【テレワーク】部下のマネジメントが難しい!生産性をあげ、やる気を起こす方法とは
コロナの感染拡大におけるテレワークが日常になっている中、あなたの部下の生産性や働くモチベーションはどうなっているか知っていますか。
なんと!
「テレワークを実施している人が感じている生産性は、職場への出勤時とくらべて、20%も落ちている」と言っています。
テレワークで生産性が上がっていると思っていたのに違うのですね。
テレワークで生産性が下がっている要因としては、「会社・組織」「個々人の仕事への取り組み」等があると思いますが、私は、管理職の「部下へのマネジメント力不足」が問題ではないかと私は思っています。
中高年危機脱出キャリアコンサルタントとして、テレワーク環境下で部下マネジメントで悩んでいる方の相談にのっている坪根克朗が、部下の「生産性」をあげ、「モチベーション」をあげる方法についてお話していきたいと思います。
テレワークでの生産性
パーソル総合研究所の調査によると、下図のように「職場に出勤したときの仕事の生産性を100%としたとき、テレワークしたときの生産性がどのくらいになるかを聞いたところ、全体平均で84.1%となり、職場への出勤時と比べてテレワークでは生産性低下を実感している」結果になったそうです。
出所:パーソル総合研究所「第四回・新型コロナウイルス対策によるテレワークへの影響に関する緊急調査」
生産性に影響するのは、「部下へのマネジメント」
テレワークでの生産性に、何が影響するのでしょうか。
厚生労働者が作成した「テレワークにおける適切な労務管理のためのガイドライン」での「労働者にとってのデメリット」は以下のようになっています。
出所:厚生労働省「テレワークにおける適切な労務管理のためのガイドライン」
いかがですか。
「仕事と仕事以外の切り分けが難しい」「長時間労働になりやすい」「仕事の評価が難しい」「上司とのコミュニケーションが難しい」等、ほとんどの項目は、部下へのマネジメントで解決できると思いませんか。
組織の生産性と「上司のマインドセット」の関係
パーソル総合研究所では、組織のパフォーマンス(生産性)を高低2層に分類し、組織の生産性を低層と高層別の上司のマインドセット(経験、教育、先入観などから形成される思考様式)との関係を調べた結果が、下図になっています。
出所:パーソル総合研究所「第四回・新型コロナウイルス対策によるテレワークへの影響に関する緊急調査」
上司のマインドセットによって、組織への生産性に影響が多いことがわかります。
組織が高い生産性をあげている上司のマインドセットは、「テレワークでも他部門と調整できる」「部下のキャリアアップを考えている」「個人目標をよく話あっている」になっています。
テレワークがモチベーションを下げる理由
次にテレワークが部下のモチベーション下げる理由を考えてみたいと思います。
社員がテレワークに対して不安があると、モチベーションはあがりませんよね。
テレワークへの不安とは
パーソル総合研究社が、「テレワークにおける不安感・孤独感に関する定量調査」によると、テレワークを実施している中の30%~40%の程度の人がなんらかの不安を抱えているそうです。
そして、抱えている不安には、「評価」「コミュニケーション」「ジョブアサイン」「キャリア」に関するものになっています。
出所:パーソル総合研究所「テレワークにおける不安感・孤独感に関する定量調査」
次に、上記のような不安から社員のやり気(モチベーション)をさげる要因について考えてみたいと思います。
「評価不安」でのモチベーション低下要因
評価不安を起こすのは、部下が「上司から信頼されていない」ことを感じるからではないでようか。
過剰管理をしてくる
テレワークになって、部下の仕事ぶりを「見る」ことができなくなった管理職は、「部下が真面目に働いていないのではないか」という不信感が高まり、毎回「できたか」といった過剰管理や進捗報告を多く求めることがあります。
人事評価が不透明
テレワーク以前の評価は、成果を出せなくても「勤務態度がいい」「真面目に行動している」といったことで、それなりに「〇(まる)」をもらえていました。
しかし、テレワークになって上司が部下の「勤務態度が見えない」「行動がわからない」中で、どうすれば評価されるのだろうかといった不安が出てきます。
