介護離職の女性の実態や後悔は?義母認知症で仕事、介護保険をどうする?
介護は大変と聞きながらも、前もって準備できるものではありません。高齢の家族と同居、なんか最近おかしいかなぁ…と思いながらも日常の忙しさに紛れなんとなく過ぎていきます。
でも、ある日、義母が認知症に…会社はどうしよう、辞めたほうがいい…?
正に私がそうでした。
突然、義母が認知症と診断。
それまでの私の生活は子育ても落ち着き、“ワークライフバランス”なんて私には全く当てはまらず、ワーク中心の生活をしていました。
今までのような働き方はできない、折角ここまで頑張ってきたのに、定年まで頑張りたかったのに…辞める、転職、パート、後任は…と様々なことが頭を巡りました。
こんな状況!! あなただったら、仕事はどうしますか?
介護離職の女性の実態、介護保険や仕事を辞めてしまった場合の後悔など、キャリアコンサルタント@永居まき子が実体験をもとにお伝えします。
介護離職の実態は?
政府は、介護離職ゼロを掲げ、介護施設の整備や在宅介護の負担軽減など仕事と介護が両立できる社会づくりに力を入れています。
では、実態はどうのようになっているのでしょうか。
「平成29年就業構造基本統計調査」(以下統計調査という)によると、介護・看護を理由に離職した人は9万9千人、5年前は10万1千人とほぼ横ばいになっています。介護離職をした9万9千人のうち女性が約8割を占めています。
これは、主たる生計維持者である男性より収入の少ない女性が、仕事を辞め介護をする傾向にあるように思われます。
介護離職に後悔は?
では、会社を辞めた女性は、その選択に後悔はなかったのでしょうか。
「仕事と介護の両立に関するアンケート調査(2012年)」(以下アンケート調査という)によると、介護離職をした女性の約6割が『就業継続』の意思がありました。
女性の介護者の年代は40代・50代が最も多く、その年代で離職をすると収入は激減、子供がいる場合は、進学費用など教育費が必要なのは目に見えて分かります。
介護期間の平均は4年11ヶ月と言われています。
介護が終わり再就職を考えるときは、5歳年齢を重ねていることになり厳しい現実が想像できます。
介護離職後の精神面・肉体面・経済面の負担
また、アンケート調査によると、介護離職者男女1,000人のうち、離職後の変化として精神面・肉体面・経済面の負担が増したと思った人は、精神面は約65%、肉体面は約57%、経済面では75%にもなっています。
目の当たりにする介護状況、理解できない認知症の行動…経験のない事象が次々と起こり、自宅で介護するには時間が必要だと思い「会社を辞めて面倒をみるしかない」とか、具体的な介護費用も分からず「介護サービスは費用がかかるから、自宅で面倒をみる」と、辞めることを選択してしまうことがあります。
アンケート調査のとおり、会社を辞めても介護の負担は軽減されることはなく、特に経済面では大きな負担となります。
介護に携わるため会社を辞めたのに、介護時間が増えたことに比例し介護に関する負担が増え、後悔に繋がることになります。
介護保険、介護休業制度ってなに?
仕事を辞めずに介護との両立の話をする前に、介護に関する色んな言葉を耳にすることがあると思います。
介護保険って聞いたことはあるけど、ケアプランって、介護休業って…、少しの予備知識として幾つかの用語を簡単に紹介します。
介護保険
高齢になり寝たきり認知症など要介護状態になったとき、家族の精神的・肉体的・経済的な負担を軽減し、社会全体で支えるために介護保険制度が作られました。
要介護状態になった場合、その介護状態により様々な介護サービスを受けることができ、利用したサービスの料金は1割(原則)負担となります。
健康保険に例えると、病気になり病院にいった場合、医療費は全額払わずに個人負担分3割だけ支払いますね。
それと同様、介護保険適用範囲内の介護サービスを受けた場合、利用料のうち1割(原則)だけ支払うことになります。
介護休業
仕事と介護の両立のために利用できる制度があり、介護休業法もそのために制定されたものです。
介護休業法には「介護休業」「介護のための所定労働時間の短縮」「介護のための所定外労働時間の免除」等の制度があります。
その中の「介護休業」は、要介護家族1名につき通算93日まで3回を上限として取得できる休暇のことです。
介護が必要となったとき、即辞めることを決断しないために、実際に介護に携わる施行期間として、この制度を利用することをお薦めします。
地域包括支援センター
地域包括支援センターは各市町村に設置されており、「介護予防ケアマネジメント」「総合相談」など、介護・保健・福祉の専門スタッフにより地域の高齢者を総合的に支援する事業を実施しています。
離れて暮らす親について家族が相談する場合は、支援対象者となる親が住んでいる市町村の地域包括支援センターとなります。
ケアマネージャー
ケアマネージャーは介護支援専門員といわれ、介護保険に関するスペシャリスト、プロです。
要介護者が介護保険サービスを受けられるように、ケアプランを作成したりやサービス事業者との調整を行います。
介護サービスを利用する場合、ケアマネージャーに全て相談し進めますので、介護サービスには不可欠の存在、要だと思ってくださいね。
ケアプラン
要介護者をどのように介護するかをまとめた計画書です。
ケアマネージャーが、家族と話し合いながらこの計画書を作成し、計画書に基づき様々な介護サービスを受けることになります。
仕事を辞めずに介護はどのように続けられるのか?
