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【カスタマーハラスメント】悪質クレーマーから社員を守る!会社がやるべき対応策5選

坪根 克朗
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坪根 克朗
国家資格キャリアコンサルタント。問題社員解決キャリアコンサルタント。ソフトウェア開発、システムエンジニアを経て、人事部(労務管理・人材育成・キャリア相談)業務に従事。長年、問題社員(ローパフォーマー社員含む)の再生・戦力化を目的とした問題社員解決の専門として活動中。高知県出身、広島県在住。【好き】広島カープ、WoWoW海外ドラマ、坂本龍馬、広島風お好み焼きなど

顧客や取引先からの悪質なクレーム「カスタマーハラスメント(カスハラ)」で、2018年までの10年間で自殺した人、何人いるか知っていますか?

なんと 24名! そして、カスハラを原因として労災認定された方は、78名もいるのです。

これらの人数は、氷山の一角で、全国繊維化学食品流通サービス一般労働組合同盟の2017年の調査では、販売・レジ業務・クレーム対応等の接客業に従事する労働者のうち「75%」の方々が、「カスハラ(悪質クレーマー)に遭遇したことがあり、苦しんだ経験があった」と回答しています。

この問題、経営者にとって喫緊の課題にも関わらず、担当者に丸投げして「良きに計らえ」となんかやっていませんか!?

この問題は、担当者が取り組むテーマではなく、経営者が責任をもって会社が一丸となって取り組んでいかなければいけないテーマなのです。

そこで、前職において労務問題のエキスパートとしてハラスメント問題に対応してきた坪根 克朗が、会社がやるべき悪質クレーマー対策についてお話していきます。

カスハラはパワハラ防止法で解決できるのか

カスハラ=悪質クレーマー

カスハラとは、「カスタマーハラスメント」の略であり、主に顧客や取引先からの著しい迷惑行為を指します。別の表現を使うと、「悪質クレーマー」とも言われます。

以下の行為は、すべてカスハラに該当します。

  • 従業員に対する暴言や土下座の強要
  • ネットへの誹謗中傷の書き込み
  • 顧客による過剰で悪質なクレームや迷惑行為
  • 発注先が発注元に大幅値引きを要求するなど取引上の優位性を利用した行為

カスハラもパワハラ防止法の対象

カスハラは労働者に精神的苦痛を与え、場合によっては人権侵害にも値する悪質な行為であることから、2020年6月から施行される「通称:パワハラ防止法」において取り扱われることになっています。

パワハラ防止法については、2019年11月に「【パワハラ防止法の簡単要約】罰則や会社の責務と予防策を解説!としてブログを書いていますので、参考にしてください。

カスハラへの具体的な対応は、パワハラ対策同様、政府による指針の中で以下のように示されています。

  • 悪質クレームは「職場におけるパワハラ」と同等の労務問題として対処すること
  • カスハラ被害に遭った時に、相談できる窓口を社内に設置すること
  • カスハラ被害に遭った本人への配慮(希望があれば配置転換等)
  • カスハラを行った顧客や会社に対応改善を促すこと

正直、私は、上記で示されるパワハラ防止法での対応では、悪質クレーマーを抑え込みことなんてできないと思います。

それで、悪質クレーマー対策をお話する前に、悪質クレーマーの定義から始めたいと思います。

悪質クレーマーとは

まず悪質クレームとは何なでしょうか。

悪質クレームを考える時、難しいところは、「悪質」の判断の難しさにあります。

「悪質クレーム防止法」のような法律があれば、法律中で明確な悪質クレームの定義ができるのですが、無い以上、自分たちで定義しなければいけません。

悪質クレーマーの定義

悪質クレーム対応で苦労している業界団体が悪質クレームの判断基準を作り、団体を構成する企業がその基準を共有することによって、社会的事実としての慣習法ルールを作り、企業が自発的・積極的に悪質クレームに対応することをし易くしています。

そこで、流通業やサービス業などの労働者が加盟する日本最大の産業別労働組合「UAゼンセン」が作った独自の「悪質クレームの定義」は以下のようなものです。

悪質クレームとは「社会常識を大きく超える迷惑な要求者による要求であり、その要求内容または要求態度が社会通念に照らして著しく不相当であるものをいう」 とされています。

