クレーム対応は怖くない!基本を押さえて上手な対応を目指す!
「取引先からクレームが来た!すぐ謝罪に行くように!」
上司から突然言われたあなた、ドキッとしますよね。
しかも、自分が担当している取引先ではあるものの、今回のミスは自分以外の人に対するもの。
こんな時、あなたは心からお客様に謝罪ができますか?
「なんで自分が謝罪しないといけないんだろう…」なんて、思っていませんか?
ここでは、顧客とのトラブル対応について悩むあなたへ、“毎日ココロをフルにするお手伝い!”ココロフルプランナーことマナー・プロトコール講師&国家資格キャリアコンサルタント@大川礼子が、クレーム対応の基本をお伝えいたします。
まずは基本!クレームの種類とは?
「え?クレーム??私、何のミスしたんだろう…」
あなたは、”クレーム”と聞くと、反射的に「苦情を言われる嫌なものだ」なんて思っていませんか?
クレーム(claim)とは本来「主張する、要求する、断言する」という意味であり、一方的に不平や不満をぶちまけることではありません。
それなのにクレームという言葉のインパクトが強くなりすぎて、対応するには勇気の要ることになってしまいましたね。
でも一言でクレームと言っても、「自社に非がある、正当な要求や主張」「責任の所在が曖昧な内容」「明らかに理不尽な内容」など、種類があるんですよ。
まずはクレームの種類から知ってくださいね。
タイプA:自社に非がある、正当な要求や主張
クレームの種類のひとつ目は、明らかに自社に非がある場合。
自社で取り扱う製品の顧客が、個人であっても企業であっても、そこには利益が絡んでいるからこそ、片方のミスでもう片方が不利益を被ることはあってはなりません。
このパターンの場合、最初から代金の返金以外に金銭の要求が出てくることはほとんどありません。
タイプB:責任の所在が曖昧な内容
そして2つ目は、責任の所在が曖昧な内容。
決して企業側に責任があるわけではないものの、強く言えば何とかしてくれるのではないか、と不満や不安をダイレクトに伝えてくるパターン。
このケースは、昨今特に増えていると言われているので、あなたが「クレーム」と聞いて真っ先に思い浮かべるのは、このタイプかもしれませんね。
企業など「自分より弱い立場」だと考えている相手に対して、自分の思う通りの対応を求め、要求を叶えようとするものです。
タイプC:明らかに理不尽な内容
最後は、明らかに理不尽な要求をしてくるパターン。
この手のパターンはクレームと言うより、犯罪に近いもの。
ありもしないミスを演出して恫喝まがいの言動で威圧してきたり、こちらの言葉尻を捉えて金銭を要求したりするもの。
自分から社名の書いた車の前に飛び出してきて、法外な病院代金を請求する”当たり屋”など。
このタイプの目的は、少しでもこちらが隙を見せると、細かいところをついて精神的にこちらを追い詰めます。
悪質クレーマーだと判断した時の対応については、こちらの記事に詳しく書いているので、ぜひご覧くださいね。
【カスタマーハラスメント】悪質クレーマーから社員を守る!会社がやるべき対応策5選
対応する時の基本の流れ
「いつもメンテナンスに来てくれるAさん、うちの担当から変えてほしいんだけど。」
取引先から突然こう言われたら、あなたはどう返答しますか?
「はい、では早速担当を変更します!」なんて、その場しのぎの回答をしていませんか?
クレーム対応は、相手が企業でも個人のお客さまでも同じ流れですので、ここでは基本の流れをひとつずつお伝えしていきますね。
1.まずは謝罪
クレームが起きて最初に行うこと、それは謝罪です。
「自分が悪いわけではないのに、謝らないといけないの…?」
取引先の担当責任者は自分であるとはいえ、今回の指摘はメンテナンス担当の社員に対しての内容。
あなたは、自分が謝罪に向かうことに納得がいかないかもしれませんね。
でも、お客様にとってはあなたが「企業の代表者」であり、あなたの企業と接点を持ったことで何かしらの不快な思いをしたのは事実です。
初期対応で、あなたのこの不満がお客様に伝わったり、メンテナンス社員本人に謝罪させたりすると、あなた自身がこのお客様を大切に思っていない、と受け取られてしまいますよ。
「でも、相手の言い分が本当かわからないのに、謝罪してはいけないって聞いたことがあるけど…」
確かに、そうですよね。
自社に非があるかがこの時点では不明だったとしても、「不快な思いをさせた」「指摘する手間を取らせた」ということは事実です。
その事実に限定して最初に謝罪するというのは、とても大切なことなんですよ。
また「担当者が何かしましたか?」といきなり質問して事実を確認するより、「申し訳ございません、担当者が何かしましたか?」と伝えると、相手に伝わる印象は違うと思いませんか?
