金は、初診日に加入していた制度が国民年金か厚生年金かによって、支給される年金が変わります。

初診日に厚生年金に加入していた場合は、障害厚生年金と障害基礎年金が支給されます。

障害厚生年金(2019年度)
  • 1級:報酬比例の年金額※×1.25+配偶者加給年金(22万4500円)
  • 2級:報酬比例の年金額※+配偶者加給年金(22万4500円)
  • 3級:報酬比例の年金額※(最低保障額:最低保障額 585,100円)
  • 障害手当金 報酬比例の年金額×2年分 (最低保障額 1,170,200円)

生計を維持されている65歳未満の配偶者がいる場合に加給年金が加算されます。

障害基礎年金(2019年度)
  • 1級:780,100円×1.25=975,125円(+子供がある場合は更に加算額)
  • 2級:780,100円(+子供がある場合は更に加算額)

傷病手当金を受け取っていたら?

傷病手当金と障害年金の両方を受け取れるわけではありません。

傷病手当金を受給している人が、同じ病気で、障害厚生年金または障害手当金を受け取れるようになったときは、傷病手当金の支給額が調整されます。

もし介護が必要になったら?

もし、介護が必要な状態であれば、会社を休まないといけなくなるかもしれません。

大切な家族のために、介護をしたい。

でも、そもそも会社を休めるのか?辞めないといけなくなるのでは・・

どんな制度や保障がるのか、こちらも気になりますよね。

介護休業制度

配偶者の介護が必要になった場合、働く人の雇用を守る制度として、介護休業制度があります。

こちらは育児・介護休業法という法律で定められた制度ですので、会社に相談してみましょう。

要介護状態とは
  • 負傷、疾病又は身体上若しくは精神上の障害により、2週間以上の期間にわたり常時介護を必要とする状態

介護休業は、配偶者以外にも父母、子、配偶者の父母、祖父母、兄弟姉妹及び孫を介護する場合にも対象となります。

期間は、対象家族1人につき、通算93日です。

介護休業給付金

介護休業期間中は給料を支給しない、と定めている会社も多いのではないでしょうか。

夫婦どちらとも収入が無くなってしまうと思うと不安が増しますよね。

そんな時の保障として、雇用保険の介護休業給付金があります。

受給要件
  • 護休業を開始した日前2年間に被保険者期間が12か月以上あること
給付額
  • 休業開始時賃金日額×支給日数×67%

93日を限度に3回までに限り支給されます。

まとめ

今回は、家族が働けなくなった時の制度や保障について書かせていただきました。

様々な制度を知ることで、より健全な家計運営を実践していくことができます。

よく分からない、という時には、FPが中立的な立場で、より豊かな生活をサポートさせていただいていますので、ご相談ください。

長文をお読みいただきありがとうございました。

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キャリア設計デザイナー(国家資格キャリアコンサルタント、社会保険労務士、CFP)。 信用金庫の人事を18年間担当後独立開業。トリプル資格を活かし、「くらしにまつわる各種制度・ファイナンスの知識」と「質問の力・言葉の力」を掛け合わせ、「自分らしい豊かな人生」をサポートするプロフェッショナル。










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