初めての人事異動でも慌てない!引継ぎ&挨拶のマナー
「来月の人事異動で○○支社に行ってもらうことになったから、そのつもりでいるように。」
入社してから数年が経ち、最近ようやく仕事の楽しさが分かってきた矢先に上司から受けた内示…。
漠然と、自分には転勤はまだ先のこと、なんて思っていたあなたにとって、初めての異動はわからないことだらけで不安ですよね。
ここでは初めての転勤に戸惑うあなたへ、“毎日ココロをフルにするお手伝い!”ココロフルプランナーこと現役マナー講師&国家資格キャリアコンサルタント@大川礼子が、人事異動の引継ぎと挨拶のマナーについて、3つのステップでお伝えいたします。
ステップ1:内示を受けたらまずすることは?
突然、上司に呼び出されて異動の内示を受けたあなた。
「え!異動なんて初めてだし、どうしよう…。」
「新しい職場には同期がいるから、どんな雰囲気か聞いてみようかな…」なんて思っていませんか?
でも、ちょっと待ってください!
内示を受けたらまず、「異動の発令日を確認する」「異動が公表されたらすぐ引継ぎが行えるように準備を進める」の2つを行ってくださいね。
発令日と公示日を確認する
異動の内示を受けたら1番に行うことは、発令日と社内での公示日を上司に忘れず確認することです。
初めての人事異動は驚きと不安でいっぱいになり、すぐ誰かに話したくなってしまいますよね。
でも、内示の段階では、厳密な意味で異動が確定したとは言えません。
それに、あなたが異動するということは、他の誰かも異動する可能性があります。
「人員の補充はあるの?後任は?」「〇〇支社からは、誰が異動するんだろう?」
色々な憶測を呼ぶ人事異動の公示日は、全社で統一されていることがほとんどです。
発令前に誰かにあなたがうっかり話してしまうことで、職場全体を混乱させ、落ち着かない雰囲気にしてしまう可能性があるんです。
また、後任者が確定していない状態で社外の人へ話してしまうと、取引先の方へ不安を与えることにつながり、企業間のトラブルにも発展しかねません。
社内外を問わず、口外しないことを徹底してくださいね。
「でも、社外はともかく、グループ内の人だけでも早めに知らせた方が、色々と動きやすいんだけど…」
確かに、新たな業務の振分けなど、自分が転勤することを知った上で行ってもらえると助かることもありますよね。
この場合は、正式な発令前にグループ内だけでも先に公表してほしいという希望を、理由とともに上司に伝えてみてください。
そしてその時に上司が「もう少し待つように。」と言うのであれば、その指示に従いつつ、不明点は直接上司に確認してくださいね。
業務整理と引継ぎ資料の作成
自分が異動する事実を受け止め、何とか周りの人にも言わずに持ちこたえたあなた。
次に行うのは、異動が公表されたらすぐ引継ぎが行えるよう、自分が担当している業務の整理と、引継ぎ資料の作成です。
「既存営業って、業務が細かいんだけど…」
「引継ぎ資料の作り方って、よくわからない…」
初めての異動で、かつ自分の業務が細かいものだと、どうやって引継ぎ資料を作成したらよいかわかりませんよね。
引継ぎ資料の作成に必要なのは、次の情報です。
- 何の業務をしているのか
- 組織目標と担当業務の関連性は?
- 業務の流れはどうなっているか
- 各業務に関連する担当者は誰か
- これまでに培った独自の手法や細かな工夫は?
では、ひとつずつ見ていきましょう。
何の業務をしているのか
これは引継ぎの中でも、後任者が一番知りたいことですよね。
まずは、自分の担当する業務を全て書き出してみましょう。
とは言っても、やみくもに書き出してよいものでもありません。
例えばあなたが既存営業なら、担当している取引先店舗を全部書き出した上で、会社ごと、地域ごと、取扱商品ごとなど、業務に合わせたグループに分けて記載しましょう。
その上で、「すべての取引先に共通する業務」「レギュラー化している個別業務」「単発で対応している個別業務」の3つの視点で業務の洗い出しを行います。
組織全体の目標と担当業務との関連性は?
