外国人が戸惑うフレーズ「検討させてください」の返事の意味は?
客先で提案した案件について、「検討させてください」と言われたことはありませんか?
脈ありだと思っていたら、実は興味がないという意味だったと知ってがっくりしたことはありませんか?
こういう事ってほかにもあるのだろうか、知らないうちに勘違いをしていたら…心配になりますよね。
そんな経験をしたことのある方なら、「検討させてください」以外にも心得ておくべき例があったら知っておきたいと思うでしょう。知らないで時間や労力を割いてしまうと無駄ですし、効率が悪いですからね。
それにしても、何故「それは無理ですね」とはっきり言ってくれないのでしょう?
そんなモヤモヤ感を持って日本で働いている外国人の皆さんに、異文化通訳の得意なキャリアコンサルタントのMIYUKIが、約30年にわたり多国籍のビジネスパーソンと接してきた経験をもとにヒントを提供したいと思います。
「検討させてください」の意味
「検討させてください」を英語にするなら、let us think about it となるわけで、結論を出す前に考えてみてくれるんだと、外国人や日本人でも新入社員はポジティブに解釈してしまうと思います。ところが実際には、そうではないことが多いのです。
では、どういうときに「検討させてください」と言われるのでしょう?
次のような場合が考えられます。
1 私の立場では即断できないので、預かるしかない
結論はどうであれとにかく内部で検討してくれると解釈して良いと思います。
2 もっと良い提案があれば検討する
これはちょっと難しいケースです。It is no worth considering. We want a better proposal.という意味です。すでに取引関係にある場合に多いので、言葉よりも表情や反応を観察して、察するしかありません。
3 NOと言いたくないので、とりあえず検討すると伝える
これは2通り考えられます。
- 内容自体は検討するまでもなくNOだけれど、担当者として関係を壊したくないのでとりあえず受け取る。後日、会社としては受け入れられないなど、自分以外の力が働いたことを理由に断る。
- 政治家やお役人など、耳は傾けるけれど何もしない。
いかがですか、思い当たる経験があるのではないでしょうか?
難しいのは、「検討させてください」=「望みなし」とも限らないというところです。
では、「検討させてください」と言われた時、どのケースに当てはまるのかを判断するにはどうしたらよいのでしょうか? 次の章で考えてみましょう。
「検討させてください」と言われたらどうするか?
言葉通りに解釈して良いのかどうか、まずそれが知りたいですよね。その前に、相手の表情や反応を観察することが前提であることはご理解くださいね。
そのうえで、一番わかりやすいのはケース3の2点目、「耳は傾けるけれど何もしない」という場合だと思います。
相手が政治家やお役人ならば、聞いてもらうことが大事と割り切り、最初から大きな期待をするのは控えましょう。何度も面会して顔を覚えてもらうことの方が大事です。時間をかけて、関係構築を図ることに重点を置きましょう。関心を持ってくれた場合には、後日先方から声がかかるはずです。
それ以外の場合は、ポジティブに解釈してよいのかどうかを見極めるために、次のような内容について質問をしてみるのが有効です。
・「何を」検討してくれるのか
・「誰/どのレベルで」検討されるのか?
・「いつ頃」検討結果を得られそうか?
・「他の提案」も必要かどうか?
質問への回答の様子で、相手のスタンスがよりハッキリすると思います。
ただし、矢継ぎ早に質問するのではなく、一つずつ反応をみながら、どこまで確認したらよいのかを判断しましょう。問い詰めて、関係を壊してしまっては元も子もなくなります。
そして、仮に脈がなさそうだと判断できる状況になっても、時間を割いてくのれたことへの感謝の気持ちはきちんと示しましょう。次の機会へつなげるためにも大事です。
なお、「宿題にさせてください」、「勉強させていただきます」、なども「検討させていただきます」と同じ意味で使われる表現です。覚えておくと良いと思います。
それ以外にも、外国人の皆さんや新入社員の皆さんが戸惑ってしまうケースがあると思いますので、いくつかご紹介したいと思います。
その他の戸惑うケース
質問しているのに回答がない
メールのやり取りの中で、質問しても回答がないことってありませんか?
先方が見落としている場合も確かにありますが、そう思って再度質問しても回答がないこともあると思います。そんな時、どうされていますか?
