テレワーク勤務での問題行為!リモートハラスメントの実情と起こさない対策とは
新型コロナウイルスの感染拡大防止のために在宅勤務・テレワークを導入する会社が増えてきて、その結果、テレワーク中にハラスメントにあったという話をよく聞くようになりました。
テレワーク勤務でのハラスメントは、リモートハラスメントと言われ、会社にとって早急に対応しなければいけない問題になっています。
前職で労務問題を扱っていた中高年危機脱出キャリアコンサルタントの坪根克朗が、リモートハラスメントの起こる原因、そして起こさないための対応策についてお話していきます。
リモートハラスメントとは
テレワークでのリモートハラスメントには、「パワーハラスメント(パワハラ)」「セクシャルハラスメント(セクハラ)」「モラルハラスメント(モラハラ)」の3種類があります。
リモートハラスメントは、他人の目が届きにくく、エスカレートしやすいという特徴があります。
リモートハラスメントの内容
3種類あるリモートハラスメントについて説明していきます。
パワハラ型のリモートハラスメント
パワハラは、職務上の地位など職場内の優位性を利用した嫌がらせです。
テレワークでの以下のような行為がパワハラになります。
- 特定の部下に仕事を与えない(指示をしない)
- 気に入らない部下をオンライン会議に呼ばない(グループメールから外す)
- 多数の社員をCCに入れたうえで、部下に人格的な非難を加えるメールを送信する
- 業務時間外のメールやチャットへの即回答をもとめる
セクハラ型のリモートハラスメント
テレワークでのセクハラは、「Zoomなどを利用したオンライン会議で性的な発言をする」ケースになります。
テレワークでの以下のような行為がセクハラになります。
- 容姿や体型について言及する
- 化粧の有無や服装について指摘する
- 1対1でのオンライン飲み会に誘う
- SNSでの個別のつながりを求める
- 業務に関係がない二人きりでのWeb会議、通話、チャットを強要する
モラハラ型のリモートハラスメント
モラハラは、倫理や道徳に反した嫌がらせのことになります。
モラハラに分類されるリモートハラスメントの典型例は、オンライン会議などでプライベートに関して批判的な発言をするケースです。
テレワークでは以下のような行為がモラハラになります。
- プライベートについて指摘・指導される
- 同居者(子どもなど)の声や生活音などについて不快感を示される
- 室内の様子を映すことが求められる
リモートハラスメントの特徴
オフィス勤務でのハラスメントに較べて、リモートハラスメントは何が違うのでしょうか。
職場で発覚しづらい
リモートハラスメントは職場で発覚しづらいことがあります。
パワハラの場合は、「わざと会議に呼ばかなかったのか」「それともたまたま呼びそこねたのか」といった差がわかりづらく、職場の同僚が見てもパワハラとは気づけないことがあります。
また、1対1のミーティングで、ハラスメントをおこされても、当事者以外はなかなか気づきにくくなります。
だれでも加害者になってしまう
リモートハラスメントの怖いところは、誰でもすぐに加害者になり得ることです。
上司が部下に行うだけなく、部下がテレワークに疎い上司を嘲笑するなどの行為もリモートハラスメントになります。
また、テレワークでは、オフィス勤務よりもコミュニケーションが不足しがちになります。
そのため親睦を深めようと親しみを込めて言ったつもりの冗談が相手に不快な思いをさせてしまい、リモートハラスメントとして訴えられることもあるのです。
リモートハラスメントが起こる原因
直接顔を合わせないテレワークで、なぜハラスメントが起きてしまうのでしょうか。
リモートハラスメントが起こる原因についてお話します。
仕事の進め方についてアンコンシャス・バイアスをもっている
アンコンシャス・バイアスとは、人が「無意識のうちに、決めつけてしまう偏った思考や偏見」のことを言います。
まず第1に、上司が、仕事の進め方についてこのアンコンシャス・バイアスをもってしまっていることがあります。
リモートハラスメントをおこし易いアンコンシャス・バイアスの例を紹介します。
部下は上司が管理しないとサボるものだ
テレワーク環境下では最も起こりうる思い込みです。そのせいで以下のような行動に出てしまいます。
- 自分が送ったメールに返信がないと電話で「仕事していますか」と聞いてしまう
- 自分が送ったメールが返信されるまでの時間によって部下を評価する
