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【2019年改正相続対策】親が元気なうちに準備しておくべき3つのポイント

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キャリア設計デザイナー(国家資格キャリアコンサルタント、社会保険労務士、CFP)。 信用金庫の人事を18年間担当後独立開業。トリプル資格を活かし、「くらしにまつわる各種制度・ファイナンスの知識」と「質問の力・言葉の力」を掛け合わせ、「自分らしい豊かな人生」をサポートするプロフェッショナル。

「相続」という言葉を聞いて、どんな言葉が浮かびますか?

2019年には相続改正もありました。

「何だか難しそう」とか、「気にはなるけどまだまだ先の話だし」という理由で、ご家族と話し合うことを先延ばしにしていませんか?

相続は、いつ起きるか分かりません。ある日突然かもしれません。

いざというときに困らないためにも、「相続について知る」こと、「早めに準備をする」ことが大切です。

早めに準備するためのポイントは、「現状把握」「争族対策」「節税対策」です。

今回は、CFPとして家計相談員をさせていただいている中で、相談者の方の関心が高い「相続」について@キャリア設計デザイナー森脇昌子が解説していきます。

この機会に、相続について考えてみましょう。

親が元気なうちに準備が必要な理由

親が元気なうちに準備が必要な理由は、「多種多様な手続き」「争族になる可能性」「親が認知超になる可能性」などがあります。

親の相続が発生したら、何をするの?

相続開始後は、さまざまな手続きが必要になります。

相続は、自宅や預貯金などのプラスの財産と借金などのマイナスの財産、全て対象になります。

もしかしたら、親に借金がたくさんあって、プラスの財産よりマイナスの財産が多い場合もあるかもしれません。

相続した結果、借金を背負って自分の生活も大変になってしまった・・となると困りますよね。

そんな場合は、どうしたらいいのでしょうか?

相続の種類

相続は、単純承認、限定承認、相続放棄の3種類の方法があります

単純承認

単純承認の場合は、亡くなった人の財産のすべてを無条件で相続します。

相続人が一人なら財産名義の書き換えをしますし、相続人が複数いれば遺産分割を行います。

限定承認

限定承認の場合は、親の財産を受け継ぐ範囲内でのみ、マイナスの財産も引き継ぎます。

例えば、親が亡くなった時、1,000万円の預金と、1,300万円の借金があった場合、1,000万円までしか借金返済の義務を負いません。

死亡後(相続があったことを知ってから)3ヶ月以内に、裁判所に申し出て、認めてもらう必要があります。

【注意点】

  • 相続人が何人もいる場合、自分一人だけ「限定承認」を選ぶことはできません。

裁判所への申出は、相続人全員(相続を放棄した人を除く)でする必要がありますので、相続人同士での話し合いも必要になります。

  • 限定承認は、財産や借金の調査などのためにかなりの時間と手間がかかります。
相続放棄

相続を放棄することもできます。

相続放棄をすると、プラスの財産もマイナスの財産もすべて相続することはありません。

相続を放棄したい場合にも、死亡後(相続があったことを知ってから)3ヶ月以内に、裁判所に申し出て、認めてもらう必要があります。

相続放棄は、自分一人でも申出ができます。

相続発生後の流れは?

相続開始後の大まかなスケジュールは下記のとおりです。

  • 死亡届提出(7日以内)
  • 死後の整理(お葬式・お墓・仏壇等の手配)
  • 届出関係(戸籍抹消・社会保険の手続き・金融機関への連絡・生命保険請求等)
  • 遺言書の有無の確認
  • 亡くなった親の資産・負債の把握
  • 相続人の確認(戸籍謄本取り寄せ)
  • 限定承認、相続放棄の場合は裁判所へ申請(3ヵ月以内)
  • 亡くなった親の所得税準確定申告 (4ヵ月以内)
  • 相続財産の整理・確定(財産目録の作成)
  • 遺産分割協議書の作成 相続する人全員の実印と印鑑証明が必要
  • 遺産の名義書換手続き
  • 相続税の申告と納付(10ヵ月以内)

どうでしょうか?これ以外にも、親が亡くなった時に使っていた自動車や携帯電話など多種多様な手続きが必要になります。

親が亡くなった後、気持ちが沈んでいる場合でも、期日は待ってくれません

事前にどんなことが必要なのか、早めに知っておくということも大切です。

親の相続が争族になる可能性

自分の家族に限って大丈夫、と思いたいですが、「争族」の数は増加しているようです。

争族はどのくらい発生しているの?

