国家資格キャリアコンサルタント集団が斬る仕事論

【定年後再雇用の働き方】会社とWin-Winの関係で働き続けるためにやるべき方法は

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国家資格キャリアコンサルタント。中高年危機脱出キャリアコンサルタント。ソフトウェア開発、システムエンジニアを経て、人事部(労務管理・人材育成・キャリア相談)業務に従事。企業における職場環境・人間関係・セカンドキャリアに関するコンサルティングの他、中高年の危機を乗り越える支援の専門家として活動中。高知県出身、広島県在住。【好き】広島カープ、WoWoW海外ドラマ、坂本龍馬、広島風お好み焼きなど

定年間近のあなた!

定年後のプランは無いから、「定年後は再雇用でいいか」なんて安易に考えていませんか。

しかし「そうは問屋が卸さない」状況になってきています。

2013年に希望者全員に65歳までの雇用を義務つけた再雇用制度は、再雇用者にとって「やりたい仕事をアサインされなかった」「頑張っても報酬は変わらない」といった理由によって「再雇用者のモチベーションが低下している」という問題を会社は重く捉えていました。

そこで、会社は、再雇用制度に関して、現役時代のノウハウ、スキル、経験を生かして再雇用後も「会社にとって戦力になって働いてくれるなら」現役時代と同じ処遇にするという方向に変わってきています。

そこで中高年の方々を専門に支援しているキャリアコンサルタントの坪根克朗が、「会社はあなたの働きに満足」「あなたは充実したセカンドキャリアの実現」言うなれば、会社とWin-Winの関係で働き続けることができる「定年後再雇用の攻略法」についてお話していきます。

継続雇用制度には2種類ある

同じ会社で定年後も継続して雇用される制度(継続雇用制度)には、「再雇用制度」「勤務延長制度」の2種類あります。

私は、「継続雇用=再雇用制度」と思い込んでいました。どのように違うのか説明していきます。

再雇用制度

再雇用制度とは、定年年齢で一度退職扱し、退職金をもらった後、再度雇用する制度になります。

この制度では、役割や役職は変わり、契約社員や嘱託社員など新たな雇用形態で契約を交わすことになります。

ただ、会社との話会いによって希望の勤務時間や勤務日数などの労働条件を変えて働くことができます。

勤務延長制度

勤務延長制度とは「定年が過ぎても正社員のまま仕事を続けること」で、実質的な定年延長になります。

今までの勤務の延長ですから、役職や仕事内容、賃金水準などは大きく変わらないという特徴があります。

高度な専門性や熟練技能が必要な仕事とか、後任を得ることが難しい場合を想定して設けられた制度になります。

再雇用と違って、60歳定年時に退職金は支払われず、勤務延長後の退職時に支払われることとなります。

「再雇用制度」導入の会社は92%

2018年人事院が行った調査(民間企業の勤務条件制度等調査)では、定年制のある会社(4499社)のうち、「再雇用制度」を導入している会社は92%、「勤務延長制度」を導入している会社は、わずか8%という結果になっています。

したがって「継続雇用=再雇用制度」はあながち間違っていないことになります。

再雇用制度の課題と今後

再雇用制度の課題はどういうところにあって、今後どのように向き合っていけばいいのでしょうか。

再雇用制度の課題

再雇用を考えた時、本来は、個人の状況(能力・経 験、健康状態等)によって、希望する職種、職務内容、勤務条件等に幅を設ければよかったのですが、一般的に多くの会社では再雇用制度を肯定的に捉えていなかったので、再雇用後の「仕事内容、待遇・処遇を一律的」に扱っていました。

その結果、再雇用者のモチベーションの低下につながるといった課題が出てきたのです。

そこで、会社はこのような再雇用者のモチベーションを低下させないために再雇用制度の見直しを行っています。以下にいくつか事例を紹介します。

雇用延長制度の事例

以下の事例は、『ホワイトカラー高齢社員の活躍をめぐる現状・課題と取組み(2016年5月17日)一般社団法人 日本経済団体連合会』から抜粋しています。

人材公募型の雇用延長制度(IT企業 N社)

この会社では、元管理職に限って、本人の主体的なキャリア選択が重要であることから、再雇用後の業務に求められるノウハウ・スキル、処遇を示したうえで公募する形とし、個人と組織双方のニーズのマッチングを図っています。

そして、報酬は、市場の水準を参考にしながら、 業務に期待される生産性に応じて設定しています。

能力や経験に基づいた再雇用の実施(化学メーカー T社)

この会社では、実年齢にとらわれず、真に能力のある人材を活用する観点から、再雇用制度を運用しています。

再雇用の区分は、能力や経験をベースに、「社員再雇用」「全社常勤嘱託」「本部・部門嘱託」「海外関係会社嘱託」「国内関係会社嘱託」の5つとしています。

「社員再雇用」では、60 歳到達時と同じ処遇を継続するとともに、人事評価や目標管理等も定年前の社員と同様に実施しています。

再雇用者への業績評価制度の導入(消費材化学メーカー K社)

