自信がない、気持ちがしんどい、不安な40代に効果的なキャリアアンカー理論とは?
「今までやってきたことは良かったのか?」「このままでよいのか?」と、自分に自信がなくなって不安になる40代以降の方は多いと思います。
スタミナが持たない、老眼、腰痛、健康診断でメタボって診断された等の健康不安。
あるいは、後輩が昇進。この会社にいていいのか、本当にこの仕事をしてきてよかったのか等の仕事の不安。
家のローン、子供の進学もあるのにお給料が頭打ちになってきた等の経済的な不安。
これまでの自分ではこの先やっていけないかも・・という不安をどうつきあっていけばよいか。
それは人生の節目で自分の棚卸をする事だと思います。
なんだかよくわからないけど最近自信がない、しんどい。
モチベーションを高めるのに有効なキャリア・アンカーの理論について、国家資格キャリアコンサルタントでスマイル戦隊ネガティブバスターズ司令官の深月あさこが自身の体験談とともにご紹介します。
その不安、「フアンガガ」のせいです。ベタですいません(汗)。スマイル戦隊ネガティブバスターズと一緒に退治していきましょう!
漫画 スマイル戦隊ネガティブバスターズ 「中年キラー、フアンガガ!」
自信がない、気持ちがしんどい、40代の不安の正体
40代以降に訪れる、キャリアのなかばの危機とは
中年の危機とは
中年期(40代~60代)になると中年期の危機が訪れます。
心理学者のユングは、中年期を「人生の正午」と名付けています。お天道様がちょうど真上に上がったところ、人生でいうと折り返し地点をすぎて後は下り始め・・・ピークを過ぎた感じがなんだか嫌なネーミングですね。
40代になると、色々なプレッシャーを受けます。
仕事では役職がついて、結果を厳しく求められる。チームを持ち中間管理職として上司と部下の板挟みに悩む事も多くなります。
また、半分過ぎて先が見えてくると「今の会社は先が見えないが、このままで良いのだろうか」とか「そろそろリストラされる年齢になってきた」とか、漠然とした将来への不安も増えてきます。
家庭では、子供の教育資金や家のローンなどの経済的な面での責任、親として育児の責任、老齢を迎えた両親の介護など子供としての責任、と、色々な役割・責任を担う世代となります。
色々プレッシャーをうける一方で、自分の能力に限界を感じやすい世代。
体力面では、今まで感じなかった不調を感じるように。今までと同じようには頑張れなくなってきます。
いつまでも若いつもりではいられない実感を受けるときのショック。ボディブローのように効いてくるんですよね。
頑張らないといけないときに頑張れない。そんな焦りや失望が危機となるのです。
自分の棚卸(振り返り)が必要
その危機をどう乗り越えるにはどうすればよいのでしょうか。
アメリカの心理学者のエドガー・H.シャインの「キャリア・アンカー 自分のほんとうの価値を発見しよう」によると、この世代の多くの人がある種の再評価を行うとされています。
キャリアには段階があり、キャリアなかばの段階、つまり中年の時代には多くの人が一度は立ち止まって人生について考えるという時期なのだという事です。
ここで自分の今までを棚卸して振り返り、あまり自覚していなかったことを見つけだしたり、今まで自分が目標としてきた事を再認識したりすることになります。
もし目標が違っていたら方向転換することになるでしょうし、目標が自分の能力に比べて高いと感じればハードルを下げるでしょうし、このまま限界まで頑張るという人もいるでしょう。
40代~の世代は、立ち止まって人生の軌道修正をが必要か、自分を客観的に見つめなおす事が大事なのですね。
キャリアアンカー理論とは
キャリアアンカーのアンカー(anchor)とは、船の錨という意味で、アメリカの心理学者のエドガー・H.シャインが提唱した概念です。
錨は、船をつなぎとめて安定させるために必要だというところから、個人のキャリアの基軸(不動点)を与えるという意味で、キャリアアンカーと名付けられました。
自分を象徴する3つの要素
- 「コンピタンス(成果を生み出す能力)」
- 「動機(何がやりたいか)」
- 「価値観(何に価値を感じるか)」
を複合的に組み合わせて自分の軸を明確にしていこうという事です。
キャリアアンカーで「本当の自分」を知ることができれば「自分らしいキャリアの歩み方を考える材料にする」ことが可能となります。つまり、自分自身の姿と持ち味を明確に把握し、将来の抱負を探索することができます。
また、報酬や肩書などが提示されても、誘惑に負けて不本意な転職や就職に失敗する事を防ぐ事もできます。たとえ「航路」から外されたときにも、自分自身を発見するよりどころになります。
私もキャリアアンカー診断で
気持ちがしんどくて不安だった40代
私は同じ会社に勤めて20年余りになります。20代・30代は尊敬できる上司や諸先輩から仕事を教えられ鍛えられてきました。
新しい事もどんどん挑戦できたし、成果が出るととにかく仕事が面白くて、仕事に没頭。残業しても土日に休めば元気になれるし健康も気にしていませんでした。
しかし40代を過ぎて状況が変化。
今までのように体力も集中力も続かず頑張れません。周りを見ると、優秀な後輩達は役職についていて、同期は資格をとり市場価値を高めていました。
そして組織が変わり上司が変わり、人間関係が悪化。何をどう頑張っても認められない、存在価値すら否定されるような出来事が毎日私を苦しめます。
とうとう、メンタル不調で休職してしまいました。
ようやく復帰のめどが見えてきた時に受けた、公的機関の復職支援プログラムの中のひとつに、キャリアアンカーがあったのです。
詳しい内容は後でお伝えしますが、いくつかある選択肢の中で、自分が仕事を選択するうえでの条件を5つ選び、その中でも一番優先されるものを一つ選ぶというワークです。
深月あさこの診断結果
私の場合、「自己適性」・「やりがい」・「社会貢献」・「安定性」・「人間関係」を選択しました。
中でも一番譲れないものは「やりがい」でした。
この言葉を使って「私は仕事をどのようにしたいか?」を文章にしてみると、
となりました。
戦隊風に言い換えると、
我ながらいい感じです!
