文系理系の考え方や決め手!文理選択はいつからどんな準備が必要か?
高校でのキャリア講座でよくこんな質問を受けます。
- 『文系か?理系か?どうやって決めたらいいですか?』
- 『得意な科目がなくて文理選択が決まらないのですがどうしたら良いですか?』
- 『得意な科目で文理選択をしてはいけないのですか?』
- 『文系と理系、どちらの方が大学に楽に入れますか?』
など文理選択に関する質問を多く受けます。高校生はみんな悩んでいるのですね。
正解はないのですが、企業側で採用面接する側を経験し、大学生の就職活動支援も行っている立場からならではの、将来を見据えた考え方や進め方をキャリアピット代表、キャリアコンサルタントの池辺 博がご紹介します。
文系理系の考え方
~文系理系などを選択したその先にあるものを理解してから考える~
(1)大学に何をしに行きたいですか?
皆さんは大学に入学して何をしたいですか?
- 『親元を離れて一人暮らしがしたい!』
- 『都会で暮らしたい!』
- 『彼氏、彼女をつくって色んなことを楽しみたい!』
- 『クラブ活動を頑張りたい!』
- 『アルバイトとかこれまで出来なかった社会経験をしてみたい!』
- 『留学してみたい!』
まだまだいっぱいあると思いますが、、
大学生は学業(勉強)を行わなければならないという大前提があるということを覚えておいてください。
(2)社会から求められている大学の役割
では大学では自分で選んだ好きで得意な勉強や研究だけしていれば良いのでしょうか?大学の役割からするとそれは正しいことだと思いますよね。
しかし現在の大学には、『大学で学んだ学生たちを社会に出てから活躍出来る人材に育てる』という本来の役割・使命とは違うことが社会や実業界、ご家族からも求められているということも事実としてあるのです。
今、高校生のあなたには遠い先のことのように感じるかも知れませんが、大学在学中に(大学院に進学した人は大学院在学中に)就職活動を行い、就職先を決めて行きます。
就職活動を進めていくその過程では大学で学んだ専門知識以外の基礎学力や一般教養のみでなく、『社会人基礎力』といわれる能力を有していることや、勉強や研究以外(クラブ活動や社会活動、アルバイト?など)での成功体験や失敗体験なども求められているという現実があります。
ですから最初の質問『では大学では好きで得意な勉強や研究だけしていれば良いのでしょうか?』について補足するとすれば、『好きで得意な勉強や研究をしながらも、それを社会の中でどう役に立てて行くか?将来就く仕事にどう役に立てて行くか?という視点を持ちながら好きで得意な勉強や研究をすることも必要』だということですね。
(3)文系とは?理系とは?
高校生のあなたは大学に進学するのに文系に進もうか?理系に進もうか?で悩んでいる最中かも知れません。
文系か理系かの二者択一だと思っているかも知れませんが、実はもう少し広い選択肢があることを知っておいて欲しいと思います。 〇 社会科学系(文系)⇒ 法学・政治学、商学・経済学、社会学、地域政策など 〇 自然科学系(理系)⇒ 工学(機械、電気通信、土木・建築、応用化学、経営工学、コンピューター情報など)・理学・農学など
これらの3つは明治政府が西洋の列強に追いつき新しい日本という国を造るために必要な学問を分類したものがそのまま残っています。
現在はその当時より学ぶべきことが広範囲になり、より専門的になり、時代に合わせて拡大しています。
〇専門分野系 ⇒ 教育、家政、保健(医学、歯学、薬学、看護学、言語聴覚など)など
〇芸術系 ⇒ 美術、デザイン、音楽、映像など
つまり学びたい学部・学科に入学するために、或いは将来なりたい職業に就くために、大学や専門学校を受験する時に必要な受験科目は何か?をしっかりと調べた上で、それを高校で学ぶための文理選択であることを知っておく必要が有るということが分かってもらえると思います。
最近増えている文理融合系の学部は学科によって入試科目がまちまちなので、なおさら入試科目をしっかりと調べた上で文理選択をする必要があることも分かりますね。
文理選択はいつから
~準備を始める時期は早ければ早いほど良い~
(1)自分を知る、強みや得意と興味や適性を知る、仕事や職種を知ることが最優先!
高校生であるあなたは将来どんな仕事に就いて、どう社会に役立ちたいですか?
・・・
その仕事はあなたに合っていそうですか?