私は実際に、結構こういうケースを経験しています。最初は先方が見落としているに違いないと思ってもう一度質問してみるのですが、回答がないのです。さらにもう一度質問してみても、他の項目については回答があるのに、その質問はスルーされました。軸がずれたスッキリしない回答をもらったこともあります。さてどうしてでしょうか?
実はとても単純で、その質問には答えたくない、という相手の意思表示なのです。言質を取られたくない(コミットしたくない)場合に、あえて言語化することを避けるのです。そういう職場文化があることを覚えておくと良いと思います。
そういうときには、深追いしないのが一番です。同じ質問を繰り返すのは、2回程度に留めましょう。
そうはいっても、それでは仕事が進まないときもありますよね。そういうときには、自分の良識で進めながら相手に確認するのが良いと思います。良いか悪いかの判断はしてくれるはずです。
言い訳で話を始める
初対面で挨拶するときや会議で意見を求められたとき、「私はまだ配属されて日が浅いので」「私の専門ではないのですが」など、言い訳から話を始めることに疑問を感じたことはありませんか?明らかに経験を積んでいるはずの年長者までそう前置きをするのは珍しくないと思います。
前置きをすると何か良いことがあるのでしょうか?本質的な部分ではないし、むしろ自分の自信なさを示しているようで相手にはマイナスに聞こえてしまうのではないかと思いますよね。
前置きする理由の一つは、日本人の特徴でもあるへりくだり。もう一つは、反論された時の言い訳を予め用意するためです。いずれも積極性を求められる環境に慣れていると違和感を覚えるかもしれませんね。
個人的な例ですが、新入社員のときに出席した会議で、外国人上司からあなたの意見を聞きたいと言われたことがありました。「私はまだ新人ですから、意見を述べる立場にありません」と言うと、「新人だって自分の意見はあるだろう? 私はそれを聞きたいのだ」と強い口調で言われて、カルチャーショックを受けた記憶があります。
また、意見を求められても何も言うことがない場合、日本人なら「特にありません」と言いがちですが、外国人は、何かを発言することが大事だと考え、関連性のないことでも積極的に発言するのではないでしょうか?
したがって、日本人に倣って前置きをする必要はありませんよ。
意味のわからない微笑み
仕事中に日本人が微笑んできて、不思議に思ったことはありませんか?
何か意味があるのでしょうか?
微笑み返してよいのかわからなくて、そのまま無視したことはありませんか?
照れ笑い、困った時にごまかそうとする、距離が離れたところからのご挨拶など、微笑みが言葉に代わるコミュニケーションの手段として用いられることが多いのです。これは、むやみやたらに笑顔を振りまくなんて馬鹿にされるだけ、という欧米の発想と異なる点です。あまり深い意味がないので、微笑みを返しても問題ありません。むしろ、微笑みを返してもらうと安心する日本人も多いと思いますよ。
ただし、これはビジネスと割り切った時の話です。恋愛感情などが重なった場合にはトラブルに発展することもありますから、その点は気を付けてくださいね。
ちょっと休憩。
ひとつ笑い話をご紹介します。
国際会議のワンシーンでのこと。日本人が提案したプロジェクトにメンバーが賛同し、誰が責任者を務めるかという話になったそうです。言い出した日本人に白羽の矢が立ったけれど、やんわり断るつもりで「検討します」と言ったところ、日本を良く知る英国人がすかさず「日本人が’検討する’というのは、引き受けますという意味だ」と通訳したそうです。
この様な切り返し、おしゃれですよね。
まとめ
日本人に「検討します」と言われたら、文字通り前向きに考えてくれると思い込んではいけないというお話をさせていただきました。
それ以外にも、質問への回答がない、言い訳から話が始まる、意味の分からない微笑みなど、外国人の皆さんや新入社員の皆さんが誤解したり戸惑ったりする可能性の高いケースについて、解釈の仕方や対応の仕方のヒントをお伝えしてきました。
仕事をしていると、ほかにも疑問に思うことはたくさんあると思います。何だろう?なぜだろう?そう思ったら、周りの先輩に聞いてみることをおすすめします。
なるほど!という異文化の体験を楽しみながら積み重ねていきましょう。