悪質クレームを常時行う人を「悪質クレーマー」と定義します。

担当者が悪質クレーマー対応に苦しむ理由

会社では必ず悪質クレーマーに対応する人を決めます。大体が、経営者からの信頼が厚く、コミュニケーション能力があって、メンタルが強そうで、機転が利く人を選びます。

しかし、悪質クレーマーを対応していくと担当者は多大なストレスを感じ、悩み・苦しみます。なぜ何でしょうか。

関係をもってしまっている

仮にあなたが、通りがかりの人に言いがかりをつけられて、罵声を浴びせられたらどうします。

逃げ出すか、あるいは警察に駆け込むかもしれません。ただ、その場から逃げだせば、嫌な思いが残ったとしても時間がたてば忘れることができますよね。

これに対して、悪意クレーマーの場合は、お客さまに品物やサービスを買ってもらって、対価としてお金をもらっているというつながりの上で、悪質クレーマーの対応をしたら、名前まで覚えられてしまいます。

このような関係が今後も続くことが、担当者の苦しみの一つになります。

顧客第一主義の弊害

2000年前後に欧米から“顧客満足度”という言葉が浸透してきて、「クレームは会社を成長される貴重なご意見」と言った考えも持つ会社が増え、そのような教育が進められました。

その結果顧客第一主義は、顧客至上主義に陥るリスクを内包しています。

「お金をいただいているので、何はともあれ、お客様が大事」というスタンスでは、いかなる不当な要求に対しても曖昧な態度でしか接するしかできなくなっているのではないでしょうか。

担当である自分がうまく解決できないこと

悪質クレーマーが担当者を追い詰めるのは、悪質クレーマーからの罵声ではなく、会社から「うまく解決しなさい」と言われているのに、「できないこと」が担当者を苦しめているのです。

そして、担当者が恐れているのは、対応に失敗した時の社内における自分の立場というものが非常に気になっているのです。

悪質クレーマーへの会社の対応策5選

悪質クレーマーへの会社の対策は、「顧客」という言葉に従うのではなく、立ち止まって「わが社の顧客とは誰なのか」をしっかり考えることから始める必要があります。

その上で悪質クレーマーに対して、全社一丸となって、毅然と向き合い、担当者を孤独にさせない対応策を進めていく必要があります。

【悪質クレーマー対応策①】経営者の意識を変える

悪質クレーマー問題は、社員のモチベーション、会社の業績に影響するので、経営者の意識と率先した行動が重要になります。

経営者は、悪質クレーマーに断固たる態度で臨む

経営者が、クレーマーに対して断固たる姿勢で臨むとは、「悪質クレーマーなら顧客として認めない」という覚悟になります。

経営者が悪質クレーマー対策のリーダーシップをとる

リーダーシップをとるということは、経営者自らが悪質クレーマーに対峙して、交渉の前面に出るという意味ではなく、悪質クレーマーの担当者を後方からしっかりバックアップして、会社全体の取組にすることです。

【悪質クレーマー対応策②】要求を断る「仕組み」をつくる

悪質クレーマー対策を全社的に根付かせるためには、要求を断る「仕組み」を体系的につくり、会社全体で共有する必要があります。

悪質クレーマーの定義の統一

会社で使う悪質クレーマーの定義は、抽象的な表現ではなく「悪質クレーマーの行動」を基準に作ることにより、誰でもが理解できやすく、判断しやすくなります。以下のようなものになります。