再雇用者の活躍に向けては、モチベーションの向上が不可欠であることから、実績評価制度を導入しています。

現役社員の制度と同様に5段階の評価とし、上司との間で設定した1年間の目標の達成度について、面談を通じて振り返り、実績評価の結果を一時金として反映する仕組みにしています。

会社が目指す再雇用制度は、60歳定年予定者にとってバラ色なのか

自己理解(才能、強さ)ができていて、自分が持つ保有スキル、専門領域が明確で、再雇用後、会社に貢献できる仕事を明確に言える人は、会社が目指している再雇用制度は「バラ色」でしょう。

しかし50代後半の役職定年から、自らがエンジンを切って、会社で目立たないように、言われた範囲でしか仕事をしてこなかった人には、会社が目指す再雇用制度は、「いばらの道」に思えてくるでしょう。

再雇用制度/再就職どちらがいいか

定年後の働き方として、フリーランスではない雇用される働き方を望むなら、再就職という道も考えられます。

そこで、定年後再雇用/定年後再就職をそれぞれ選んだ場合のメリット/デメリットを整理すると以下の図になります。

定年後再雇用/定年後再就職のメリット/デメリット

雇用される働き方を望むなら「定年後再雇用」が一番

再雇用制度への応募にしても、定年後から再就職するにしても、実現に向けて同じくらいのパワーを必要とすると思いませんか。

同じくらいのパワー使うなら、再雇用制度の場合は、「慣れ親しんだ会社環境/職場環境」があるわけですから、再就職の道を選ぶよりもずっと「敷居が低い」と思います。

ここからは、雇用延長制度の活用において、会社とWin-Winになる関係なって働き続けるための「定年後再雇用の攻略法」ついてお話していきます。

会社とWin-Winの関係になる定年後再雇用の攻略法5選

定年近くになって、再雇用制度が「いばらの道」かな~と感じた人でも、今から行動していけば、再雇用後も会社とWin-Winの関係で働き続けることができるようになります。

【攻略法①】自社の再雇用制度について調べる

再雇用制度は、会社ごとにどういう制度にするかは任されています。

ただ、会社の制度だからといって、会社から一方的に押し付けられるものではないので、不利益を被らないよう、人事とか再雇用で働いている先輩の話を聞いて、自社の再雇用制度について調べることから始めてください。

再雇用での仕事がどうなるか調べる

再雇用時の一番気になるポイントは、「再雇用後の仕事がどうなるか」ということだと思います。

仕事は、「公募制になるのか」「会社からの提示か(注1)」どのような形になるか調べておく必要があります。

どのような形で仕事が決まるのかわかっていないと、再雇用時の仕事に関する攻略法を見つけることはできません。

(注1)会社から提示の場合の留意事項

仕事の内容に関しては、定年退職前にデスクワークの「事務職」で勤務していた社員を「清掃員」として再雇用する事は違憲であるとの判決が出ています。このように、一般的に仕事の内容については、定年退職前と異なる“業種”で就労することは許されていません

再雇用制度で不利益を被ってないか調べる

再雇用者の雇用形態は、「契約社員」「嘱託」といった非正規労働者になります。

実は、2021年より施行された「正社員と非正規労働者間で不合理な待遇差をしてはいけない」という法律が適応されます。

そのため、賃金(注2)はもちろん、各種手当(通勤、住宅、家族、皆勤等)において正社員と不合理な待遇差があれば違法になります。

(注2)賃金に関する留意事項

「定年前と全く同じ仕事」「定年前と同じ労働時間」「定年前と同じ責任」なのに、賃金が定年前と較べて「減額された」場合は、会社は、法律違反を犯したことになる可能性があります

再雇用でも継続される制度

再雇用されても「有給休暇」「健康保険」「厚生年金保険」については、正社員と同じように各種制度は引き継がれます。

特に、「有給休暇」については、定年によりこれまでの勤続年数がリセットされると思われがちですが、同じ会社で再雇用される場合、労働契約が存続しているとみなされ、勤続年数は通算されます。したがって、勤続年数に応じた有給休暇がもらえます。

また、退職時点で未消化だった有給休暇は、再雇用後にも引き継がれます。

【攻略法②】働き続けたい組織の求人ニーズを探す

定年後再雇用で一番働きたい組織は、今現在自分が属している組織かもしれません。

しかし、場合によっては、出身地の近くにある地方拠点の可能性もあります。

そこで、働き続けたい組織の求人ニーズの把握が必要になります。

再雇用内容が公募されている場合

再雇用の仕事が公募されている場合は、公募されている「仕事内容」「必要な能力・スキル」をチェックしなければいけません。

また、公募したい先が定年前と同じ職場でない場合は、「職場環境」「組織の仕事の成果・実績」については社内HP等で調べておくといいと思います。

再雇用内容が公募されていない場合

公募されていない場合は、一般的に会社の再雇用者への期待は、以下の2つを求人ニーズとして考えておくといいと思います。

  • 今まで培った経験等を活かした専門能力の発揮
  • スキルやノウハウ、人脈や顧客等の継承を通した後進の指導

再雇用後の仕事については、この求人ニーズを参考に、「自分なら何ができるか」「自分ならこういう形で会社に貢献できる」ということを考えていけばいいのではないでしょうか。