遺産分割事件(家事調停・審判)の新受件数

  • 平成29年 16,016件(調停と審判の合計)

最高裁判所「司法統計年報(家事事件編)」(平成29年度)

昭和30年の、2661件から件数は約6倍に増加しています。

この数字を見て、自分の親にはそんなに遺産がないから大丈夫、と思った人はいませんか?

遺産分割のトラブルを遺産総額別に見ると、

遺産分割事件のうち認容・調停成立件数(遺産の価額別)

総数 7,520件

【内訳】

  • 遺産 1,000万円以下 32.1%、
  • 遺産 5,000万円以下 43.4%
  • 遺産 1億円以下     11.9%

最高裁判所「司法統計年報(家事事件編)」(平成29年度)

この数字から、遺産分割のトラブルは、5,000万円以下の場合が7割超となっていて、遺産の金額にかかわらず「争族」が発生していることが分かります。

争族はどんな時に発生するの?

争族が起きる原因として「相続人の問題」「分け方の問題」「遺言の問題」などがあります。

相続人の問題
  • 再婚の場合、親の戸籍を見て、他に子供がいることが初めて分かることも・・
  • 相続人同士の仲が悪く、疎遠になっている。 等
分け方の問題
  • 不動産があるが、現金が少ない。
  • 亡くなる前に、ある特定の相続人だけに財産を贈与をしていた。
  • ある特定の相続人だけが、親の介護等をしていた。 等
遺言の問題
  • 遺言がないため、親の意思が分からない。
  • 遺言で、ある特定の相続人だけに多額の遺産が渡るようになっている。 等

いかがでしょうか?「争族」になりそうな原因に思い当たることはありませんか?

新たな紛争の種に?相続法改正

また、高齢化の進展など社会環境の変化に対応するため、相続法が約40年ぶりに大きな見直しが行わました。

もしかしたら、新たな紛争の種になるかもしれません。

2019年7月1日から施行される規定の一部を紹介します。

凍結預貯金の払い戻し

預貯金について、各相続人は、他の相続人の同意を得ることなく、次の計算式の金額まで払い戻せることになりました。

  • 払戻可能額=相続開始時預貯金残高×3分の1×払戻しを行う相続人の法定相続分

※払戻可能額は口座ごとに計算

※一つの金融機関について150万円を上限。

この改正により亡くなった親の預貯金を、葬式費用や遺産分割前の相続人の生活費に充てやすくなります。

一方、他の相続人の同意を得ることなく払い戻しが可能なため、「争族」となる可能性も0ではありません。

持ち戻し免除の推定規定

婚姻期間20年以上の夫婦が、配偶者に居住用の建物又は敷地を遺贈又は贈与(死因贈与を含む)したときは、遺産分割の対象から外されるようになりました。

  • 例:父親が亡くなる前に母親(配偶者)に自宅を贈与していた場合

【改正後】:その自宅は、遺産分割の対象から外され、母親は、結果的により多くの相続財産を得て、生活を安定させることができるようになります。

一見「争族」がなくなるようにも見えますが、父親が再婚し後妻と子供達の関係が上手くいっていない場合等、子供の遺留分を侵害する新たな紛争の種になる場合もあるかもしれません。

相続人以外の貢献を考慮

改正後は、相続人以外の人(6親等内の血族、配偶者、3親等内の姻族のみ)にも特別寄与分を請求できるようになります。

  • 例:自分の妻が、親(姑)の介護や看病をしていた場合

【改正後】:妻が無償で親(姑)に対する療養看護等により財産の維持または増加について特別の寄与をした場合には、金銭の支払いを請求できる。

改正後は、父親の介護をしていた相続人以外である妻に、公平に財産を渡せるなどのメリットがある一方で、他の相続人の受け取り分が減ってしまうため、相続人同士でトラブルが起きる可能性がでてきます。

親が認知症になった場合

親が認知症になる、とは思いたくはありませんが、なった場合に備えておくことも必要です。

  • 例:母親が認知症で、父親が亡くなってしまった場合、相続はどうなるのでしょうか。

【答】:認知症の母親は、遺産分割協議を行えません。

遺産分割協議を成立させるため、「成年後見制度」があります。

成年後見制度

成年後見制度とは、「精神上の障害により判断能力が不十分であるため、法律行為をするための意思決定が困難な状態にある人」を支援し、その権利を保護するための制度です。

成年後見制度には『法定後見制度』と『任意後見制度』の2種類があります。

法定後見制度

意思能力が不十分な方を保護するために、母親または親族が家庭裁判所に申立を行うことで後見人を選任し、後見人が本人に代わって法律行為を行ったり同意権を与えることで本人を保護する制度です。