では、実際に家族が要介護状態となったとき、仕事を辞めずに続けるためにはどうしたらいいのでしょうか。
私の場合、義母が要介護3・認知症となりました。
その際、具体的にとった行動を含め紹介しますね。
【仕事と介護の両立法①】自分自身の仕事に対する思いを整理
先ずは、今までどんな思いで仕事に取り組み、どんなところに遣り甲斐を感じてきたか、仕事に対する自分の思いに、正直に向き合うことです。
色んなことが頭を巡り冷静になれない時は、仕事を辞めた場合・続けた場合の夫々のメリット・デメリットを表にし、書き出すことをお薦めします。
現実的(時間増、収入減等々)なこと以外の感情ワードも遠慮なく書き出しましょう。
例えば、仕事を辞めた場合のデメリットとして、社会から孤立するようで不安、ずーっと介護だと心身ともにしんどい…等々
現実と感情を冷静に受け止め整理することで、自分がどのようにしたいのか、答えが見えてきます。
【仕事と介護の両立法②】家族(主人)と徹底的な話し合いの機会を早急に設ける
嫁が義母の介護をすることが当たり前の雰囲気の中、介護に対する正直な気持ちや仕事への思い・現状など、家族と話し合いの機会を早急に設ける必要があります。
- ご主人にとっては実の母、ご主人の気持ちを大切にし、また経済的なことも数字に表し話し合うこと
- 仕事を辞めると収入が減るなか、介護費用の負担は増えるという現実を理解すること
- 今まで義母の支援があったからここまで仕事を続けられた感謝があり、決して介護を避けている訳ではないことを理解してもらうこと
- 仕事を辞めて介護だけの生活だと孤独を感じストレスになり、そのような気持ちを持ちイライラせず冷静に介護ができるか等の不安も伝えること
【仕事と介護の両立法③】家族にとってベストなケアプランの作成
実際どのような介護をするのかは、ケアマネージャーと相談しながら、家族にとってベストなケアプランを作成してもうことになります。
ケアプランを作成するまでの大まかな流れは次のとおりです。
ケアマネージャーとの相談は、日頃の家族のタイムスケジュールを作成し進める。
家族の1日や1週間の生活パターン、仕事・プライベートなど全てを記入したタイムスケジュールを作成し、どの時間で介護が必要となり、どのような介護サービスを受けることができるかを相談し、ケアプランの作成となります。
仕事と介護の両立のためには、ケアプランがとても重要になります。
私の場合、訪問看護・通称介護などの様々な介護サービスを利用しましたが、変わったところでは“送り出し”のサービスがありました。
朝、家族全員が出勤した後、ディサービスの迎えの時間まで15分あり、慣れるまで義母を一人にするのは心配であることをケアマネージャーに伝えると、そのようなサービスを計画してくれました。
心配なことは全て、プロであるケアマネージャーに相談することがとても大事です。
【仕事と介護の両立法④】義母が介護状態であることを職場に報告
早々に職場に報告することで、上司同僚の理解を得ることができ、日常の業務が滞りなく進むようになります。
また、会社にも介護休業法に基づいた「仕事と介護の両立支援制度(介護休業・介護休暇・残業の制限など)」が制定されていると思います。
これを機会に、社内の「仕事と介護の両立支援制度」を理解し、どのような制度が仕事と介護の両立には役立つか把握し、両立のために利用できる制度があれば利用したいことも伝えていきましょう。
自らアクションすることが大事です。
要介護状態になる前(行動が少しおかしい等)に報告することをお勧めします。
介護認定を受けるまで職場を離れることは数回ありますが、介護サービスを受けるようになっても、施設から呼び出しあるなど、介護生活が落ち着くまでは、遅刻早退等職場を離れる機会は多々あります。
まとめ
介護離職、高齢化社会が進むなか、簡単に解決には至りません。また、それぞれの家庭・会社の環境により両立の難しい面は多々あると思います。先ずは、素直に仕事を続けたいか、否か、自分の気持ちに正直になりましょうね。
辞めることは簡単です。
安易に結果を出さず、どのような制度が利用できるか、どうしたら仕事を続けられるかをリサーチしましょう。それから答えを出しても遅くはありません。
私は、義母が認知症になった当初、会社を辞めるしかないと思っていました。
家族との話し合い、ケアマネージャーとの相談、様々な介護サービスの利用で、介護離職をすることもなく現在も仕事を続けており、介護生活8年目になりました。
介護ではイライラすることもありますが、仕事と両立できることで周囲への感謝の気持ちが大きくなっています。
必ずしも仕事と介護を両立して仕事をつづけよう、といっている訳ではありません。
色んな選択があってしかりです。
その選択は、あなた自身が納得しているかどうかです。
介護経験者として、介護に直面したとき、後悔のない選択をしてほしいと思います。