・・・
もう少しかみ砕いて質問すると、
- あなたが持つ強みを活かせる(生かせる)仕事ですか?
- あなたが得意とすることを活かせる(生かせる)仕事ですか?
- あなたが興味を持っている分野(業界)ですか?
- あなたが持つ適性に合った仕事・分野(業界)ですか?
そしてもっと詳しく質問すると、
- その仕事の中のどんな職種に就きたいですか?(企画・開発・製造・管理・営業・接客・サービス・スタッフなど)
- その仕事のことを詳しく知っていますか?
高校生のうちに上記の質問にしっかりと向き合った上で、その為の勉強や専門知識を大学で学ぶ。
その為に文理選択を行わなければならない!ということなのです。
(2)文理選択学年の早い時期から準備を始める(1学期初めからが良)
上記(1)を考える、自分と向き合う、自分のことを知って行く、仕事や職種について調べて行く、ということにはかなりの時間がかかります。ですから出来るだけ早い時期から準備を始めることをお薦めします。
あなたが通っている高校で1年生の秋に文理選択の希望を提出しなければならないのであれば高校1年生に入学した直後の1学期初めから準備を始めるのが良いと思います。早ければ早いほど良いということです。
もう既に過ぎてしまっていても心配せず、焦らずに、今出来ることから始めて行きましょう!
私がキャリアピットという生徒や学生に向けたキャリア支援事業を始めたきっかけの1つは『七五三現象を食い止めたい!』という所から来ています。
七五三現象というのは中学卒の7割、高校卒の5割、大学卒の3割の人たちが就職後3年以内に最初の仕事を辞めていることを言います。その原因は種々あるのですが、大学生になってからやりたい仕事を探す・見つけていくのでは遅すぎるということをキャリアピットでの支援活動を進めれば進めるほど実感します。
高校の先生方は毎日忙しすぎてキャリアについての勉強をする時間が取れないのと社会で働いた経験が無い人が多く、このような逆算の考え方が必要なことを理解して教えて下さる先生が少ないのが実情です。
私が高校1年生の早い時期からのキャリア講座やワークの開催を提案しているのはそのような先輩や先生と社会の実情から来ているのです。
文理選択の決め手
~まず仕事や職種についての知識を増やす~
私たちは知っていることの中からしか選べないという事実があります。知らない仕事や職種に就きたいとは思えないですよね。ですから世の中にはどんな仕事や職種というものがあるのか?情報収集して知識を増やすということをまず始めなければ話が進みません。
例えば、総務省統計局のホームページ内に『日本標準産業分類』があります。ここを覗くと沢山の業界や業種が載っています。
本で調べるとなると『新13歳のハローワーク』(村上龍 著)や『もっとやりたい仕事がある!』(池上彰 著)などが有名ですが、その他たくさんの本が出版されているので図書館や本屋へ行ったりネットで調べて、興味を持った本や記事を見つけ出して読んでみてください。その中から興味のあるものや就いてみたいと思える仕事や職種に出会ったら更に詳しく調べてみてください。
まずは仕事や職種の知識を増やすということにトライしてみてください!
文理選択の準備 ~なりたい仕事や職種を決められない場合~
次に自己理解を進めていきます。
自己理解は、(1)自己分析 (2)他人からのフィードバック (3)データの活用 の3つの角度から自分自身を観るということから進めていきます。
(1)自己分析
幼少時代に夢中になったことから考えてみる
- あなたが小さかった時(概ね6歳くらいまで)、夢中でやっていたことは何ですか?
- 1日中やっていても飽きなかったことって何でしたか?
そこに鍵があるかも知れませんね。誰から強制されることなく、能動的に、自発的にやっていたことがポイントです。
誰かに薦められたり、受け身でやっていたもの(ゲームも)は除きます。
思い出せない時は小さかった頃の写真やアルバムを見たり、おうちの人や近所の人に聞いてみるのも良いですね。
好きなことや得意なことから考えてみる
- あなたが好きなことは何ですか?
- 得意なことは何ですか?
まずはそこから考えて広げていくのも良いかも知れませんね。
好きなことや得意なことをどう社会の役に立つようにするか?が考えるヒントになります。ただし、好きなことはこれから成長していくにつれて、そして経験が増えて、知識が増えて行くと変わって行く可能性があります。
では得意なことはどうでしょうか?
得意なことをどう社会の役に立つようにするか?が考えるヒントになります。
得意なことは変わって行くというよりも、これから成長していくにつれて、そして経験が増えて、知識が増えて行くと得意なことも増えていきます。ですから今得意なことから考えていく方が将来もブレないあなた自身のベースになります。
得意とは?
