パワハラと言われない!起こさない!【管理職必見】問題社員への対応策5選
管理職の皆さんは、低業績・低評価や勤務態度不良と言った問題社員へ善導の意味を込めて指導している時、ついつい発言がエスカレートした結果として、該当社員から「パワハラです」「労働組合に訴える」と言われた経験はありませんか。
パワハラはセクハラと相まって社会的な認知度があがったためか、「上司批判の言葉」「指導を止めさせる言葉」として安易に使われる風潮があります。
今回は管理職(上司)の問題社員への対応が「パワハラと言われない」「起こさせない」ひいては、パワハラを無くし、防止するために管理職(上司)/職場/会社がやらなければいけない5つの対応策についてお話していきますね。
パワハラと言われない!起こさない!問題社員への対応策5選
パワハラはどういう行為をさすのか、厚生労働省では、パワハラと判定する代表的な6つのパターン(行動)を公開しています。
下表はパワハラと判定される6つのパターン(行動)に対して「パワハラを無くし、防止する対応策5選」を整理したものになります。
その他、会社という組織全体としての問題社員への対応については、以下のブログでお話していますので、読んでみてください。
パワハラの問題とその対応策の考察
パワハラの問題はどこにあるのでしょうか。そしてその対応策をどのように考えていけばいいのでしょうか。
ハラスメント問題は「100倍の法則」が存在する
パワハラに限らずハラスメント問題では、「100倍の法則」が存在します。また、「加害と被害の非対称」が起こります。
どういうことかというと、加害者は「すぐに忘れてしまいます」が、被害者は「絶対忘れない」ということです。そのため解決には時間がかかるし、当事者たちだけでは無理なので、間に第三者がはいって、「事実確認」「罰の検討」「和解への仲介」等を進める必要が出てくるのです。
「100倍の法則」の法則をひとことでいうと、「加害は100分の1に被害は100倍に評価する」になる。これはヒトの本性なので、加害や被害の当事者がそれを客観的にすることはぜったいにできない。
~出典:「人生は攻略できる」(ポプラ社) 橘玲~
パワハラ判断の難しさに伴う管理職の機能不全
暴力行為や暴言を除いて、会社や職場においてパワハラと決めつけるのは難しいにも関わらず、管理職(上司)の中には、パワハラを気にするあまり、指導を怠り、「パワハラもないけど指導もコミュニケーションもない職場」を作ってしまうこともあるのです。
管理職(上司)は、パワハラがどういうものか理解したうえで、日頃の指導方法や言動を振り返り、反省すべきところを改善していけばいいのです。
本人の感じが「不快」ではパワハラにならない
セクハラについては、「受けた人が性的に不快だった」という本人の感じ方が判断のポイントになりますが、パワハラはそうではありません。
3つの構成要件を満たさないとパワハラにならない
パワハラとして判定されるためには、以下の3つの構成要件を同時に満たす必要があります。1つでも欠けるとパワハラとは判断されないのです。
- 職務上の地位や人間関係などの職場の優位性(パワーがあること)
- 業務の適正な範囲(行き過ぎた行為)
- 精神的・身体的苦痛を与えるまたは職場環境を悪化させる(ダメージがある)
そのうえ「業務の適正な範囲」「精神的・身体的苦痛」「職場環境を悪化」など内容が抽象すぎるため、最終的には裁判所でしか白黒がつけられないのです。
パワハラによって関係者へ致命的なダメージを与える
管理職(上司)の指導や接し方がパワハラとして判断されなくても、パワハラに近い行為が行われることによって、「被害者」「加害者」だけでなく「職場」「会社」へも大きなダメージを与えてしまうことになります。
したがって、対策は、管理職(上司)だけではなく、「職場」「会社」においてもそれぞれの立場で改善策や制度改革を考えていく必要がでてくるのです。
被害者への影響
- 人としての尊厳の侵害
- メンタルヘルス不調から精神疾患や身体的疾患の発症
加害者への影響
- 社内での信用失墜と懲戒処分の可能性
- 損害賠償責任や刑事責任による社会的信用や社会的地位を喪失
職場への影響
- 職場内で伝染し、パワハラ被害は深刻化し拡大(部長がやっていたら、課長もする)
- 人間関係がギスギスし、職場環境の悪化
- 働く人のモチベーション低下に伴う生産性の低下
会社への影響
- 職場に見切りをつけた人材の流出
- 労働問題や訴訟に発展した時の会社ブランドの失墜
パワハラをなくし!防止する!問題社員への対応策5選
【パワハラをなくす!防止する!対応策①】怒りのコントロール
パワハラは、本人の怒りから始まります。
管理職(上司)は、「怒りのコントロール(アンガーマネジメント)」を身につけることにより、感情に左右されず、冷静に指導することが可能になります。
アンガーマネジメントについて知りたい方は、以下のブログでは漫画を使ってわかり易く書かれていますので読んでみてください。
【パワハラをなくす!防止する!対応策②】指導方法の振り返りと改善
パワハラと言われないためには、従来の指導に関する「心構え」「内容」「方法」「言動」を振り返り、できていないことは反省して改善していく必要があります。
指導時の心構え
- 人格や性格を否定していないか(叱る相手にも家族がいるかもしれない)
- どの部下にも分け隔てなく一貫して指導しているか
- 上司も部下も人として対等の意識を持っているか
指導の内容
- 指導の目的、必要性は明確化になっているか
- 指導内容は具体的(5W1H)になっているか