自分が文章にした事は、まさに今まで自分が過ごしてきたキャリア人生そのものでした。
受けてみて思ったこと
休職した時は「今までの自分の過ごし方が間違っていたのではないか。だから休職したのだろうか」と思っていました。
いえ、その前から漠然と「今まで自分がやってきたことが正解だったのか?このままでいいのか?」と思っていたのだろうと思います。
しかし自分で大切な価値観を選択してみて「自分がこういう事を大事に思っているから、今までこういう生活を過ごしてきたんだな」とモヤが晴れた感じを受けました。
「別の生活を選んでいても多分同じような生き方をきっとするだろう、今はこれが私の正解なんだな」と納得できたのですね。
それぞれ違う価値観
プログラムでは私と同じように復職に臨む人たちとグループワークで話し合ったのですが、「人それぞれ価値観は違うのだな」と実感しました。
給料が一番大事という人もいれば、社会貢献が一番大事という人もいます。楽しい事が一番大事という人もいました。
話している時の皆さんは生き生きとして、少し誇らしそうです。
色々な人が色々な価値観をもっていて皆が正解。私もその中の一人。
広い景色が目の前に広がるような感覚を覚えました。
自分のキャリアアンカーを知る事は、今までの自分のキャリアを振り返り、これからの自分の方向性を考えるうえでとても大事な事です。
キャリアアンカー診断をしてみよう
簡単バージョンのご紹介
私が受けたプログラムは、キャリアアンカーの本に載っている診断方法とは形式が違って、少し簡単にわかりやすくなっていました。
兵庫障害者職業センターの資料を参考に一部を紹介させていただきました。
気軽に自分を知る事ができるので、私はこれで十分だと思います。よろしければ皆さんも試してみてください。
仕事選択の要因分析
質問① あなたが仕事を選択するにあたって大切にしたい要因を5つ選んでください。
質問② 5つ選んだ中からあなたが一番重要だと思うものを1つ選んでください。
質問③ それは具体的にどのようなことでしょうか?実際の場面を想起しながら考えてみてください。
給料 | 業種 | 職務内容 | 職位 | 勤務時間 | 勤務場所 | 安定性 | 自己適性 |
人間関係 | 興味・関心 | 社風・風土 | 福利厚生 | 将来性 | 国際性 | やりがい | 専門性資格を活かす |
人事制度 | 教育・研修制度 | 企業理念 | 変化がある | 学閥 | 経営者 | 業績・経営内容 | 楽な仕事 |
キャリアを活かせる | 家庭と両立 | キャリアモデルがいる | 社員の平均年齢 | 転勤がない | 男女平等 | 社会貢献 | 自己実現 |
外資 | 女性の活用 | きれい | 楽しい | 自己成長 | 知名度 | 企業規模 | 自分らしさ |
結果が出たら、ご家族でも友人でも、話し合ってみるといいと思います。
より本格的なキャリアアンカー診断のご紹介
シャインはキャリアアンカーを8つのカテゴリーにわけています。この中で、自分がどのカテゴリーにあてはまるかを診断します。
- 専門・職能別能力:自分が得意としている専門分野や職能分野での能力発揮に満足感を覚えます。
- 経営管理能力:組織内の責任ある地位に立ち、自分の努力によって組織の成功に貢献し、その結果高い収入を得ることに喜びを感じます。
- 自律・独立:組織の規則や手順や規範に束縛されないで、自分のやり方、自分のペース、自分の納得する仕事の標準を優先したいと考えています。
- 保障・安定:安全で確実、将来を予測でき、ゆったりとした気持ちで仕事をしたいという欲求を優先します。
- 起業家的創造性:自身で新しい組織や製品、サービスを生み出して新しい事業を起こし、経済的に成功させたいと強く思っています。
- 奉仕・社会貢献:なんらかの形で世の中をもっとよくしたいという欲求に基づいてキャリアを選択します。金銭的な報酬よりも精神的なやりがいに喜びを感じます。
- 純粋な挑戦:不可能と思えるような障害を克服する、解決不能と思われてきた問題を解決する、きわめて手ごわい相手に勝つことが成功だと感じます。
- 生活様式:個人、家族、キャリアのニーズをうまく統合したい。自分のライフスタイルを重視し、プライベートと仕事を両立させたいと考えており、自分のライフスタイルが充実できるなら仕事にも邁進することができます。
私は、ツールを使わなくても、自分でどれに当てはまるかを考えるだけでも分類できると思いますが、詳しい診断ツールはこちらの本に載っていますので興味がある方は参考にしてくださいね。
エドガー・シャイン著 キャリアアンカー 自分の本当の価値を発見しよう
おわりに
長いキャリア人生、いつまでも同じ環境で仕事をする事はできません。健康問題も、人間関係も、任せられる仕事も、立場も変わっていきます。
周りに流されずにその変化に対応していくためには、自分軸がしっかりしている事が大事です。
忙しい日々を過ごしていると自分の不調はうっすら感じていても後回しにしがちです。
放っておくと、不安やモヤモヤが続いていつのまにか気持ちがしんどくなってしまいますから、早めにケアしてあげてほしいと思います。
しっかり自分の錨を下ろして、世間の荒波にうまく対処し、更なる高みを目指して進んでいければいいですね。
皆様が笑顔で過ごす日々が一日でも増えますように。
そしてスマイル戦隊ネガティブバスターズは、今日もどこかでモヤーゴと戦います!