全ての業務を書き出したら、組織全体の目標と担当業務との関連性を明記しましょう。
例えば既存営業だと、既に納品した製品に問題がないか、自社製品で解決できる新たな課題が先方で発生していないかをヒアリングし、必要に応じて商品の提案を行いますよね。
ただその真の目的は、取引先との信頼関係を構築して長期契約を結んだり、新たな契約件数を獲得したりするなど、目標は数値化して設定されているはずです。
この組織全体の目標や社内での位置づけ、また取引先毎の数値目標があれば、それらもわかるように記しておいてくださいね。
業務の流れはどうなっているか
全体の流れと担当業務の位置づけを作ったら、業務の流れ(フロー)に沿って、やるべきことを記載していきましょう。
「やるべきことって、何をどこまで書けばいいんだろう…」
どこまで細かく書けばよいか、迷いますよね。
そんな時は、「自分の月間/週間スケジュール」を作る気持ちで書いてみてください。
例えば、1ヶ月の中でも取引先によって訪問日がおおよそ決まっていたり、反対に先方で会議が行われる曜日など訪問を避ける日が決まっていたりしますよね。
また、組織内のミーティングや事務処理など、あなた自身が外出せず内勤で終わる曜日などもだいたいは決まっているでしょう。
1年→1ヶ月→1週間→1日と業務を行う流れに沿ってやるべきことを書き残しておくと、引継ぎ漏れも起こりにくくなりますよ。
各業務に関連する担当者を記載する
次に、各業務に関連する担当者と連絡先を記載します。
特に、取引先の中でもキーマンが存在するのであればそれも併せて記載してくださいね。
またこれまでに交換した名刺は、担当者がファイル保管しているのであれば整理を行い、データ管理をしているならファイルの保存先を記しておいてくださいね。
これまでに培った独自の手法や工夫は?
ここまでできたら、引継ぎ資料の完成もあとわずか!
あなたがこれまでに培ってきた独自の手法や工夫があれば、ぜひ記載しておきましょう。
「でも、自分が苦労して築いてきた関係なのに、そのまま後任者に引き継ぎたくないな…」
なんて思っていませんか?
確かに、自分が何度も通って取引先の方と良い関係を築いてきたのに、その苦労を知らない後任者がすんなりと関係を引き継ぐのは悔しい気持ちになりますよね。
ですが、取引先の方は、あなたとの関係が良かったからこそ、後任者のことも信頼しようと思うんですよ。
もし仮に後任者がマニュアル通りの対応しかできず、せっかく良くなった取引先との関係が悪化したら、あなたの信頼までなくなります。
ましてや一番あってはならないのが、異動したあなたのところへ何度も電話が掛かってくること。
そんなことになれば、あなたは自分の新しい仕事どころではなくなりますよね。
そのお客様を大切に思うからこそ、「さすが!〇〇さんは、引継ぎも完璧にしてくれた!」と思ってもらえるように、細かな部分まで書き残しておきましょうね。
ステップ2:発令されたら
いよいよ今日は、社内で発令が公示される日。
多くの会社では、〇月の定期異動は〇日の〇時に公示する、と予めわかっていますから、職場の人達も、朝から何となくそわそわしていますよね。
でも、あなたはここで今一度、気を引き締めなければなりません。
何故なら発令の後、すぐにしなければならないことがあるからです。
社内外の人への挨拶
社内で移動が発令されたら、まず行うことは、社内外の人への挨拶です。
異動が分かった途端に周りの人達から声を掛けられ、あなたもいろいろと話したくなる気持ちはわかりますが、ぐっとこらえて先にやるべきことを済ませておきましょう。
社内の人への挨拶
私が以前在籍した会社では、
- 発令の1ヶ月~2週間前に本人へ内々示
- 事前に決められた発令の約10日前の午後から本人に順番に内示
- 16時頃に社内ネットワークで一斉に発令の公示
というスケジュールで、公示された直後から、異動で転勤する人は次の職場の上司に挨拶の電話を掛け、新職場への挨拶と業務引継のために赴任する日を相談する流れでした。