人事評価エラーの発生
テレワークになって部下が見えにくくなるので、職場への出社時より以下のような「人事評価エラー(評価者が陥りやすい心理的な錯誤)」が起こりやすくなります。
「コミュニケーション不安」でのモチベーション低下要因
指示があいまい
あなたは、部下に指示を出すとき、「ちょっと」「大体」「いつもの場所」といった「あいまい言葉」や期限に関しての「なる早」「大至急」「今日中」「今月中」といった「目盛りがついていない言葉」を使っていませんか。
これは非常に危険な言葉です。
このような言葉を使うことによって指示もあいまいになってくるのです。
その結果、ミスが起こると上司は「仕事のできない奴」、部下は「指示が悪い」という話になって、お互いの不信感が芽生えます。
フィードバックがない
フィードバックとは、部下の仕事の結果を見て、あるべき状態にするため行動を修正する助言を行うことです。
しかし、往々にして頭ごなしに批判、否定、叱責していることが多いのではないですか。
「コミュニケーションの場に参加」の強要
社員を何時間もオンライン会議に参加させておきながら、夜は、組織としての一体感を出すためと称してオンライン飲み会に参加を期待することは、社員のエンゲージメント(会社への満足度)アップには、程遠い行為になります。
「ジョブアサイン不安」でのモチベーション低下要因
部下に仕事を任せない
人手不足の状況が続いていたため、管理職の仕事は単に部下の仕事の進捗を管理するだけでなく、現場の第一線で自分自身に課せられたノルマをこなすプレーヤーとしての役割ももっています。
そのため、「自分でやった方が間違いない」「自分でやった方が早い」と考えて仕事をまかせない上司も多いのです。
自分が信頼する部下にしか仕事をアサインしない
長年いっしょに仕事をやってきて、スキル・適正を知っていて、気に入っている部下にしか仕事をアサインしない上司、いますよね。
その割に、仕事が火を噴くと他のメンバーに手伝わせて、結果うまくいくと最初にアサインされた人の成果、手伝った人から見ればモチベーションあがりませんよね。
「キャリア不安」でのモチベーション低下要因
会社・組織のビジョン・方向性が不明確
会社・組織のビジョンや事業に関する方向性が見えないと、「会社理解」「仕事理解」ひいては「自己理解」もできなくなり、「隣の芝は青い」状態で「別部門への異動希望」「転職」を考えるようになります。
成長の機会が減る
職場での出社時は、同じフロアにいる仕事ができる人や尊敬する先輩の「仕事の進め方・やり方」「課題発見・対処法」を見よう見まねで自分のキャリアアップにつなげていたところがあります。
しかしテレワークになって、間違いなくこういった学ぶチャンスは減ってしまうのです。
社員の生産性をあげ、やる気を起こす方法
「組織の生産性と上司のマインドセット」「テレワークでの不安」をみてきました。
そして、それを踏まえて、社員の生産性をあげ、やる気を起こすマネジメントは、以下のようなことを実践していけばいいのではないでしょうか。
組織のビジョンや方向性を社員と共有
まず、管理職の上司としてできることは、会社が掲げるビジョンや方向性を部下と共有し、部下それぞれのキャリアとリンクさせる必要があります。
部下への問いかけ
会社のビジョンや方向性はいくら声に出して言っても、なかなか頭に入らないし、ピントきませんよね。
そういう場合は、ミーティングの時などに上司が部下に何気なく「このプロジェクトって、なんのためにやるんだろうね」「何のためにこの会社で働いているの」というふうに部下に問いかけるのです。
そして、部下に自分の言葉で「考え」を話してもらうのです。
そうすることによって、会社・組織が考えているビジョンや方向性が部下なりに、腑に落ちるものになってくるのです。
部下のキャリアに紐付ける
部下それぞれが、会社のビジョンや方向性を理解できたなら、次は、部下から「会社への期待」「仕事への期待」を聞き、マッチングできるように相談にのったり、支援してあげればいいと思います。
社員との信頼関係の構築
テレワークになって、お互いが見えなくなった時こそ「信頼関係の構築」が重要になります。
部下を「認める」