- 気に入らない部下のWebカメラを一日中オンにさせて過度に監視する
成果・結果だけでなく、部下の態度や業務プロセスも評価すべき
今までオフィス勤務で部下の態度や業務プロセスをみて評価してきた上司の中には「テレワークでも態度や業務プロセスの評価が大切」と考えてしまいがちです。
その結果「不必要なオンライン会議や電話によって部下の仕事の進捗状況を必要以上に管理してしまう」こともあります。
「報告(ホウ)・連絡(レン)・相談(ソウ)」は部下からするものだ
オフィス勤務では上司がすぐそばにいるため、部下からの「ホウ・レン・ソウ」もしやすい状況にあります。
ところが、テレワーク勤務ではリアルタイムでの「ホウ・レン・ソウ」が難しく、どうしても時間がかかってしまいます。
その結果、「ホウ・レン・ソウ」の遅れから業務上のトラブルが発生すると、上司が部下に対して「何をやっていたんだ!」と叱責してしまうこともあるのです。
テレワーク勤務による目に見えないストレス
第2に、テレワーク勤務では、上司にはさまざまな目に見えないストレスが発生し、そのストレスが影響して、リモートハラスメントを発生させる可能性があります。
ITリテラシーの世代間格差
若いデジタルネイティブ世代と違い、PCやオンラインに対して苦手意識の強い世代であれば、「初心者テレワーカー」として毎日が新しい知識との格闘になります。
コミュニケーションの取り方の世代間格差
上司が毎日顔を合わせて仕事をすることを望んでいるのに対し、部下が上司とのコミュニケーションを電話やメールで済ませたいと思っている世代であれば、なおさら世代間のギャップにストレスを感じることもあるでしょう。
オフィス勤務とは違う仕事の進め方
テレワークでの仕事の指示や確認は通常勤務とは違って思い通りにいかないことも出てきます。
今までは指示をすればその場で返事があり、業務の進捗もスムーズに確認できていたのが、メールではタイムラグが発生して、伝わったかどうか不安な気持ちでいる時間が増えることになります。
チャットなど既読表示機能があったとしても、「ちゃんと理解しているかどうか」を画面越しの部下の表情から、読み取ることができにくいです。
また、部下から資料の確認を依頼された場合、今までは「ご確認をお願いします」と手渡しされ、その場で目を通しながら質問を投げかけることもできました。
しかし、テレワークでは「(〇〇サーバー)-(××フォルダ名)-(△△ファイル)の確認をお願いします」になり、質問のやり取りも含めて余計な手間が増えることになります。
非言語コミュニケーションが無いことによるストレス
さらに、複数名が参加するオンライン会議では、聞く側が音声をミュートにしていたり、画面共有で顔が表示されないケースでは、相づちやリアクションがないなかで話し続けることにストレスを感じる、といった声も聞かれます。
また、通信状態が悪いために意思疎通がうまくいかず、「もう一度最初から話してください」などの無駄な会話も起こりがちで、こうしたことが日々のストレスになることもあります。
仕事とプライベートの境界線が曖昧
3番目としては、在宅勤務では仕事と日常生活の境界が曖昧になりやすいため、自宅にいることで気が緩み、オフィスでは意識して控えていた言動が出てしまったという場合もあります。
会社としてリモートハラスメントを起こさない対策
リモートハラスメントへの対応は、基本的には、オフィス勤務で行われるハラスメント行為と同様の対策を行う必要があります。
リモートハラスメントもパワハラ防止法(2020年6月施行)の対象です。
このパワハラ防止法を踏まえて、私のブログの中で会社が行うべき「パワハラの予防・解決策」について書いていますので、是非読んでください。
リモートハラスメントの実態の把握
オフィス勤務と違い、リモートハラスメントは、当事者だけの空間で起こることが多いため、会社側も把握しづらいところがあります。
そこで、リモートハラスメントの実態を把握するのに、社員(非正規含む)に対して、匿名性を担保したうえで、アンケートを実施する手もあります。
上司としてリモートハラスメントを起こさない対策
上司として、リモートハラスメントを起こさない対策は以下のようなものになります。
自分のアンコンシャス・バイアスに気づき、改善する
「自分が無意識の思い込みや偏見を持っている」ということを意識し、少しでもそれらを自分の中から排除していく努力が必要になります。