任意後見制度

母親に判断能力がある段階で、あらかじめ母親が信用している人と「任意後見契約」を締結して財産管理をお願いしておくものです。

成年後見人は、認知症となった母親の財産を守る立場にありますので、母親が法定相続分以下となってしまうような協議の内容では、立場上応じることはできません。

結局は、自由に遺産分割をできるわけではないのです。

親が元気な内に、遺産をどのように分けるか話し合い、遺したい人に遺せる対策を立て、準備しておきましょう。

準備しておくべき3つのポイント

準備しておくべき3つのポイントは、「現状把握」「争族対策」「節税対策」です。

  1. 現状把握
  2. 争族対策
  3. 節税対策

1)現状把握

プラスの財産とマイナスの財産は?

何を準備したらいいかを把握するためにも、まずは親の財産や借金などが「どこ」に「いくら」あるのか「見える化」しましょう。

どんな財産があるのかを把握しない限り、適切な対策を検討することもできません

  • プラスの財産:土地建物、現金、預貯金、有価証券、不動産や動産、請求権や債権といった権利(借家権、借地権。占有権等)等

また、親が保険料を負担していた生命保険金、死亡退職金なども、「みなし相続財産」として相続財産となります。

  • マイナスの財産:借金や住宅ローンなどの債務、連帯保証債務 等

相続人は誰?

相続人は誰か、ということを把握しておきましょう。

親が再婚で、前の配偶者との間に子どもがいる場合等、自分たち以外に相続人がいるかもしれません。

遺産分割協議をする場合には、相続する人全員の実印と印鑑証明が必要です。

いざ相続が始まった時に、全員が協力をしてくれるでしょうか?

現状を把握するツールエンディングノート

何から始めたら良いかわからないという人には、現状を把握するためのツールとして、エンディングノートをお勧めします。

エンディングノートに法的強制力はありませんが、項目にそって記入することで現状の把握をすることができます。

エンディングノートについては、こちらの記事もご参照ください。

終活っていつ(何歳)から何を始めるの?後悔のない人生を歩む3つの方法

2)争族対策

争続は、誰にでも起こる可能性のある問題です。

特に、相続人同士の関係がうまくいっていない場合や、財産の多くが不動産等である場合には、遺産をどのように分割するのかという点で「争族」につながる可能性が高くなります。