クッション言葉を挟むことで、取引先の意見をあなた自身がきちんと受け止めていることが伝わるんです。
電話でご指摘を受けた場合
相手が個人のお客様など、電話でご指摘を受けた場合、最初の一言で、先にお伝えしたタイプA~Cのどのクレームであるかを判断するのは容易ではありません。
タイプCのような悪質クレーマーであった場合はもちろん、どのタイプであっても、最初に謝罪をしなかったことで「気持ちをないがしろにされた!」と、あなた自身の対応を責められることもあります。
電話の場合は声だけで判断されますが、その声にはあなたの態度が反映されます。
お客様を疑う姿勢ではなく、「あなたの話したことを聴いている」という姿勢で、まずはお客様の話を受け止め、ご指摘の手間を取らせた事実や不快な思いをさせた事実に対して謝罪してくださいね。
「担当者の変更をご希望ですね。ご指摘のお手間を取らせてしまい、申し訳ございません。」
「この度はご不快な思いをさせてしまい、申し訳ございません。」
2.相手の話を聴く
謝罪をした後、次に行うのは「相手の話を聴くこと」です。
でも、単に話を聴くだけ、というわけではありません。
ここでいう話を聴くとは、「傾聴する」ということです。
傾聴とは、主にカウンセリングなどで使われていますが、最近では一般の職場や家庭でも取り入れられているコミュニケーション手法なので、聞いたことがあるかもしれませんね。
「でも、傾聴と言われても、どうやって話を聞けばいいのかよくわからない…」
確かに、普段から意識していないと、どうやって話を聴けばよいかわかりませんよね。
傾聴とは「相手の話に耳を傾けて聴く」ということですが、具体的にとる行動は主に次の3つです。
- 相手の話を積極的に聴く姿勢
具体的な行動:相手の目を見て話にあいづちや頷きを行う、復唱する、質問する、など
- 話している内容の批判や否定をせず、肯定的に理解する態度
具体的な行動:話の途中で反論しない、言葉を遮らない、など
- まるで自分が体験したかのように、相手の話に共感した言動
具体的な行動:相手の話に合わせた表情をする、相手の感情を代弁する、など
人は誰でも、感情や言葉を正面から受け止めてもらえると、話している間に興奮していた感情も落ち着き、自分の気持ちを整理することができます。
あくまでもあなたは「聞き役」であることに徹して、一言一句漏らさないよう集中してくださいね。
(質問する)「もう少し詳しくお話をお聞かせいただけませんか?」
(復唱する)「メンテナンス社員のAを、御社の担当からはずしてほしい、ということですね?」
(共感する)「それは…頼りないと感じますよね…」
3.事実を確認する
相手の気持ちが落ち着いてきたら、次に行うことは事実確認です。
「事実確認って、ある程度話してもらったからもういいんじゃないの?」
いえいえ、今の段階では、あなたは「お客様の興奮した感情を鎮めた」というだけで、原因の究明には至っていないんです。
事実確認も傾聴の姿勢を大切にしながら、先ほどよりも詳しい状況を話せてもらえるよう、あなたからも積極的に質問してお客様に話してもらいましょう。
これにより、「いつ、どのような状況で何が起こったのか?」「何が原因で不満(不安)を感じているのか?」ということが、あなた自身も正しく理解できますよね。
事実を確認し、クレームの原因や「相手が何を望んでいるのか」がわかると、対応の着地点が見えてきます。
この時に、お客様の言ったことや自分の対応についてメモを取ることも忘れないでくださいね。
「先日のメンテナンスの際に、Aが工具を広げたまま立ち去り、15分も放置していたんですね?」
「〇月の訪問日に、Aの代わりに来たBの手際や対応が良く、Aで大丈夫かと不安に思われたんですね?」
即座に対応を判断せず持ち帰る場合
またあなたの権限ですぐに判断できないものは、一度自社に持ち帰って検討する、あるいは電話であれば折り返しの対応をとることになりますが、回答を保留とする時に気をつけたいのは、次の3点です。
- 曖昧な回答をしない
例)×「なるべく早くご連絡します。」(期限が曖昧)
- 自分で勝手に判断したり、推測で回答したりしない
例)×「恐らく大丈夫だと思います。」
- 言い訳や反論をしない
例)×「まさかAに限って、そのようなことをするとは思えませんが…。」
4.説明と、改善策の提示
「謝罪もしたし、話も具体的に聴いたから、あとはAさんと上司の対応待ちだ。」なんて思っていませんか?