  • 事実が不明な段階で金品を要求してくる
  • 電話で会社のことを「お前」と言う
  • 一方的に面談の日時、場所を指定してくる
  • 毎日電話してくる

悪質クレーマー対応には録音が有効

悪質クレーマーの不規則発言によって、プレッシャーをかけられた状態では、誰でもがなかなか冷静でかつ適切な判断をすることはできません。

このような時、「会社の方針で、お客様のお声を上司に正確に伝えるために、録音させていただきます。また必要なら差し上げます」とか言って、録音を開始すればいいのです。

人は自分の声が録音されていると認識すると「下手なことは言えない」と発言内容に気をつけるようになります。

録音をすることによって、相手の不規則発言を抑止することができますから、あなたは冷静さを取り戻して、悪質クレーマーと対峙することができるようになります。

交渉はすべて書面で行うようにもっていく

悪質クレーマーとの間で、「事実や要求事項の確認」をしていくには、書面で行うようにします。

ストレートに書面でやりましょうと言うと相手も嫌がりますから、使いたい文言は、「責任ある回答」になります。

例えば、「当社のルールとして、責任ある回答をさせていただく場合は書面にて対応しておりますので、ご了承ください」といった感じです。

【悪質クレーマー対応策③】対応の基本ノウハウの体系化

悪質クレーマー対応情報の整理と共有

悪質クレーマー対応で、まずやらなければいけないことは、悪質クレーマー対応情報を整理、蓄積して社内で共有することです。

整理する情報

整理する情報には、「日時」「手段」「内容」「対応」を時系列で記述します。以下が、サンプルになります。

悪質クレーマー対応の鉄則は、「事実確認」

クレーマー対応の鉄則は、事実関係の確認から始める必要があります。

「何がいつ、どのように発生したか」を確認しなければ対応のしようがありません。

上記の例でも事実関係を重視する対応をとっていまよね。

悪質クレーマーの「要求内容」をあいまいにしてはいけない

悪質クレーマーは、意図的にあいまいな要求をして、会社の出方をみます。

もし会社が優柔不断な行動をとるとドンドンつけこんできます。

そのためには、「要求内容」を確定する必要があります。ここでも書面で求めるやり方が一番です。

もし、悪質クレーマーが興奮して書面で出すことも嫌がるなら、「こちらとしては要望を正確に把握したいだけです。

それに応じていただけなければ、対応しかねます」といって交渉と打ち切ってしまえばいいのです。

電話を早く終わらせる方法

悪質クレーマーからは電話が頻繁にかかってきます。嫌ですよね~

電話を早く終らせる対応策は以下のようなものになります。

執拗な面談要求の断り方

悪質クレーマーは、必ず「すぐ自宅に来い」かまたは会社におしかけてきます。凄いストレスですよね。執拗な面談要求に対しての対応策をお教えします。

【悪質クレーマー対応策④】対応の応用ノウハウの体系化

相手を冷静にさせる方法

悪質クレーマーも不規則発言などの繰り返しによって、熱くなっています。こんな時は「実体のない謝罪」(我々にとって心にもない謝罪)をすることによって、相手を冷静にさせることができます。

以下は、謝罪をしたからと言って、直ちに事実を認めたことにならない言い回しです。

  • 大切な〇〇様に不愉快な思いをさせて申し訳ありませんでした
  • ○○様には何回もご連絡をいただくことになり申し訳ありませんでした
  • ○○様へのご連絡が遅くなり申し訳ありませんでした

いかがです。いずれも意味があるようでない謝罪ですよね。

ここでのポイントは謝罪の言葉の中に、相手の名前をいれておくことです。悪質クレーマーは自尊心が高い人が多いので、「自分は大切にされている」という自尊心をくすぐることによって、相手のトーンも下がってくるのです。

悪質クレーマーに解決策を提示させて譲歩を引き出す

悪質クレーマーは好き勝手な要求をしてきます。

そんな時担当者は、会社と相手の間の意見の食い違いにために苦労することはよくあります。

そんな時は、相手といっしょに解決策を考えるという手もあります。

流れてとして、以下のようになります。

  • まずは、「○○様のご要求にはまったく応じられないと会社は言っています」と全否定
  • 次に、「私も困っています。私もサラリーマンで会社の意向に逆らうことはできません。双方にとって受け入れやすい解決策はないですかね?」

