従業員から妊娠の報告!出産を機に仕事を辞めない会社にするために知っておきたい6つのこと

国家資格キャリアコンサルタント、社会保険労務士の渡邉円です。
女性従業員を雇用する上で、妊娠の報告を受ける場面もあるかと思います。
- 「突然の報告で、どういった対応をしていいのか分からない」
- 「育児休業って聞いたことあるけど、詳しい内容を知らない」
- 「優秀な人材だし辞めて欲しくないけど、何と言っていいのか分からない」
というような事はないでしょうか。
どの業界も人材不足の世の中。すぐに代わりの人が見つかるかも分からない・・・。代わりの人が見つかっても、育てるのは大変。まして優秀な人材は辞めて欲しくないですよね。
そんな経営者の皆様のために、出産を機に従業員が仕事を辞めない会社にするために知っておきたい6つの事をご紹介いたします。
妊娠、産休、育休について女性が抱く不安
働いている女性にとって妊娠が分かった時、これから訪れる赤ちゃんとの生活に期待を抱く反面、不安な気持ちを抱え思い悩んでしまう事ってすごくあります。
「会社に産休・育休を取得したいって言いにくいな」
「産休入るまでに体調を崩してしまったら、周りの人に迷惑掛けてしまいそう」
「出産後、復帰することが出来るかな」 などなど。
私自身も1人目の妊娠を機に会社を辞めてしまった過去があります。
当時は産休や育休を取得する人が身近にいなかったこともあり「産休・育休を取るなんて会社に申し訳ない」という気持ちしかなく、退職の道を選びました。
すごくいい職場だったし、続けたい気持ちもあったのですが。
もしそんな時に、上司から理解のある言葉や、気持ちに寄り添ってもらえていたら続けていたかも・・・?
従業員から妊娠の報告!今後について話し合うために
人材不足の現状:有効求人倍率で人手不足・人余り度を見る
「有効求人倍率=有効求人数÷有効求職者数」で算出
求人数と求職者数が同じなら「1倍」です。
求人数が求職数より多い時は、企業が人手の確保に困っている状況(人手不足)で「1倍」より大きくなります。
求職数が求人数より多い時は、容易に人集めがしやすい状況(人余り)で「1倍」より小さくなります。
では、現在はどのような状態でしょうか。
厚生労働省のHPには、公共職業安定所(ハローワーク)における求人、求職、就職の状況をとりまとめ、求人倍率などの指標を作成し、一般職業紹介状況として毎月公表しています。
最新の平成31年2月の有効求人倍率は、1.63倍です。
都道府県別の有効求人倍率(季節調整値)をみると、就業地別では、最高は福井県の2.33倍、最低は北海道の1.26倍、受理地別では、最高は福井県の2.18倍、最低は神奈川県の1.19倍です。
どの地域も1倍を下回るところはなく、人手の確保に困っている状況が続いているのが分かります。
産休・育児休業について
産前休業と産後休業のこと
産前休業は、出産予定日の6週間前(双子以上の 場合は14週間前)から、請求すれば取得できます。
出産日は産前休業に含みます。
産後休業は、出産の翌日から8週間は、就業できません。
ただし、産後6週間を過ぎた後、本人が請求し、医師が認めた場合は就業できます。
産前産後休業は、労働基準法第65条に定められており、すべての労働者に認められています。
たとえ会社の就労規則に記載されていなくても取ることができる休業です。
産休を取る事や産休中の解雇も法律で禁止されていますので、注意が必要です。
育児介護休業法によって定められた休業制度のこと
1歳に満たない子どもを養育するママやパパは、会社に申し出ることにより、子どもが1歳になるまでの間で希望する期間、育児のために休業できます。
育児休業を取得できる方の範囲
産前産後休業とは違い、育児休業はすべての労働者が対象ではありません。
日々雇用される方は育児休業を取得できませんし、期間の定めのある方(有期契約労働者)は細かい要件がありますので、該当しているか確認してくださいね。
期間の定めのある労働契約で働く方(有期契約労働者)の要件
申出時点において、以下の要件を満たすことが必要です。
- 同一の事業主に引き続き1年以上雇用されている
- 子どもの1歳の誕生日以降も引き続き雇用されることが見込まれる
- 子どもの2歳の誕生日の前々日までに、労働契約の期間が満了しており、かつ、契約が更新されないことが明らかでない
上記に該当していても、対象外とする労使協定があり、次の要件に該当する場合は、育児休業を取得できません。
- 雇用された期間が1年未満
- 1年以内に雇用関係が終了する
- 週の所定労働日数が2日以下
