自己肯定感、自己有用感、自己効力感の違い~壁を壊すために 〜
壁は自分自身だ 岡本太郎
人の心を揺さぶる言葉ですね。この言葉が心に響く人は、壁を感じている人。
「やっぱり、自己効力感が低いんだよな~。」
一歩踏み出す勇気の持てない私に、師事する先生が放った言葉。
へこむ~。頑張ってきたけど、やっぱり自分に自信がなくて、尻込みする時ってありますよね。
壁を感じるのは、自己効力感が低いとき。
では、自己効力感と自己肯定感、自己有用感という言葉は似ていますが、違いを知っていますか?
キャリアコンサルタント@上松笑子と一緒に詳しく見て行きましょう。私がおススメする書籍も紹介します!
最後におまけで私が大好きなバレエ漫画『アラベスク』の主人公ノンナが登場します。
自己肯定感とは
自分の存在(意義・意味)を信じる感情。自分で自分を肯定する感情。「自尊感情」とも言います。
ありのままの自分を認めて、よい自分も悪い自分も全て受け容れ、何事もポジテイブに捉えられる人を「自己肯定感が高い」と言います。
反対語は、自己否定感。
自分嫌いで、自分が認められず、自己否定を繰り返し、ネガテイブな感情に支配されている人を「自己肯定感が低い」「自己否定感が高い」と言います。否定的な感情にとらわれていると、前に進めなくなってしまいます。
自己有用感とは
自分が有用だと思える感情。他者との関係で、自分の存在が誰かの役に立っている、貢献していると認識出来る時に、起きる感情です。
自己肯定感と自己有用感は似ていますが、自己有用感は他者の存在を前提にしている点に違いがあります。
自己有用感とは
- 他者の存在を前提として自分の存在価値を感じること
- 誰かの役に立ちたいという成就感
- 誰かに必要とされているという満足感
自己有用感につながる言葉は、ほめる、励ます、認める。
「ありがとう」「さすが、○○さんね!」「あなたのお陰よ」
自己有用感がもてると、感謝の気持ちがめばえますね。
自己肯定感と自己有用感の4つの組み合わせパターン
では、ある程度「自己肯定感」と「自己有用感」の違いをわかったところで、それぞれの組み合わせを見ていきますね!
自己肯定感【低】- 自己有用感【低】
「自分は、ダメな人間だ。周囲からも期待されていないだろう。このままここにいたら、迷惑をかけてしまう。」
「自己肯定感」が低いため、自らダメと決めつけては、うまくいくわけはありません。
周囲のことまで気にする余裕がなく「自己有用感」が低い状態です。
自己肯定感【低】- 自己有用感【高】
「自分は、大した人間でもないのに、何とかうまくやってこれた。周囲の皆さんのおかげだ。感謝している。」
「自己肯定感」は低いけれど「自己有用感」が高いために感謝の気持ちが芽生えます。
本当は実力があるのに、自分を肯定する感情がなく、偶然に恵まれただけと思っています。
なぜ結果が出ているのかをうまく説明することができません。
自己肯定感【高】- 自己有用感【低】
「自分は、能力は高く成果もあげているのに、周りは認めてくれない。親や学校、会社や周囲の人たち、そもそも世の中が悪いんだ。」
「できない人」の典型例です。
自分のことは棚にあげ、他人の責任にします。
自己肯定感【高】- 自己有用感【高】
「自分が成果を出せたのは周囲のサポートのおかげで、自分も成長できた。だから今度は自分が周囲の力になれると思う。もっと〇〇のために頑張りたい」
自分の実力を肯定しているから、もっと、周囲にも役立てられると信じられます。こうありたい、ですね!
自己効力感とは
自分の能力を信じる感情。(何かをするにあたって)自信がある状態。
自己効力感とは、ある達成をするために必要な 行動方針を計画して,実行する能力について の信念(効力信念:efficacy belief)の強さ であり,社会的認知理論を構成する中心概念 である。自分の行動によって望んだ効果を生み出せると信じない限り, その人が行動する誘因がほとんど存在しない ので,効力信念は,行動の主要な基礎である とされる。
カナダ人心理学者アルバート・バンデューラが提唱
人が何らかの課題に直面した際、こうすればうまくいくはずだという期待(努力が報われるかどうか、結果期待)に対して、自分はそれが実行できるかどうかという期待(やれるかどうか、効力期待)を信じられる感情です。
自己効力感が高いと
「自分は試験に合格することができる」「自分は仕事をやり遂げることができる」「自分は目標を達成させることができる」と考えます。
自己効力感が低いと、「自分は試験に落ちるかも知れない」「自分には出来ないかも知れない」「失敗するかも知れない」と、悲観的になってしまいます。
冒頭の私、相当頑張って自分を変えられたつもりですが、新しいことへのチャレンジには、及び腰になってしまいます。
「自己効力感」が高い人は課題に対する目標を達成する確率は高くなり、「自己効力感」が低い人の目標達成率は低くなります。
自己効力感は、対象 (課題) 毎に、違います。
例えば、勉強は自信がないけれど、サッカーには自信がある、など。
自己肯定感と自己効力感の4つの組み合わせパターン
では、今度は「自己肯定感」と「自己効力感」それぞれの組み合わせを見ていきますね!
自己肯定感【低】- 自己効力感【低】
「自分はたいした人間じゃない。だから自分は受験に向かない、きっと失敗する。」
「自己肯定感」「自己効力感」がともに低ければ、課題はうまくいかないでしょう。
自己肯定感【低】- 自己効力感【高】
「自分はたいした人間じゃない。でも、勉強はできる。受験も何とかなるだろう。」
「自分はたいした人間じゃない。でも、仕事はできる。仕事の成果もあげられるだろう。」
自分は運がいい!自分はツイテイル!
