「空気を読む」って?日本で働く外国人が知っておきたい最低限のわざ!
日本で働いていると、同僚との会話で高い確率で登場するのが「あの人は空気を読めない」ではありませんか?
「空気を読む」わざと仕事の能力は関係ないと思うのに、評価に影響するなんて納得がいかない!
けれど、コミュニケーション能力と言われれば致し方ない・・・。
早く働きぶりを認めてもらうために、日本語はもちろん仕事に必要なスキルも磨かなくてはと精一杯の努力をしている。
そこで、あまり時間は割けないけれど、なにか即効性のある「空気を読む」わざを身につける方法はないでしょうか?
異文化通訳の得意なキャリアコンサルタント、MIYUKIがあなたの悩み解決をお手伝いします。
「空気を読む」の謎
「空気を読む」って一体どういうことなんでしょう?
そもそもいつ頃どういう経緯で生まれた言葉なんでしょう?
定義に経緯?その辺は飛ばして早く「空気を読む」わざの秘訣を知りたい、と思いますよね。
でも、お伝えする秘訣をより深く理解して実践するためのカギになります。
退屈かもしれませんが少しだけお付き合いください。
まず、デジタル大辞泉の定義は次のとおりです。
その場の雰囲気から状況を推察する。特に、その場で自分が何をすべきか、すべきでないかや、相手のして欲しいこと、して欲しくないことを憶測して判断する
出典:”空気(くうき)を読(よ)・む”, デジタル大辞泉, (参照 2020-03-22)
憶測は、「自分で勝手に推測すること。当て推量。」とデジタル大辞泉には書いてあります。つまり、主観的な視点で物事を推し量ることと理解できます。
次に経緯です。
- 「場の空気を読む」という慣用句から派生した
- 2007年のユーキャン新語・流行語大賞の候補としてKY(Kuuki Yomenai)というギャル語がノミネートされた
でも、語源についてはっきりしたことはわかっていません。
そんな謎のわざがビジネススキルの一つとして職場で重視されているなんて、ますます理解できませんよね。
そこで「空気」に絞って調べていくと、山本七平氏が執筆した『「空気」の研究』という本を見つけました。
この本で山本氏は、人は「空気に支配されている」と表現して、その歴史についても触れています。書かれていることをまとめると、次のようになります。
- 日本では徳川時代から明治初期にかけて、「空気」に支配されることを「恥」という考え方もあった。けれども昭和初期には「その場の空気」は人がコントロールできない大きな力を持つと見なされるようになり、その傾向は戦後ますます強まっている
- 「空気」の存在しない国はない。問題はその「空気」の支配を許すか許さないかである
「空気を読む」ことが「恥」だった時代もあったというのは興味深いですね。
また、日本で働く外国人が苦労するのは「空気」の支配を許している日本の文化ということになります。
「空気を読む」の謎が少し解けてきたところで、日本的な「空気を読む」わざの秘訣を探りたいと思います。
辞典の定義「相手のして欲しいこと、して欲しくないことを憶測して判断する」に注目してみましょう。
日本の職場で「空気を読む」わざの秘訣
「空気を読む」の基本は、相手のして欲しいこと、して欲しくないことを憶測して判断すること、でした。でも、日本人ではないのに、仕事上の関係にとどまる日本人の考えていることや感じていることを推測するなんて無理。
それができるならとっくに空気を読めているはず、と思っているあなたに次の3つのポイントをお伝えします。
1 相手とその場面を注意深く観察してみましょう
自分を含めたその場面を、空高く飛ぶ鳥の目で見るイメージ(俯瞰)です。自分の考えや価値観は持ち込まず、ありのままを広い視野で捉えましょう。
2 相手の立場になって考えてみましょう
あなたが相手の立場だったら、どうして欲しいですか?して欲しくないことは何ですか?より具体的な言葉や行動で考えてみましょう。
たとえば、赤ちゃんやペットの動物と接するときのことを考えてみてください。言葉も気持ちも分からないとき、まずは様子をじっと観察して、ミルク?おむつ?かまって欲しいのかな?とあれこれと想像しますよね。それと同じです。
3 相手が望んでいることかどうか確かめてみましょう
自分が推測した相手の気持ちに沿って行動する前に、それが相手の期待することと合っているかどうか聞いてみましょう。
「~でしょうか?」、「~しましょうか?」など声をかけて反応を確かめましょう。
直接確認したら「空気を読む」にはならないでしょう?と思うかもしれませんが、ちょっと考えてみてください。
相手が空気を読んだつもりでしたことが自分の期待したことではなかった時、「空気を読めない」人だと思いませんか?
結局、本当のところはその人に聞いてみないとわからないのです。
相手を尊重して、「私はこう思うけれどそれで良いですか(合ってますか)?」という態度を示せば、「空気を読めない」のではなくて「考え方が違う」のだということになるのです。
「場面を俯瞰する」、「相手の立場で考える」、「確認する」、この3点を心掛けることこそ日本の職場で「空気を読む」わざの秘訣です。
「空気を読む」わざより大事なこと
では、「空気を読む」わざが職場で求められるのはなぜでしょうか?
端的に言えば、サクサク仕事を進めるためです。なのですが・・・一つ私の経験をお話しましょう。
この例で、なぜその人の「空気を読む」わざが通じなかったのでしょうか?もうお分かりですね。
慣れない環境、慣れない相手に自分自身の経験則を当てはめて、ポイント1、2に失敗したと考えられます。これは異なる文化や環境で育った皆さんにも起こる可能性大ですね。そして、そんな時こそ大事なポイント3、「確認する」ができていなかったのです。
「空気を読む」わざより大事なこと、それはコミュニケーションのとれる働きやすい人間関係を作ることです。「空気を読む」には、まず相互理解を深め、信頼関係を築きましょう。
互いに尊重し合える信頼関係があれば、何をしても何を言っても、前向きに受け止めてもらえるものです。反対に、互いに理解が不十分なまま空気を読もうとしても、上手くいかなかったり、人の顔色ばかりを気にして仕事に集中できないということになりかねません。
「空気を読む」という不確実なわざに頼らなくても、しっかり言葉で確認しながら仕事を進めることができれば、気持ちよく、効率よく仕事ができると思いませんか?
まとめ
日本の多くの職場では、空気を読んで互いに気持ちよく仕事をし、生産性を上げることが大事だと考えられています。
これは、山本七平氏によれば、「空気」が職場を支配することを許している日本文化によるもので、日本で働く外国人がうまく対応できなくても無理はありません。
「空気を読めない」と言われないようにするには、「場面を俯瞰する」、「相手の立場で考える」、「確認する」、という3点を心掛けると良いとお話しました。
しかし、それだけでは不十分です。
「空気を読む」わざを身につけるよりも、職場の仲間や顧客との信頼関係を築くことが大事です。
言葉、文化、性別、専門など制約を外して、誠実な態度で相手と向き合うことが信頼関係を築くために役立ちます。
少子高齢化の日本の職場には、日本を愛して働いてくれる仲間が必要です。厚生労働省が発表した2019年10月末時点の「外国人雇用状況」では、外国人労働者数は約166万人。前年比13.6%増、2007年の届出義務化以来過去最高、10年前と比べて約3倍となりました。
また、従業員数30人未満の事業所で働く人が35.4%で、その割合は増えつつあります。
外国人管理職が珍しくない時代もやってくるかもしれません。
そうなれば日本の職場文化も変化して、ひょっとしたら「空気を読む」に代わるわざが必要になる日がやってきます。
そんなときでも、信頼関係を築くことが先決であることを忘れないでくださいね!