部下との信頼関係を作るには、部下を「認める」ことが大切です。似た言葉に「褒める」がありますが、実は大きく違います。
「褒める」は、こちらが期待したことを、その部下が達成したときに行うものになります。
いわば、条件つきなのです。
一方「認める」とは、その人の「すばらしさ」を見つけ、存在そのものを認めることです。
人は、条件つきで褒められるより、「存在そのものを認めてもらっている」と感じたときにこそ、モチベーションがあがり、成長していくのです。
テレワークでは「任せきる」が基本
テレワークでは、部下が近くにいないこともあり、途中で口を出したり、軌道修正させることができないので、部下に「任せきる」ことが基本になります。
スキルや能力にあった業務を任せれば、各自の生産性もあがりますし、仕事の質もよくなります。
適切な業務アサインとフィードバック
スキルと能力を棚卸しする
適切な業務アサインをするのは、部下のスキル、能力を把握する必要があります。
部下それぞれのメンバーについて、「どんな作業が得意」「どんな作業が苦手」を把握して、チームとしてうまく組み合わせることによって、組織の生産性は上がっていきます。
仕事の意味を伝える
部下への業務アサインにおいて、「なんのためこの仕事をしているのか」「この仕事は誰のためにしているのか」といった仕事の意味を伝えることによって、部下のモチベーションをあげることができます。
あいまいな指示は出さない
当然ですが、部下への指示にあたって「あいまい言葉」や期限に関して「目盛りがついていない言葉」を使ってはいけません。
フィードバックは部下の成長の機会
フィードバックする時は、感情的に怒ることはしないで、何が問題でどうしたらいいのか、部下が自ら考えるように関わっていきます。
今後改善する点、さらに成長するために何ができるか、という視点で関わることによって部下は成長します。
具体的な問いかけは以下のようなものです。
- 「何が原因でできなかったのかな?」
- 「あなたが成長するための改善点はどこだと思う?」
- 「あなたが上司だったら、きみという人にどうしてほしいと思うかな?」
- 「今後、どんな行動をとって、どのように進めるといいかな?」
適切な人事評価
目標管理制度を取り入れる
目標管理制度とは、個人が期間内に達成したい目標を定め、実現するための取り組みや中間目標なども設定し、それにもとづいて振り返りやアウトプットを評価する仕組みです。
一般的な進め方としては、上司と部下が目標や達成方法などを相談し、期間中に上司が部下の取り組みをサポートしていきます。
目標管理制度は、年1回、半年に1回が多いですが、テレワークが日常になっているなら、月1度などに回数を増やすことによって、部下の成果を評価しやすくなります。
評価項目を複数準備
人事評価エラーを起こさないために、目標は、定量的な評価がしやすいように設定することが一番です。
ただ、営業のような定量的な評価がしやすい職種は問題ないですが、スタッフのように定量的な評価が難しい時は、「アウトプットの質」「プロセス」「レスポンスの速さ」等で評価することによって、部下に不公平を感じさせないものにする必要があります。
オンライン会議のファシリテーションスキルの向上
オンライン会議では、発言する人、しない人がはっきりしてきます。
また、画面上で表示できる顔も限られてきます。
会議の主催者は、オンライン参加者が話やすい雰囲気作り、会議の目的に向けて、会議を進めていくファシリテーションスキルも磨いていく必要があります。
まとめ
いかがですか?上司のマネジメントの工夫一つで部下の生産性やモチベーションがあがることがわかっていただけましたか。
テレワークの実施が、労働者の生産性向上につながるとともに企業の利益を増加させ、また、女性や高齢者の労働市場参加へのインセンティブになり、労働力不足問題を解消させるとするならば、企業は従来の働き方に拘る理由はないと思います。
多分これからは、テレワークが働き方のニューノーマルになる可能性が高くなります。
ただ、どのような働き方になっても中高年の管理職にとって、「部下のマネジメント」は永遠テーマですし、悩み事は尽きず、深くなれば「中高年の危機」になります。
中高年の危機を感じている方は、是非、相談に来てください。