クレーム対応は、ここから一気に解決に向けて動かなければなりません。
メンテナンス担当のAさんからも当日の状況を確認する、自分の上司とAさんの直属の上司に報告する、今回の対応と、同じことが起きないための改善策を考える…。
これらを迅速に行った後、お客様に原因説明と、対応や改善策を提示します。
またこれまでの経緯を時系列にまとめ、メモを活用しながら詳細に書き記し社内で共有することも忘れずに行ってくださいね。
お客様の要望に副えない場合
「上司から、担当はAさんから変更できないって回答が来た…」
直接お客様と対応したあなたからすれば、お客様の希望に副えない回答は、気が重たくなりますよね。
でもどうしてもお客様の要望に副えない場合、以下の点に気を付けます。
- 対応できない理由が自社の一方的な理由ではないか?
- 改善策はお客様の不安を長期にわたり解消できるものか。
- 代替案は、お客様の不安に寄り添い、かつ期待以上のものか。
また説明や改善策を提示する際、あなたに求められるのは「誠実な態度」「丁寧な対応」です。
要望に副える場合はもちろん、企業として要望に副えないという回答であればなおさらのこと。
この時の対応が不誠実であったり、ぞんざいであったりすれば、最初の謝罪~事実確認までの対応がどれほど良かったとしても、あなたや企業の信頼は回復できないと思ってくださいね。
(説明)「この度、ご指摘いただいた内容について、当日の状況を本人より詳しく確認いたしました。当日は~~~~とのことでした。」
(要因)「今回の件は、私どもの教育が至らず本人の工具取扱いに対する認識の甘さが大きな要因です。以後、同様のことが起こらないよう、社員教育を徹底し再発防止に努めます。」
(対応)「今回ご要望の担当者変更につきまして、大変申し訳ございませんがご要望に副いかねます。その代わり、今年度末までのメンテナンスにつきまして、兼ねてよりご検討くださっていたオプションの“〇〇プラン”を併せてご提供させていただきたく存じます。なお、このプランは2名担当制ですので、期間中はAに加えてBも同行いたします。」
5.改めての謝罪と感謝
「良かった、お客様がご納得くださった…」
あなたの対応が功を奏して、お客様のご理解が得られたんですね。
最後に行うのは、改めての謝罪と感謝を伝えること、です。
「感謝って代替案を受け入れてくれたことに対する感謝…?」
そうですね、もちろんそれもあります。
ただここでの感謝は、それ以上に「自分たちが気付かなかった問題点を、時間と労力をかけてご指摘くださったこと」に対するものです。
クレーム対応の軸は、相手の気持ちや立場に寄り添った共感力と、自分達では気付かない欠点を指摘くださったことへの感謝の心です。
その軸を「誠意ある態度」「迅速な処理」「丁寧な対応」で表現することで、初めてお客様へその気持ちが伝わります。
クレームは、受ける側だけでなく、伝える側もとても労力を使うもの。
そう思うと、お客様からのご指摘は「企業を思っての行動」だと受け止められるようになりますよね。
対応する時に忘れてはならないこと
ここまでの内容で、クレーム対応の流れは理解できましたか?