「自己肯定感」は低いのに、「自己効力感」が高い。「自分は能力がないのに、なぜかうまくいく」と考えている人で、意外に学校でトップクラスの成績の人に多い。本当は実力があるのに、自分を認められません。結果は残せるが自己分析能力が低いため、チャンスに気づかず、可能性を狭めてしまいます。自分を認めていないので、後輩や部下の育成も苦手。
自己肯定感【高】- 自己効力感【低】
「自分は能力がある。でも、受験も上手く行かない。何をやってもうまくいかない。」
「自分は能力がある。でも、仕事もうまく行かない。何をやっても上手く行かない。」
不運だ!ツイテイナイ!
「自己肯定感」は低いのに「自己効力感」が高い人は、「自分は運がいい」「ついてる」と捉えるのに、「自己肯定感」は高いのに「自己効力感」が低い人は、「自分は運が悪い」「ついてない」と受け止めています。こういった先入観がある以上、課題に対して、成果を出すことは難しいでしょう。
自己肯定感【高】-自己効力感【高】
「自分は能力がある。だから、受験も上手く行くに違いない。」
「自分は能力がある。だから仕事もうまく行くにちがいない。」
自分の能力を肯定し、課題を達成できるだろう、新しいことをチャレンジしても、自分ならできるに違いない。
ポジティブ思考ですね。なかなかこのように捉えられる方が少ないのが現実です。
自己効力感の高め方
自己効力感を生み出す基礎となるのは、以下であるとされています。
1. 成功体験(最も重要な要因で、自分自身が何かを達成したり、成功したりした経験)
2. モデリング(代理経験、自分以外の他人が何かを達成したり成功したりすることを観察すること)
3. 言語的説得(自分に能力があることを言語的に説明されること、言語的な励まし)
4. 生理的情緒的高揚(酒などの薬物やその他の要因について気分が高揚すること)
5. 想像的体験(自己や他者の成功経験を想像すること)
「自己効力感」を高めるためには、小さな「達成経験」を積んで、自信をつけることが大切です。
その上で「言語的説得」をして本人が理解し納得すれば、定着するのですが、うまく説明できないために、本人の自信に繋がりません。
勿体ないと思います。
勇気づけの言葉
勇気をくじくことば | 勇気づけることば |
勝敗や能力に注目する・あんたは有能だ
・えらい、よくやった |
貢献や協力に注目する
・君のおかげで勝てたよ、ありがとう ・チームメートも喜んでいるよ |
成果を重視する
・いい成績だ ・私は満足だ |
過程を重視する
・勉強した成果が出てよかったね ・長い間よく頑張ってらっしゃると思います |
他者との比較を重視する
・あの人よりもあなたの方が上だ |
他者との比較を重視する
・前よりだいぶうまくなったね |
あなたは・・・を使う
・あなたのやり方はよい |
わたしは・・・を使う
・私は〜と思う |
事実ことば を使う
・あなたは正しい |
意見ことば を使う
・私もそう思います |
賞賛し叱咤激励す
・よく働いてえらいね |
感謝し共感する
・よく働いていますね |
壁を超えるために
今、あなたの目の前には、何かの壁がありますか?
いくつもの成功体験も、失敗体験も、その全てを自分の成長の証としてポジティブに受け容れられるようになった時、壁を作っていたのは自分自身だったことに気づくでしょう。
簡単に、自己肯定感はあがりません。
自己有用感 ⇒ 自己効力感 ⇒ 自己肯定感 の順にあがっていくのが、スムーズと思います。
ロシアに住むバレエが好きな主人公の少女ノンナは、優秀な姉といつも比べられて育ち、すっかり自分に自信を失っていたヘタレな女の子(自己肯定感低い)。彼女には憧れのプリマの存在があり(モデリング)、将来は自分も彼女のようなプリマになりたいという夢がありました(想像的体験)。進級テストに際し、踊れない、失敗してしまう、と踊る前から自分のバレエに自信が持てません(自己効力感低い)。そこへ、すばらしいパートナーが現れて、彼女をスパルタ訓練、新作バレエの主役にも抜擢されて、うれしいけれど自信なく(自己効力感乱高下)、猛練習。チームメートにも認められ(自己有用感)、幾多の壁にぶち当たり乍らも小さな成功を重ね(成功体験)、バレエの才能を開花させます(自己効力感あがる)。最終的には自分自身が成長して壁を乗り越えて、バレエ芸術の高みをつかみ、パートナーの深い愛情に気づいて、幸せをつかむのです(自己肯定感あがる)。
おすすめ書籍
まとめ
かつて私自身も、成功体験をしても、自己肯定感が低い為に、自己理解ができず、なぜ成功できたのかがよくわかりませんでした。
私自身、仕事上で「さすがですね!」「あなたのお陰でプロジェクトがうまく行きました」と仕事仲間に言われて、とても嬉しかったし、それで自己有用感を感じれたことが、私自身が変わるひとつのキッカケになりました。
今回は、自己肯定感、自己有用感、自己効力感の違いを整理してみました。
しかし、人間の感情は一定ではありません。簡単に、後戻りしてしまいます。
後戻りしてもいい・・・そんな自分を認めましょう。
前に進む為に、どんなコトでも良いので、ちいさな成功体験をする為に、一歩を踏み出しましょう。