自分のアンコンシャス・バイアスを諫言してくれる同僚、部下をもつ
アンコンシャス・バイアスは、自分ではなかなか気がつきにくいものですから、自分の持つアンコンシャス・バイアスに気づき、諫言してくれる同僚や部下が必要になります。
自分の発言で、オンライン会議に参加している社員が「不安な顔」「泣きそうな顔」「目をそらす」といったことに気がついたら、「さっきの発言は酷いですよ」「〇〇の考え方はまずいですよ」と注意してくれるように、お願いしておくのです。
自分なりのマネジメントスタイルをもつ
十分な準備のないまま始まったテレワーク勤務でのマネジメント、「オンライン会議のやり方や頻度」「コミュニケーションの取り方」など、不慣れな分、難しいですよね。
職場は、仕事内容や構成する社員の価値観・考えによってそれぞれの雰囲気・特徴をもっています。
会社から提供されるテレワーク勤務での手引きやマニュアルを当てはめようとしてもなかなかうまくいきません。
結局は、テレワーク勤務でのあなたなりの職場にあったマネジメントスタイルを築いていく必要があると思います。
部下の仕事の評価を業務プロセスや意欲ではなく、「成果」で判断する
テレワーク勤務では部下の評価を業務プロセスや意欲で細かく管理することには限界があるということをまずは、知ってください。
そして「テレワークにすると部下は仕事をサボる」という性悪説ではなく、「サボれば成果が出ないから部下は仕事をするようになる」と部下を性善説で考えてください。
そして部下の仕事の評価を業務プロセスや意欲ではなく、「成果」で判断するように変えていくことが大切です。
自分から積極的に部下に対して「ホウ・レン・ソウ」を働き掛けていく
部下だって、「ホウ・レン・ソウ」をするタイミングで困っているかもしれません。
そのため、自分から積極的に部下に対して「ホウ・レン・ソウ」を働き掛けていってもいいのではないでしょうか。
以下のような試みを是非やってみてください。
- オンライン会議などでは冒頭に自らの業務状況を報告して、部下からの報告を促す
- 自分が取得した重要な情報をできるだけ早くメールやチャットで部下に連絡する
- 自分が相談を受けやすい時間帯を部下に提示しておく
など、できるだけオフィス勤務に近い「ホウ・レン・ソウ」がしやすい職場環境をつくるといいと思います。
テレワークにおける職場ルールを決める
テレワークをトラブルなく円滑に進めるためには、職場内で「自分たちにはどのようなテレワークが最適なのか」と、みんなで話し合うことを勧めます。
- 朝のミーティングの時は体調管理も含めて、ビデオをオン
- 質問はチャットでいつでもできるようにする。
- チャットを読んだら、とりあえずリアクションを入れる
- チャットで数回のやり取りを要するテーマであればWeb会議をつなぐ
リモートハラスメントの被害者にならない対策
ただでさえテレワークは公私の区別がつけにくく、上司・部下ともに気が緩みがちなものです。
テレワークも勤務中であり、業務時間内は節度のある行動を心がける必要があります。
そのためには、言動にプライベート感を出さないように気をつけることも大切です。
誰も見ていないからと言って適当な格好でリモートワークに臨むのはいいとは思いません。
オフィス勤務時と同様に、リモートハラスメントを誘発するような隙を見せないようにすることも重要です。
服装、音、Webカメラの場所に気を付ける
Webカメラにプライベートな部分が必要以上に映りこまないように注意するだけで、リモートハラスメントの大半(特にモラハラ)を防ぐことができます。
- 服装や身だしなみを整える(カジュアルすぎない服装にする)
- 仕事場所の背景に私生活に関するものを映さない
- 業務中、トイレなどで中座するときには画面を非表示にする
- テレビ会議や打ち合わせを行う場合、自分が発言するとき以外はミュートにして、必要以上の音声情報を与えない
- 業務中に同居家族の生活音(子どもの声など)が入る場合は上司に対して事前に事情を説明し、了承を得ておく
まとめ
コロナが落ち着いた後も、オフィス勤務とテレワークを併用する会社がほとんどになると思います。
そうなるリモートハラスメントのリスクは今後も出てきます。
リモートハラスメントの被害者も加害者として訴えられた人も「今後どうしたらいか」という悩みは深くなります。
そのような悩みを抱えている方は、リモート環境で相談のできる私の「中高年の危機脱出キャリア相談サービス」を利用してみませんか。