例えばサッカーが好きという場合、『サッカーをするのが好き』は能動的な好き。こちらは得意につながりますよね。『サッカーを観るのが好き』は受け身的な好き。これは得意とは言えないですよね。
音楽や絵画も同様に『音楽を演奏するのが好き』『絵を描くのが好き』は能動的な好き。こちらは得意につながりますよね。『音楽を聴くのが好き』『絵を鑑賞するのが好き』は受け身的な好き。これは得意とは言えないですよね。
こうやって『能動的な好き』に沢山気付いて、それをどう社会の役に立つようにするか?が考えるヒントになります。
社会への役立ちや価値観から考えてみる
あなたは将来、あなたの得意や強みを活かしてどう社会に役立てて行きたいでしょうか?
それを実現させるにはどんな仕事なら可能か?から考えてみる進め方は上記(2)で説明しましたね。
では、あなたが大事にしている考え方や価値観はどんなことでしょうか?
それを大事にしつつ実現させるにはどんな仕事なら可能か?から考えてみる進め方です。
(2)他人からのフィードバック
自分自身のことは考えて分かることや気付くことも有りますが、無意識にやっていることや当たり前のようにやっていることには中々気付けないですよね。
そのようなときには周りの人に聞いてみることもお薦めです。おうちの人や友達に聞いてみましょう。
長所や強みだけでなく短所も(笑)。反発せずにしっかりと受け取って下さいね。
周りの人からはそう見えているということなのであなたが気付いていないあなたの一面です。
案外無意識にやっていることが周りの人には助かっていたり役立っていたりすることが有るかもしれませんね。
ずっと続けていて凄いと思われているかも知れません。
「無意識に」「当たり前に」やっていることの中にあなたの『才能』『強み』『得意』があるかも知れません。それをどう社会で役に立つようにするか?が考えるヒントになります。
(3)データの活用(職業興味適性検査などを活用する)
中々しっくりとくる仕事が見つからないという場合は一度職業興味適性検査を受けてみて、その結果をヒントとして考えてみるという方法もあります。あくまでヒントとしての活用です。くれぐれも鵜呑みにしないように気を付けてください。
ただし検査を受けた時の興味と適性であって、これから成長していくにつれて、そして経験が増えて、知識が増えて行くと変わって行く場合があることを十分理解した上で活用してください。
私はJCDA(日本キャリア開発協会)で国家資格取得の勉強をしてきましたがそこで用いた『CPS-J』という適職診断テストがこれからを考えて行くという視点では使いやすいと感じています。ネット上で申込みから回答まで出来ますので参考にしてみてください。
その他にもいくつかの適性検査がありますのでトライしてみると参考になるかも知れませんね。
※データを活用した具体的な進め方はこちらのブログを参考にして下さい。
(補足)得意な勉強や科目から考えてみる(大学で学びたいことから考えてみる)
今の段階では具体的な仕事や職種をどうしても考えられない、決められないという場合は大学で詳しく勉強をしてみたいと思う学部と学科を見つけて、そこに入学するための試験科目を調べて文系か理系かを選ぶという方法は間違いではありません。
ただし文系出身者の7割が営業職に就いているという現状があります。これは企業が利益を生む為に自社の商品やサービスを販売したり販路を維持・拡大することが重要なので採用人数が多い為ですが興味や適性を十分考慮した上で選択していくことが重要です。
大事なことは大学に進学したその先にはあなたの強みや得意、勉強したことを社会に役立てられる仕事や職種を選ぶ、そして働くということです。このことを頭の隅に残しておいて欲しいと思います。
ここで注意が必要なのは専門知識と資格が必要な仕事や職種は必ず受験資格を得られる学部・学科に行かなければならないということです。
この場合は得意や苦手で決めてはいけないということです。なりたい!どんな困難にも負けない!という強い決意が必要です。
例えば弁護士・検察官・裁判官(法科大学院)、医者(医学部)、建築士(工学部建築学科)、薬剤師(薬学部)、看護士(看護学科)などです。
教員(幼児教育含む)の場合は取りたい免許によって学部や学科が多岐に渡っていますので何の教員免許を取りたいのか?を明確にして選んでいってください。
文理選択の準備 ~なりたい仕事や職種が決まっている・決まった時の考え方~
(1)どの学部のどの学科に進めば良いか?調べる
あなたがなりたい仕事や職種が決まっていたら、決まったら、その仕事や職種に就くためにはどんな専門知識が必要で、それを学ぶにはどの学部のどの学科か?を調べてください。
どの学校にもある学部や学科の場合もありますし、特殊な仕事や職種の場合、どの大学でも学べるという訳ではなく日本で数校という場合もありますのでしっかりと調べて行きましょうね。
文部科学省のホームページに『平成17年度学校基本調査 学部系統分類表』が掲載されていますので参考にしてみてください。
(2)受験科目を調べて、文系か理系かを決める
行きたい学部と学科が決まったら、あなたがそれを学びたい大学や短期大学、専門学校での入学試験の科目は何か?