遺産分割対策

不動産が争続になる原因として、下記のことが考えられます。

  • 相続人が複数いる場合、不動産を含めた財産を公平に分配するのが難しい。
  • 複数人で不動産を共有すると、将来売却する時期等の合意が難しい。 等

遺言がない場合、不動産の分け方を話しあい「遺産分割協議書」を作成する必要があります。

親が元気なうちに、不動産の整理(売却・交換・買替え等)をし、スムーズに遺産が分配できるための対策を立てておきましょう。

事前に家族でしっかり話し合おう

相続の話は、なかなか親に話しづらいものだと思います。でも、相続はいつか必ずやってきます。

相続の時に「困った」と慌てないように、親が元気なうちに、財産を誰に渡したいのか、どんな相続対策が必要か、しっかり話し合う場をもちましょう。

話し合うときには、お金の話だけでなく、これまで、どんな風に過ごしてきたのか、今後の希望など、親の「思い」もしっかり聞いてみましょう。

「今」や「今後の暮らし」のことを話し合うことで、相続という言葉の持つ「亡」というネガティブなイメージが、少し和らぐのではないでしょうか。

親には親の人生のストーリーがあります。プラスの財産、マイナスの財産それぞれに、親の思い出が詰まっているかもしれません。

親の思いを形(遺言書)にしておこう

遺言を作成することで、誰に何を遺したいのか、親の思いを形にすることができます。

遺言があれば、その内容が優先され、遺言のとおり相続を行うことができます。

遺産分割協議を行う必要もありません。

遺言書には「自筆証書遺言」「公正証書遺言」「秘密証書遺言」の3種類があります。

方式を守っていれば、どんな内容であってもかまいませんが、争族を防ぐために、次のことに注意して作成しましょう。

  • 財産分割のバランスをとりながら、合理的な配分を意識する。
  • 誰にどの位遺すかという分割割合の決定にあたっては、「遺留分」に十分配慮する。

※遺留分:一定の範囲の法定相続人(兄弟姉妹以外)に認められる、最低限の遺産取得分のことです。

  • 財産の価値や相続人の状況に変化がある場合、遺言書の見直しをする。

3)節税対策

相続が発生した場合、相続財産が一定の金額以下であれば相続税がかからない「非課税枠」があります。

  • 非課税枠(基礎控除額)=3,000万円+ 600万円×法定相続人の数

もし、相続税が発生する場合は、「節税対策」を家族で話し合いましょう。

相続税は原則、相続発生から10ヵ月以内の現金での納付が必要です。

相続税の支払いに慌てないために、納税資金についても事前の準備が必要です。

非課税枠を活用

その他にも非課税枠がありますので、制度を知って上手に活用しましょう。

配偶者の税額軽減
  • 非課税枠:1億6,000万円又は配偶者の法定相続分のどちらか高い金額

例えば、父親が亡くなった場合、母親が受け取る財産は、最低でも1億6千万円まで非課税となります。

この制度を適用するには相続税申告書の提出が必要です。

ただ、多額の財産を相続した母親が死亡した場合の相続税負担が重くなるので、後々まで考えて相続の配分を決めましょう。

生命保険金等
  • 非課税枠=500万円×法定相続人の数

相続人以外の人が取得した死亡保険金には、非課税の適用はありません。

例:親が亡くなった後、受取人が孫(相続人以外)であった場合、非課税枠は受けられない。

死亡保険金は、被保険者、保険料の負担者および保険金受取人が誰にあるかにより、所得税、相続税、贈与税のいずれかの課税対象になります。

早めに契約内容を確認し、控除枠を上手に活用しましょう。

退職手当金等
  • 非課税枠:500万円 × 法定相続人の数

相続人以外の人が取得した死亡保険金には、非課税の適用はありません。

お墓や仏具

生前親が購入した墓地や墓石、仏壇、仏具、神を祭る道具などは相続税の対象となりません。

(骨とう的価値があるなど投資の対象となるものや商品として所有しているものを除く)

墓地や仏壇は比較的高額なので、お墓や仏壇がないという家庭は、生前に準備することを検討しておくといいのではないでしょうか。

財産評価額を下げる方法は?

土地・建物

建物の固定資産税評価額による評価は建築額よりも低いので、建物を建築することで現金預金を持っているよりも評価が下がります

その他にも「土地を貸す」(貸し地)、アパートなど賃貸住宅を建てる(貸家建付地)ことで評価を下げることができます。

小規模宅地の特例の活用

遺産の中に居住用や事業用宅地などがある場合には、その宅地等の評価のうち決められた面積までを80%か50%減額できる特例があります。

また、この特例を適用するには誰が相続したかがポイントになるので、相続する人を決めておきましょう。

生前贈与を活用しよう

相続財産で大きなウエイトを占めるのは現金や預貯金と不動産です。

親が亡くなる前に、贈与することで、非課税枠を活用することができます。

どんな制度があるのか一例をご紹介します。。

贈与税の基礎控除の活用
  • 非課税枠:1年間で1人当たり110万円以下

110万円までであれば、税金もかからず短期間に比較的簡単に親の財産を移転することができます。

ただし、毎年定期的に非課税枠を使い続けると、「定期贈与」という問題が発生し、場合によっては贈与税がかかることもあります。

相続時精算課税制度
  • 非課税枠:2.500万円

60歳以上の父母または祖父母から20歳以上の子・孫へ贈与する場合選択可能。

贈与する人が亡くなった時に、相続財産にこの制度を利用して贈与された財産を合わせた額が相続税の対象となります。

子供や孫に対する住宅資金の援助

一定の要件を満たせば、最高700万円(省エネ住宅の場合は最高1,200万円)までが非課税扱いになります。

消費税等の税率が10%で新築居住用住宅を購入した場合、最高2,500万円(省エネ住宅の場合は最高3,000万円)と非課税枠が広がります。

子どもや孫に対する教育資金の援助

教育資金の一括贈与は1,500万円までが非課税になります。

相続は、法律・税務等幅広い分野での知識が必要となります。また、法改正もありますので、最新の情報を知っておく必要があります。

具体的に、節税対策等を考える際には、「節税のつもりが、結果的に増税になっていた・・」ということにならないように、専門家にご相談してみてくださいね。

まとめ

今回は、「親からの相続」というテーマで、相続の概要について書かせてかせていただきました。

記事を読んで、「対策が必要かも」と感じられた方は、まずはできることから始めてみてくださいね。

親が元気なうちに、親や家族のこれからの「暮らし方」や「生き方」などについて話しあいながら、スムーズで安心な相続設計をしていきましょう。

親が、病気や介護が必要になってからでは、「相続」の話が切り出しにくくなるかもしれません。

この機会に、親がどんな思いで今まで暮らし働いてきたのか、人生の軌跡も聞くことで、自分自身のルーツについても思いをはせてみましょう。

最後までお読みいただきありがとうございました。

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