外国人が日本企業で管理職になる方法は?優位性や注意点は?

日本で働いている外国人の皆さんにとって、職場で認めてもらい、管理的なポジション(決裁権のある役職)に就くことは大きな関心の一つではないでしょうか?
アメリカの心理学者アブラハム・マズローが、「人間は自己実現に向かって絶えず成長する」という理論に基づいて5段階の欲求段階説を唱えたことは有名ですね。
生理的欲求→安全欲求→社会的欲求→承認欲求→自己実現欲求という具合に、人間には一つ欲求が満たされると次の段階の欲求が現れるのです。
企業で働くというのは、社会的欲求(社会に必要とされている、どこかに帰属しているという感覚を持つ)が満たされた段階にあるということです。先ほどの5段階の欲求段階説によると次に現れるのが承認欲求です。
これは、自分の価値を他の人に認めてもらいたい、権限を得たいという願望です。
母国を離れて日本で働く皆さんも、チャンスを捉えて高い評価を得たいと思っているのではないでしょうか?
実際のところ、外国人にとって日本の企業で管理的なポジションを目指しやすい状況なのでしょうか?異文化通訳の得意なキャリアコンサルタント、MIYUKIと一緒に考えてみましょう。
日本の企業における外国人役員の需要
日本の企業で外国人が管理的なポジションを目指そうと思うなら、今、日本の企業の意思決定に外国人がどれくらい関わっているか知りたくありませんか?
企業活動のグローバル化の進展に伴い、ガバナンスに多様な経験や知見を活かす必要性が増してきたといえます。
東京証券取引所が2018年6月に改訂したコーポレートガバナンス・コードでは、取締役会について「ジェンダーや国際性の面を含む多様性」と文言を加え、外国人の起用を国内上場企業に促しました。
また、機関投資家が取締役会活性化のため、多様性を求めたことも外国人役員の増加を後押ししています。
まだまだ日本では外国人役員の比率は低いけれど、人材不足や国境を超えた優秀な人材の確保という課題を抱える日本の企業において、外国人役員のニーズは強く、経営やガバナンスへの貢献が期待されています。
日本の人事評価
管理的なポジションに登用されるには、どういう風にアピールしたらよいのでしょう?人事評価が気になりますね。
日本の人事評価の現状について簡単にさらっておきましょう。
人事評価とは、社員の今の能力と働きぶりを評価して、配置、能力開発、昇進、給与に反映させること
上司が日常の業務遂行を通して部下を評価する人事考課が特に重要で、「能力」、「態度」、「業績」という3つの基準で評価されます。
業績については、目標の達成度(成果/目標)も取り入れられています。
- 仕事の重要性や難しさが評価基準に入っていないのはなぜ?
- 客観性はどうなの?
こんな疑問を感じていませんか?
そう、人事評価というのはわかりにくいものです。人が人を評価するというところにも難しさがあります。
そこで、日本で働くモチベーションアップにつながるように、人事評価と深く関わる組織的特徴を一部ご紹介したいと思います。
長期雇用を前提とし、人の成長やポテンシャルを加味して評価する!
すぐに結果を出せる人もいますが、思うような成果を出せなくても諦めず、時間をかけて着実に成果を上げていく大器晩成型の人もいます。
長く働くことでより的確な評価を得られるところがメリットだと思いませんか?
人にあわせて職務を配分する属人主義!
職務の主要部分については担当が明確に決められていますが、境界部分については状況や人の能力に合わせて柔軟に分担しています。
職務の概念が曖昧ともいえますが、管理的なポジションを狙うなら、少しでも幅広く知見を深め経験を積めたほうが有利だと思いませんか?
ボトムアップ型の意思決定!
現場社員が知識や経験に基づき仕事のやり方の改善を提案できます。
上長は部下の意見や提案を取り入れて最終決定を下します。
上が決めて部下はそれに従うだけのトップダウン型よりもやる気がでませんか?
日本の人事評価制度は半世紀以上にわたり時代と共に試行錯誤を続けています。
少子高齢化による人材不足に加えて、COVID-19が地球規模で働き方に大きな影響を与えている状況もあり、人事評価の見直しは進みつつあります。
人事評価は、働く側にとってモチベーションとなる大事な要素です。
正しく理解して前向きに管理的なポジションを目指しましょう。
日本の企業における外国人人財への期待
人事評価や組織的特徴がわかったところで、期待されている役割について考えてみましょう。
外国人のあなたが期待されている役割って何だと思いますか?