このようなスケジュールの場合だと、あなたが異動先の上司に連絡するのと入れ違いに、あなたの後任者が挨拶や業務の引継ぎに来る日が決まってしまう場合もあるので、先に上司へ確認をしておいてくださいね。
また業務上のかかわりがある人はもちろん、かかわりはないけど顔見知り、と言う関係の人にも直接・電話・メールのいずれかで挨拶をしておきます。
特に、現在進行形の業務で頻繁にやり取りをしている人へは、早めに挨拶しておくことをお勧めします。
「でも、人数が多すぎて大変…」
確かにやることが多い中で、ひとりひとりへ挨拶するのは大変ですよね。
ですが、異動後にもまた何かの業務でかかわりを持つ機会があった時に、あなたの仕事をスムーズに進めるためにも、以下を参考に必ず挨拶をしておきましょう。
業務上のかかわりがある人:発令後、3日以内を目安に早い段階で個人宛に
業務上のかかわりはない人:顔見知りの人へは異動3日前頃までに(一括でも可)
社外の人への挨拶
社外の人への挨拶は、後任者と同行して挨拶回りをするのが丁寧です。
ですが、遠方であったりスケジュールが合わなかったりするのであれば、メールでの挨拶でもかまいません。
社内メールと違って、社外の人へメールを送る際は「個別に送信する」「敬語の使い方は上級」にというのが鉄則です。
また文章の流れも「異動のお知らせとお礼→新天地での抱負→後任者と連絡先」に加え、「メールでの(あるいは一括での)連絡になって申し訳ない」旨を入れてくださいね。
件名:人事異動に伴うご挨拶
本文:いつもお世話になっております。〇〇支社〇〇部〇〇課 ××でございます。
私事で恐縮ではございますが、〇月〇日付で〇〇支社〇〇店へ異動することとなりました。
この2年半、〇〇様には企業の垣根を超えたご指導を賜り、本当にありがとうございました。
何度となくお話を伺う中で時間管理や仕事への価値観など、多くのことを学ばせていただきましたこと、心から感謝申し上げます。
新天地でも、教えていただいたことを胸に、気持ちを新たに励んでまいります。
なお、〇月〇日より、△△ △△が私の後任として貴社へご訪問させていただきます。
万全に引継ぎいたしますので、私同様に、ご指導ご鞭撻を賜りますようお願い申し上げます。
後任担当者:△△ △△
メール:××××@××××
TEL:〇〇〇〇-〇〇〇〇(内線:〇〇〇〇)
本来であれば直接ご挨拶申し上げるところ、メールでのご挨拶となりますことお許しください。
末筆ながら、〇〇様の今後ますますのご活躍を祈念申し上げます。
〇〇支社〇〇部〇〇課
×× ××
メール:××××@××××
TEL:〇〇〇〇-〇〇〇〇(内線:〇〇〇〇)
前・後任者との引継ぎ
「挨拶も済ませたし、引継ぎ資料も作成したからあとは次の職場に向けて準備しよう!」なんて思っていませんか?
業務の引継ぎを行う時に重要なのは、「異動後に自分から前任者に問合せをしない、自分も後任者からの連絡を受けないで済む状態」にすることです。
もしあなたがお客様の立場だったとして、担当者が変わるごとに質問の回答が違ったり、サービスのレベルが違ったりしたら、満足できませんよね?
また毎回「その件は以前どうだったか、前任者に確認します」なんて言われたら、「もういいよ!」と相手のことを信頼しなくなりませんか?
業務の引継ぎは、内示を受けた段階で作成した引継ぎ資料を基に口頭で行いますが、その時に文面で残せないような細やかな配慮や項目があれば、忘れずに伝えてくださいね。
また資料に記載漏れがあった場合も、必ず口頭で補足しておきましょう。
反対にあなたが新しい職場で前任者からの引継ぎを受ける際には、予め疑問に思うことをまとめておき、説明を受けた後に質問をして、疑問点を解消してくださいね。
ステップ3:着任の前日には
いよいよ明日は着任の日。
新しい職場での仕事は自分にできるのか、新しい職場はどんな雰囲気なんだろうか…。
考えれば考えるほど、緊張でドキドキしますよね。
でもその前に!
もちろん新しい職場でのことも大切ですが、自分が異動する時には「立つ鳥跡を濁さず」を忘れてはいけません。
これまでお世話になった職場を去るにあたって、自分も周りも気持ちよく異動できるよう整えましょう。
デスク周りの整理は完璧に!