「でも、ケースによって対応が違うし、やっぱり難しそう…」
そんなあなたには、クレーム対応の時に忘れてはならない2つのことをお伝えしますね。
それは「相手の気持ちに寄り添うこと」そして「あなた自身を信頼してもらうこと」です。
相手の気持ちに寄り添うこと
まず一つ目の忘れてはならないこと、それは「相手の気持ちに寄り添うこと」です。
人は、信頼する企業の商品やサービスが自分の期待値を下回った時に、不満を覚えます。
ですが、グッドマンの法則(顧客ロイヤルティ協会・佐藤知恭氏)によると、不満があっても実際に企業に伝えるのはたったの4%と言われています。
ちょうど先日、私自身がこの4%の立場になったので、少し聞いてください。
ここ数年、週末の早朝に、30分~1時間ほど散歩に出掛けています。
早朝散歩の楽しみは、帰りにファストフードやコンビニ、惣菜屋さんやパン屋さんなど、色んなお店の朝食をテイクアウトで購入し、自宅でゆっくり食べること。
先日、某店で購入した商品の中に、卵の殻が入っていました。
口に入れた途端に気付いたので、幸いケガもなく済んだのですが、お店に伝えた方が良いのかどうか、とても悩みました。
というのも、「面倒くさいと思われたらどうしよう…」「別にケガもなかったし…」「こういう時はお店とお客様センターのどっちに電話するのかな…?」と思考も手間もかかります。
でも、ファミリー層も利用するお店ですから、同じことが起こってどこかのお子さんがケガをするなど被害が出ては大変です。
それに、個人的にもこのお店はなくならないでほしいと思っているので、30分ほど迷った挙句、レシートに書いてあるお店の番号を確認し、電話を掛けました。
あなたがもしこの時の私の立場で、勇気を出してお店に指摘をしたのに「でも、ケガはなかったんですよね?」とお店の人に言われたら、どう感じますか?
実際には、対応した方がとても丁寧、かつ本当に申し訳なさそうな声で「お怪我がなくて、何よりです。」と言ってくださり、こちらも恐縮しました。
クレームに対応する時には、お客様から指摘された事実の背景にある日常の楽しみや期待感を想像して共感し、その気持ちに寄り添うことを忘れないでくださいね。
”自分自身”を信頼してもらえるために
クレーム対応で忘れてはならないことの2つ目は、「あなた自身を信頼してもらうこと」すなわち「あなたのファンを作ること」です。
最終的にクレーム対応がうまくいくかどうか、それは「あなた自身」にかかっているんですよ。
「でも、どうせ要望に副えないんだったら、自分のファンなんてできないんじゃないの…?」
お客様の要望を直接聴いて、お客様の気持ちに寄り添っているつもりなのに、要望に副えなかった時はあなた自身も辛いですよね。
もちろん、要望に副った回答ができるのが一番良いのかもしれません。
でもどこまで要望を叶えられるかは、ケースにより様々です。
そんな時に自分自身を信頼してもらえるかどうか、それは「どれだけ誠実か」で決まります。
「誠実って、相手の言うことを尊重することじゃないの?」と思うかもしれませんね。
誠実であるとは、出来ないことを安請け合いしたり、相手の言いなりになって怒りを抑えたりすることではありません。
またその場しのぎに「今回だけ」「御社だけ特別に」と言っていれば、同じ対応を受けていない他のお客様から新たなクレームが発生し、あなたの信頼はなくなってしまいます。
「企業の代表」として芯の通った対応を、どのお客様にも公平かつ丁寧に接することができること、これが誠実であると私は考えます。
「自社のお客様全員に同じことを提示できるか」を基準にすると、お客様に対しても、自社に対しても誠実な対応がとれるようになり、あなた自身に対する信頼は増していくでしょう。
まとめ
いかがでしたか?
クレームは起きないに越したことはありませんが、お客様の数が増えれば必然的にクレームも増えます。
怖がらずにお客様の感情をしっかりと受け止めて寄り添い、基本の流れに副って対応する事で、あなたのクレーム対応はきっと上手になりますよ。
あなたの人生が、より良い人間関係に基づいて、充実した毎日を過ごせるよう心から願っています。