出産を機に仕事を辞めない会社にするために知っておきたい6つのこと
【会社にとってのメリット①】健康保険・厚生年金保険の保険料免除
産休・育休中に健康保険・厚生年金保険の保険料が免除になるってお得ですよね。
免除される期間と手続き方法についてご説明します。
保険料の徴収が免除される期間
- 産前産後休業期間(産前42日(多胎妊娠の場合は98日)、産後56日のうち、妊娠または出産を理由として労務に従事しなかった期間)のうち、産前産後休業開始月から終了予定日の翌日の月の前月(産前産後休業終了日が月の末日の場合は産前産後休業終了月)まで
- 育児・介護休業法による満3歳未満の子を養育するための育児休業等(育児休業及び育児休業に準じる休業)期間のうち、育児休業等開始月から終了予定日の翌日の月の前月(育児休業終了日が月の末日の場合は育児休業終了月)まで
事業主の申出により、被保険者分及び事業主分とも免除されます。
ただし、産前産後休業や育児休業を取得したからといって自動的に保険料が免除されるわけではありません。
会社が保険料免除を受けるための届出をしなければなりませんので、忘れないようご注意くださいね。
手続き方法
- 産前産後休業期間中
被保険者から産前産後休業取得の申出があった場合、事業主が「産前産後休業取得者申出書」を日本年金機構へ提出します。
この申出は、産前産後休業をしている間に必ず行ってくださいね。
- 育児休業期間中
被保険者から育児休業等取得の申出があった場合、事業主が「育児休業等取得者申出書」を日本年金機構へ提出します。
育児休業は、法律で定められているのは、原則子供が1歳に達するまでです。
ただし、保育園などに入れないときは1歳6か月まで、1歳6か月でも入れないときは2歳まで延長ができます。
この申出は、被保険者が育児休業等を取得する度に、事業主が手続する必要があると決まっていますので、延長をしたらそれぞれで届出を行わないと保険料免除は受けられませんので注意してくださいね。
【会社にとってのメリット②】助成金の活用
育児休業を促進する企業に対する助成金は、数多く用意されています。
うまく活用したいところですね。
2019年4月現在における育児休業に関連する助成金について、厚生労働省で管轄するものをご紹介します。
両立支援等助成金(育児休業等支援コース)
- 育児休業取得時、職場復帰時
個々の労働者に応じた育休復帰支援プランに基づき、育児休業の取得と職場復帰を進めた事業主に対して支給されるものです。
受給額は、育児休業取得時:28.5万円/職場復帰時:28.5万円
1事業主当たり、有期契約労働者1人、雇用期間の定めのない労働者1人の計2名までが対象です。
- 代替要員確保時
育児休業取得者の代替要員を新たな雇い入れや派遣受け入れ等により確保し、雇用する労働者に3か月以上の育児休業を取得させ、かつ、原職等に復帰させた場合に支給されるものです。
受給額は、対象育児休業取得者1人当たり47.5万円
4月1日から翌年の3月31日までにおいて、1事業主当たり延べ10人までが対象です。
助成金申請って難しいのでは?と思われるかもしれません。
厚生労働省管轄の助成金は、都道府県労働局雇用環境・均等部(室)が受付窓口です。直接出向いて相談するとすごく親切に教えてくれます。また、電話での問い合わせでも、意外と親切には教えてくれますが、直接行かれるのがオススメです。
また、顧問契約している社労士事務所があれば、相談してみてくださいね。
その他、各自治体によって様々な助成金があります。要件がマッチするものがあるかもしれませんので、一度調べてくださいね。
【会社にとってのメリット③】給与の発生がない
産休・育休中は、会社の給与規定によりますが、多くの会社が無給だと思います。
社会保険料は【会社にとってのメリット①】で書いたとおり、産休・育休中は免除されるため会社負担はありません。
また、雇用保険も無給の場合、発生することはありません。
給与が発生しないので、育児休業取得者の代替要員として派遣労働者やパートタイマーの雇い入れがしやすくなるかと思います。
うまく要件が合えば【会社にとってのメリット②】で紹介した両立支援等助成金(育児休業等支援コース 代替要員確保時)を申請することができる場合もあります。
都道府県労働局雇用環境・均等部(室)へ問い合わせてみてくださいね。
【従業員にとってのメリット①】育児休業給付金の支給
育児のために休業するママやパパに対して、育児休業中に給与が一定以上支払われなくなった場合に、加入している雇用保険から給付金が支給される制度
育児休業給付金の受給条件