【攻略法③】再雇用決定者を見つけておく

再雇用決定者とは、再雇用を決めてくれる人になります。

付け加えると、再雇用後の仕事を考えてくれる人です。

再雇用制度が始まったころは、仕事内容については、人事部で考えることが多かったのですが、再雇用を希望する人が増えたこともあり、最近では、現場(ライン)の組織長が再雇用の仕事(公募内容も含む)を決めるようになってきています。

もし、あなたが、同じ職場で再雇用してもらいたいなら、職場の組織長との関係は重要になってきます。

【攻略法④】いままでの会社への貢献を振り返る

再雇用制度の応募も再就職活動と同じ、「自分という商品」を会社に売り込む営業活動です。

営業活動とは、これまでに積み上げてきた「自分のスキル、ノウハウ、性格」によって、「会社にどのように貢献してきたか」を振り返り、アウトプットとして文章に残し、アッピールすることになります。

見せる相手は、再雇用決定者になります。

長い会社人生、上司は変わってきているのですから、今の組織長があなたの職歴、会社への貢献をすべて知っているわけではないのです。

こういう話をすると、「私は会社に貢献したことがない」「私には、スキルやノウハウはない」と言う人が必ずいます。

ただ、騙されたつもりで、以下のやり方で過去の職歴を振り返って書き始めてください。

程度の差こそあれ必ず見つかります。

過去の職歴の振り返りは4つのパートで作成する

振り返りは、「どんな会社に勤め(会社情報)」「どんな仕事にかかわり(職務内容)」「どんな実績を残したか(アッピール実績)」「免許・資格・教育(なにを学んだ)」といった4つのパートで構成されます。

作成にあたっては、”攻略法②“お話した組織の求人ニーズを意識しながら書いてください。

アッピール実績は「STARS」の法則で書く

アッピール実績を書く目的は、再雇用決定者に対して、過去の実績・成果から「新しい職場での成果の再現性や貢献の可能性」を読み取ってもらうためのものです。

そのためには、「STARS」の法則に従って、特に最後の「Self-appraisal」(振り返ってみてどう思ったか)を盛り込むことで職務経歴が自己満足に終わらずにストーリーとして完結するので、読み手にとってわかりやすく、理解しやすい文章になります。

【攻略法⑤】再雇用決定者とのコミュニケーション

再雇用後の仕事を決めるために、再雇用決定者への根回し(コミュニケーション)が重要になります。

上述の”攻略法④“で作ったアウトプットをもとに、仕事を決める再雇用決定者と再雇用後の仕事についてすり合わせておくのです。

言うなれば「再雇用に向けた押しかけ面接」ですかね。

もしあなたの会社が再雇用において公募制を採用しているなら、すり合わせた仕事内容を公募に出してもらえばいいと思います。

会社では、再雇用制度を希望する方が多いので、「どんな仕事をしてもらうか」で苦労していると聞きます。

仕事を決めるための「押しかけ面接」、会社にとっても「願ったり叶ったり」なのではないでしょうか。

まとめ

いかがですか。「定年後再雇用の攻略法」定年後のキャリアを考える参考になりましたか。

再雇用された後は、1年ずつの契約になりますが、会社の期待に応えていくことができれば、65歳前のタイミングで、会社から「労働条件、賃金はあなたの希望通りにするから、70歳まで働いてほしい」と言われることになるかもしれません。

※2021年改正高齢者雇用安定法で「70歳までの継続雇用が努力義務」になった

攻略法④”でお話した「いままでの会社への貢献を振り返る」これは1人で進めるのはなかなか難しいです。

キャリアコンサルタントに過去の職歴を聞いてもらいながら、書いて、添削して初めてアッピールできるものになってきます。

私が提供している中高年の危機脱出キャリア相談サービスでは、「いままでの会社への貢献を振り返る」ことを「自己取扱マニュアル作成」という形で支援をしています。

坪根克朗のプロフィール詳細はこちら>>

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国家資格キャリアコンサルタント。中高年危機脱出キャリアコンサルタント。ソフトウェア開発、システムエンジニアを経て、人事部(労務管理・人材育成・キャリア相談)業務に従事。企業における職場環境・人間関係・セカンドキャリアに関するコンサルティングの他、中高年の危機を乗り越える支援の専門家として活動中。高知県出身、広島県在住。【好き】広島カープ、WoWoW海外ドラマ、坂本龍馬、広島風お好み焼きなど










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