あなたの国の文化の強みを役立てることが期待
職場では、日本語で仕事をすることや日本の仕事の作法を理解することが求められますが、それは日本に染まって欲しいという意味ではありません。
あなたのアイデンティティを失わずに、あなたの知見、あなたの国の文化の強みを役立てることが期待されていると考えてください。
日々の仕事のなかで、疑問に思うことがあってもそのままにしていることはありませんか?
あなたの視点でより効率的な方法があれば提案してみてください。
見解が分かれれば、話しあって新しい方法を編み出すことも有益です。
文書に署名するとき、あなたは何色のペンで署名しますか?
日本の企業では黒が基本といわれていますが、私が務めていた外資系企業では、書類が黒で印字されているので、目立つように青ペンで署名するように言われていました。
署名はその書類と内容に責任を持つことを明確に示すことが目的です。
なるほど、青ペンの方が目立つし、署名する側も責任を感じると思った記憶があります。
アイディアを出しあってみると、ペンの色以外にも工夫の余地があるかもしれませんね。
異なる視点からの問題提起
日本の企業が国籍の異なる仲間に期待していることは、異なる視点からの問題提起です。
共に課題に向き合って、知恵を出しあい最適な方法を選択していくことが大切です。
互いのアイデンティティを尊重しながらコンバージングしていく(それぞれの長所を残して新しい形を作る)環境こそ、多様化の時代に企業が発展していく鍵となるのです。
日本の企業における外国人管理職の可能性
企業にとって必要不可欠な管理職(決裁権を持つ役職という意味でつかいます)に外国人が登用される可能性はどれくらいあるのでしょう?
㈱大和総研の2011-15年を対象とした統計に基づく「ダイバーシティと企業パフォーマンス」によると、外国人の役員や管理職への登用は、低い水準ではあるものの、上昇傾向を示しています。また、管理職に比べると役員、管理職の中では課長よりも部長職への登用が進んでいるという特徴がみられます。
一方、内閣府発行の平成23年年次経済財政報告では、グローバル展開している企業を中心に、将来的な人材不足から中間管理層において外国人ニーズが高いことが示されています。幹部候補として採用を検討している企業もあります。
もちろん、外国人が課長、部長という管理職に就くことについて課題がないわけではありません。
現場決裁を任される管理職は、役員と比べて部下や同僚とより深い関りを持ちますので、コミュニケーションや心理的な面で日本人が外国人管理職に対して抱く不安・抵抗感にじっくり向き合う覚悟も必要になります。
いま、多様な視点が求められている時代
ここで大事なことを思い出してみましょう。
日本の企業に大切な多様な視点を提供できるのは、あなたです。あなたの視点から気づきを得る同僚や部下も多いと思います。それがあなたの強みです。
文化の違いがあるからこそ、相手の話によく耳を傾け、不確かなところは確認しながらコミュニケーションを大切にしていく誠実な姿勢が、管理職として部下と信頼関係を築くうえで有効に働くのです。
企業がグローバル化と多様化を推進するかぎり、外国人として日本の企業で管理職に登用される可能性は高く、その意義は大きく互恵的といえます。
まとめ
日本の企業で管理的なポジションを目指す国籍の異なる皆さんに、日本企業での外国人役員の需要、人事評価、外国人人財への期待、外国人管理職の可能性という4つの側面から、今こそチャンスだとお伝えしてきました。
日本の企業の管理的なポジションは、国籍の異なる皆さんにも開かれています。
むしろ、国境を超えて優秀な人材を確保したい、多様性を図りたいと考えている企業において、皆さんは求められているのです。
誰にでも他人に認められたいという気持ちがあります。D. カーネギーの名著『人を動かす』には、それを裏付けるウィリアム・ジェイムズ、ジグムント・フロイト、ジョン・デューイ3名の名言注)が紹介されています。
もし文化の異なる環境で認められ、人を束ねる立場に登用されれば、大きな喜びが得られるのではないでしょうか。
このブログを通じて、日本の企業で管理的なポジションに就くなどハードルが高いと感じていたあなたのモチベーションを上げることができたら、とても嬉しく思います。
注)
「人間の持つ性情のうちで最も強いものは、他人に認められることを渇望する気持である」
(ウィリアム・ジェイムズ 1842-1910)「人間のあらゆる行動は、二つの動機から発する。すなわち、性の衝動と、偉くなりたいという願望である」
(ジグムント・フロイト 1856-1939)「人間の持つ最も根強い衝動は、‘重要人物’たらんとする欲求だ」
(ジョン・デューイ 1859-1952)