それをあなたの通う学校で勉強する為には文系を選択すれば良いのか?理系を選択するのが良いのか?を逆算して選んでいきます。
(3)得意な科目と受験科目が一致している時の落とし穴
文系の教科が得意だから将来のことも考えずに単純に文系を選んでいませんか?理系の場合も同じです。
将来なりたい仕事をしっかり考えた上での選択ですか?文理選択前の今、将来の仕事を含めて真剣に自分と向き合う時です。逃げないで今しっかりと考えてみましょう!
逆の場合も注意が必要です。文系の教科が苦手だから理系を選ぶ、或いは理系の教科が苦手だから文系を選ぶという消極的な選び方をしていませんか?
本当に苦手ですか?特にコツコツと積み上げが必要な教科の場合(英語や数学・理科の一部)は単純に途中で勉強を疎かにして分からなくなってしまっただけという場合が多いのではないでしょうか?
今一度、将来なりたい仕事や職種を見つけて選ぶ。そしてそこから逆算して文理選択を行うということから真剣に始めてください。
(4)受験科目に苦手な科目が有る場合の考え方と乗り越え方
答えは1つです。時間はかかりますがコツコツと勉強をするしかないです!自分にあった参考書や問題集、勉強方法から見直してください!
ちなみに、、私は理系出身ですが中学の時から数学が大の苦手でした。それでも小さい頃から工作が大好きで得意だったので設計の仕事がしたくて理系を選びました。
高校3年生の春に行われた実力試験の数学Ⅰでクラス最低点を取りました。そこから1年間、塾には通わずに参考書と問題集で必死になって数学Ⅲも含めて勉強して何とか現役で希望の工学部に入学しました。必死になって頑張れば何とかなります。夢の実現のためには覚悟を決めてやるしかないのです。すぐに行動に移しましょう!
最後は自分の感性を大事にする
あなたが今思い描いている将来やりたい仕事や職種は、考えただけで、想像するだけでワクワクすることですか?
あなたはオンリーワンの存在として、生まれながらにして持っている強みや得意を世の中に生かすために生まれて来ているのです。
自分も楽しみながら世の中の役に立つために生まれて来ているのです。
あなたの人生はあなた以外の人の理想や夢を叶えるためのものではありません。
あなた自身がワクワクして光り輝けるのはどんな仕事や職種か?
今からでも遅くはありません。まずは考えてみて、行動してみて、是非めぐりあってください。そこからこれからの進路を考えてみてください。
選択の基準はあなた自身がワクワクすることです。その仕事や職種をしている自分を想像できることです。頭で考えるのではなく心で感じてみることです。自分自身に問いかけてみてください。
最後に
10歳代のあなたは統計的には100歳まで生きると言われています。
この先どのような生活をして行きたいか?どのような人生を歩んでいきたいか?そのための仕事はあなたにとってどんなことを大事にして選んでいくのか?少し難しいかもしれませんがこれからの『行き方(生き方)』を考えながら仕事を考えて行くという進め方もあるということを知っておいて欲しいと思います。
今後技術が進み仕事のAI化、ロボット化が更に進むと言われています。今ある仕事の大半はなくなってしまうとした論文が発表されているのも事実です。
単純でマニュアル化出来る仕事は確かにそうかも知れませんが、前例のない創造力が必要な仕事は人間にしか出来ません。
過度な心配は無用です。
その時その時で創造力を発揮して、時代の変化に、そして環境の変化に好奇心を持って対応していく。我々人間にはその力があるということを信じて欲しいと思います。
このブログを読んだだけでは具体的なやり方が分からないし進められないですよね。そんな時はどうぞキャリアピットまでお問い合わせください。
一緒に考えて行きましょう!