「身の回りのものは社内便で全部送ったし、忘れ物はないな…」
入社直後に配属された席に座るのも今日が最後だと思うと、感慨深い気持ちになりますよね。
その気持ちを感謝に変えて、異動前日にはぜひ自分のデスクを綺麗にしてください。
あなたは、他人から借りたものを返す時に、借りた状態やそれ以上に綺麗にして返すと教わりませんでしたか?
会社の備品は、あなたに“貸し与えられた”もの。
次の人が使いやすい状態に整理しておくことは、当然のことなんですよ。
- ペンやホチキスなどの文具類は揃っているか
- 紙で引き継ぐ資料のファイル背表紙は見やすい状態か
- フォルダ内のデータは整理されているか
- 業務に不要なデータが組織内フォルダに残っていないか
- 机の中が整頓されているか
また机の上や引き出し、ロッカーなど、必要に応じて雑巾がけを行うことも忘れないでくださいね。
そして忘れてはならないのが、自分の業務整理にだけ没頭しないこと。
あなたにとっては異動前日でも、周りの人の業務やお客様からの問い合わせが止まっているわけではありません。
デスク周りの整理を行いながらも、電話対応や荷物の受け取りなど、あなたにできる仕事はこれまでと同様に率先して行いましょう。
御礼と挨拶は丁寧に
気が付けば、終業時間まであと少し…。
会社や業種にもよりますが、社内での全組織が一斉に行う定期異動の場合、異動前日の朝礼や終礼で人事異動の対象者が一言ずつ挨拶をすることが一般的です。
全体終礼で挨拶するように言われているあなたにとっては、緊張する時間ですよね。
「一言ずつって言っても、何を言ったらいいんだろう…。」
新卒で配属された時以来の挨拶に、ドキドキしていませんか?
異動の挨拶は、支店や事業所全体でのスピーチや、自分のグループ内のスピーチなど、話す相手との関係性によって変わりますが、共通するのは「感謝と抱負」です。
あなたがこれまでお世話になった感謝を伝え、見送ってくれる人たちへ次の職場でも頑張る気持ちを、簡潔、丁寧に述べてくださいね。
支店や事業所全体でのスピーチ
支店や事業所全体の朝礼や終礼で挨拶する場合は、挨拶の人数に合わせて1~2分程度にとどめておきましょう。
お疲れさまです。〇〇部の××です。
在籍していた2年半の間、お世話になりありがとうございました。
入社直後に配属され、最初は不安でいっぱいでしたが、展示会や業務研究会など部署を越えたご指導をくださったおかげで、皆様から仕事へ対する姿勢など多くを学ばせていただきました。
ここで過ごせた2年半は、私にとってこれから仕事をする上で大きな財産となりましたことを、改めて感謝いたします。
明日からは△△支店/○○グループの一員となります。
皆様にご指導いただいたことを常に忘れず、次の職場でも精一杯取組んでまいります。
本当に、お世話になりありがとうございました。
グループ内でのスピーチ
グループ内での挨拶は、思い出や具体的なエピソードを交えて述べてください。
ただし、こちらでもダラダラと話さず、1分程度で述べてくださいね。
お疲れさまです。終業間際のお忙しいところ、ご挨拶の時間をくださりありがとうございます。
入社してからの2年半、本当にお世話になりありがとうございました。
右も左もわからない私に、皆さんが根気強くご指導くださったこと、心から感謝しています。
特に、初めての社外電話に「もしもし!」と出て落ち込んだ私に、皆さんが口々に自分の失敗談を話して慰めてくださった時は、〇〇支店に配属されて良かったと思いました。
次の職場では皆さんから受けたあたたかさを胸に多くの人との信頼関係を築き、一人前の営業になることで皆様への恩返しができるよう、新天地でも頑張ります。
異動後も、お世話になることがあるかと思いますので、今後ともどうぞよろしくお願いいたします。
そして2年半、本当にありがとうございました。
まとめ
いかがでしたか?
新たな出会いや新しい風に、期待と緊張の気持ちが入り混じる人事異動。
異動する時の引継ぎは時間に追われがちですが、しっかりと引き継ぐことで、周りや取引先へ迷惑を掛けることなく、いずれあなたへの信頼へつながります。
また、新天地での業務に集中して取り組めるというメリットもありますので、最後まで気を抜かずに引継ぎを行い、新たな職場でも頑張ってくださいね。
あなたの人生が、より良い人間関係に基づいて、充実した毎日を過ごせるよう心から願っています。