もし、相手から解決に向けての譲歩案がでてきたら、解決へのきっかけが見えてきます。

悪質クレーマーからの「訴えてやる」は、問題解決のチャンス

悪質クレーマーから、「訴えてやる」と言われたら、交渉を打ち切ることのできるチャンスと捉えてください。

悪質クレーマーは、「訴えてやる」と言いつつも訴えないのが特徴です。

なぜなら、訴訟になれば、悪質クレーマーは「自分の要求の根拠を法律に基づいて、主張しかつ具体的な証拠を提示」しなければいけないのです。

負ける可能性が高いのに、訴えることはまずしないと思っています。

ただ、もし訴えられたら、弁護士をたてて、粛々と対応すればいいのです。

【悪質クレーマー対応策⑤】ケース別の留意事項

以下悪質クレーマーと対峙する場面(ケース)ごとの留意事項をお話していきます。

悪質クレーマーからの「上司を出せ」と言われた場合

一度、上司が出てしまうと、それ以降の対応は上司がしなければいけません。

このような場合は、「担当者は自分であって上司ではない」ことを言いきり、上司は相談相手として置いておくのです。

悪質クレーマーから損害賠償を要求された場合

悪質クレーマーから具体的な根拠のない損害賠償の請求に応じてはいけません。

具体的な根拠を示してもらう必要があります。

また、賠償金を支払うことになったにしても「領収書などの金額を証明する証拠」を必ずもらってください。

悪質クレーマーから慰謝料を要求された場合

慰謝料とは、ある行為によって受けた精神的苦痛を金銭的に評価したものです。

そのため、悪質クレーマーが慰謝料を請求するには、以下のようなプロセスを踏んで具体的に説明する必要があります。

したがって、会社はそれを踏まえたうえで、対応していけばいいのです。

ただ、残念ながら慰謝料を払う必要があるなら、弁護士に相談して判例での「慰謝料の相場」を知ったうえで対応する必要があります。

慰謝料を払うプロセス
  1. 会社としての何らかのミスがあったこと
  2. 会社のミスで精神的な苦痛をうけたこと
  3. 精神的な苦痛を金銭的に評価したこと
  4. 何をもって慰謝料を請求しているかを書面で提示すること

悪質クレーマーから強制的に一筆かかされ、署名させられた場合

悪質クレーマーによって、強制的に一筆かかされ、署名した場合でもその署名に至るプロセスに問題あれば、書面の記載のある内容について争うことはできます。

ただ、急ぎますので、弁護士に相談して、当日か翌日には意見書を出す必要があります。

悪質クレーマーにSNSで悪評を書き込まれた場合

悪質クレーマーにSNS上で悪評を書き込まれた時は、相手意見に反論するコメントを載せるべきではありません。

SNS上での議論することは会社の不利になります。

書くとしたら、「ご不快を与えたようで申し訳ありません。弊社としても事実関係を確認させていただきたいと考えています。つきましては、具体的な内容について直接連絡をいただけないでしょうか」と会社は誠実に対応していることをアッピールして、あえて反論をせず放置しておくことが一番になります。

まとめ

今後の社会において、「過大なサービスの向上への期待」が“普通の人”を悪質クレーマーにさせてしまうという話を、最近よく聞きます。

そして、SNSの普及にあいまって残念ながら、悪質クレーマーなどのカスハラは今後も増えていくでしょう。

この問題は、担当者だけではなく、会社の生産性を下げ、業績も落ちていくので会社も壊してしまいます。

今回は、悪質クレーマー対応の基本的なお話をしました。ただ実際は、悪質クレーマーとの対応問答集などを含めた担当者向けの対応マニュアルも必要になります。

悪質クレーマー問題を予防したいとお考えの経営者のみなさん、TC坪根キャリアコンサルティングOfficeまで相談ください。

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坪根 克朗
国家資格キャリアコンサルタント。問題社員解決キャリアコンサルタント。ソフトウェア開発、システムエンジニアを経て、人事部(労務管理・人材育成・キャリア相談)業務に従事。長年、問題社員(ローパフォーマー社員含む)の再生・戦力化を目的とした問題社員解決の専門として活動中。高知県出身、広島県在住。【好き】広島カープ、WoWoW海外ドラマ、坂本龍馬、広島風お好み焼きなど










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