- 指導内容(ミスやトラブル)の影響(損失、顧客への謝罪)を説明しているか
指導する時、事前に指導内容をメモしておくか、指導後記録を取っておくことをお勧めします。メモを作成すると怒りのコントロールをし易くなりますし、指導時も冷静に対応できます。また揉めた時の「まっとうな指導」という証拠にもなります。
指導の方法
- 発言する前に一呼吸置いているか。その一呼吸が怒りを和らげる
- 長時間や高頻度で指導を行っていないか
- 指導メールをお酒を飲んだ後や深夜に送っていないか(朝一番で確認して送る)
- 相手の理解に合わせて言葉を選び、具体的に伝えているか
- 指導が伝わったか本人の言葉で確認しているか
忌避すべき言動をしていないか
- 感情的な怒号や粗暴な言葉使い
- 相手が不本意と感じるような言い回しや繰り返し
- 腕組みをする
- 机をトントン叩く
- 部下が話している時にため息をつく
- パソコンばかり見て、部下の顔を見ては話さない
- 自分はイスにふんぞりかえって、相手を立たせて話を聞く
指導する時、相手が録音しているつもりで話を進めてください。また、周りの職場のみんなが観ていることを意識してください。忌避すべき言動の抑止力になります。
【パワハラをなくす!防止する!対応策③】コミュニケーションの改善
自分のコミュニケーションスタイルを知る
管理職(上司)の部下へのコミュニケーションの取り方によっては、パワハラと誤解されてしますこともあるので、まずは自分のコニュニケーションタイプを知る必要があります。
コミュニケーションタイプを知る方法として、以下のブログで自己分析の一つとして「タイプ別けfor Coaching」として紹介されていますから、参考としてみてください。
中でも“人の場を支配したがる「コントローラ-」タイプ”と判定された方は、日頃の指導方法について注意が必要になります。
日頃からコミュニケーション機会を作る
日頃からこまめにコミュニケーションを取り合うようにしていると、お互いの中で「意志の疎通」「心や気持ちの通い合い」「相互理解」が生まれてくるので、「そういうつもりで言ったわけじゃない」などの誤解を避ける事が出来るようになります。
【パワハラをなくす!防止する!対応策④】ボトムアップの職場改善活動
パワハラをなくし、防ぐためには、職場の1人ひとりが考え行動していく必要があります。
パワハラ・いじめをテーマにした社員研修の実施
定期的に階層別(管理職/一般社員)研修として、パワハラ判例の中から同業他社を例として学ぶことにより、1人ひとりがパワハラを「自分の事」として認識できるようになります。
また、研修の中で職場からパワハラ・いじめをなくす方法について、話し合うことによりパワハラ・いじめのない職場を作る一歩になります。
パワハラチェックリストを使った予防
厚生労働省が開設しているWebサイト「あかるい職場応援団」にパワハラチェックリストが掲載されています。
このチェックリストを利用することにより、パワハラ行為を理解するとともにパワハラの予防につながります。
厚生労働省パワハラチェックリスト
パワハラ・いじめを見つけたら声を上げる
パワハラと思しき行き過ぎた行為をしている人を見つけたら、その人への直接の忠告がまずは必要です。
それがないと見て見ぬふりをしたあなたも同罪になります。
【パワハラをなくす!防止する!対応策⑤】会社の組織・制度改革
会社としても、パワハラ防止に向けての組織や制度の改革が必要になります。
就業規則でパワハラの懲戒規定の策定
セクハラ問題と同じようにパワハラについても、就業規則等でパワハラを明確に禁じ、罰則も厳しく設定する必要があります。
相談窓口&解決組織の設置
相談窓口および解決・介入組織の役割として、被害者、加害者からヒアリングしてパワハラについての事実を確認し、パワハラの有無にかかわらず、被害者はパワハラで悩み・傷ついているので、和解に向けた話し合いを主導することになります。
相談窓口&解決組織の役割は以下のようなものになります。
- 両者からパワハラの事実について虚偽の可能性も視野に調査
- 職場の第三者からの事実確認
- クロージング(和解の仲介)
- パワハラ防止策検討の一助として社長、経営幹部への報告
内部監査体制の整備
パワハラの防止策を検討するため、内部監査の一環として職場での実態把握のために、「各部署での自主点検表の記入」「社員アンケート調査」「職場ヒアリング」等の仕組みづくりを行うことも有効になります。
社内ホットライン(内部通報制度)の設置
当事者にとっては、プライバシーの関係で自らが相談窓口に行けないこともあります。
当事者のプライバシー保護を兼ねて、被害を受けた社員が直接相談・通報できる社内ホットライン(内部通報制度)の設置も必要になります。
まとめ
政府はパワハラが社会的な問題になっている背景をうけて、今年の5月上旬、職場でのパワハラの防止策に取り組むことを企業に義務づける「労働施策総合推進法の改正案」を閣議決定し、今国会から審議が始まることになっています。
義務化の時期は早ければ大企業が2020年4月、中小企業が22年4月になる見込みです。
パワハラ問題は、人間関係や人間の“心(100倍の法則)”が根底にあることもあり、解決には時間のかかるテーマになります。
だからこそ、さまざまなレベル(管理職、職場、会社)での施策を粘り強く、長期的に実施していくことによって効果がでてくるのです。
TC坪根キャリアコンサティングOfficeでは、パワハラ含めたハラスメントをなくし、防止する各種施策のコンサルおよび教育研修が可能です。何か困りごとあればご相談ください。