- 雇用保険に加入していること
- 休業前の給与の8割以上が支払われていないこと
- 休業期間中に就業する日数が各月10日以下であること(10日を超える場合は、就業している時間が80時間以下であること)
- 育児休業の開始日前2年間に11日以上働いた月が12か月以上あること
期間の定めのある労働契約で働く方(有期雇用労働者)は、上記の要件に加えて
- 育児休業開始時に、同じ事業主に1年以上雇用されている
- 子が1歳6か月までの間に労働契約が更新されないことが明らかでないこと
が必要です。
育児休業給付は、育児休業終了後の職場復帰を前提とした給付金です。
このため、育児休業の当初からすでに退職を予定しているのであれば、育児休業給付の支給対象となりません。
手続き方法
育児休業給付の申請手続は、原則として、事業主を経由して行う必要があります。
ただし、被保険者本人が希望する場合は、本人が申請手続きを行うことも可能です。
受給期間
原則、養育している子が1歳となった日の前日(具体的には1歳の誕生日の前々日)までです。
ただし、子が1歳になる前に職場復帰された場合は復帰日の前日まで。
また、一定の要件を満たした場合は、最大で1歳6か月又は2歳となった日の前日まで受給できる場合があります。
延長をする場合、申請が必ず必要ですので、忘れないようにしてくださいね。
給付額
1支給単位期間ごとの給付額は、以下の式で計算します。
「休業開始時賃金日額×支給日数(原則30日)×67%」(育児休業の開始から6か月経過後は50%)
休業開始時賃金日額が30万円だと、30万円×67%=20.1万円が給付額です。
休業開始時賃金日額とは
育児休業開始前6か月間の総支給額を180で除した額
【従業員にとってのメリット②】育児休業等終了時改定
育児休業等終了時改定とは
社会保険料は、「標準報酬月額」に保険料率を乗じて計算されますが、年に1回、9月に標準報酬月額が見直され、その後1年間は同じ額が用いられます。
ところが、昇給又は降給等により固定的賃金に変動があり、これまでの標準報酬月額と改定後の標準報酬月額との間に2等級以上の差が生じるときは、随時改定といって、標準報酬月額を変更する手続きを行うことができます。
育児中の被保険者の経済的負担を軽減することを目的として、こうした随時改定とは別に、育児休業等を終了した際に、これまでの標準報酬月額と改定後の標準報酬月額との間に1等級以上の差が生じる場合、実際の報酬の低下に応じた標準報酬月額に改定されるのが「育児休業等終了時改定」です。
復帰後、時短勤務をされる方は給与の減少により、対象になる可能性が高いですよね。
17日未満働いた月を除いた、育児休業等終了日の翌日が属する月以後3か月分の報酬の平均額の算出をして、等級に差がないか確認してくださいね。
手続き方法
- 産前産後休業終了時に従業員から申出書の提出を受けた事業主が「産前産後休業終了時報酬月額変更届」を日本年金機構へ提出します。
- 育児休業等終了時に従業員からの申出を受けた事業主が「育児休業等終了時報酬月額変更届」を日本年金機構へ提出します。
標準報酬月額が変わると給与計算にも関わってきますので、出来るだけ速やかに提出してくださいね。
【従業員にとってのメリット③】厚生年金保険における養育期間の標準報酬月額の特例措置
厚生年金保険における養育期間の標準報酬月額の特例措置とは
次世代育成支援の拡充を目的とし、子供が3歳になるまでの間に標準報酬月額が下がった場合、子どもが生まれる前の標準報酬月額で保険料を支払ったものとして年金額を計算してくれる特例です。
対象となる期間は、3歳未満の子の養育開始月から3歳到達日の翌日の月の前月までです。
養育期間中の報酬の低下が、将来の年金額に影響しないようにしてくれるので、とても嬉しい措置ですね。
手続き方法
従業員からの申出を受けた事業主が「厚生年金保険養育期間標準報酬月額特例申出書」を日本年金機構へ提出します。
まとめ
いかがでしたか?
産休・育休を取得することって、経営者の皆様にとっても、従業員にとってもメリットがたくさんあります。
優秀な人材の流出防止のためにも、従業員の方と今後について話し合われる際に、メリットをお伝えしてみてくださいね。
でも、いくらメリットを伝えられても、やはり最後の決め手は経営者の皆様の「会社にとって大切な仲間である」「この先も一緒に仕事をしたい」という熱い気持ちだと思います。
それが従業員に伝われば、自ずといい結果へつながるのではないでしょうか。
経営者の皆様にも従業員にも笑顔で働ける職場になりますように。