若手20代社員の早期退職(離職)を防ぐ!経営者必見の定着化施策鉄板5選
ある日突然、会社の優秀な20代若手社員から退職の意志を告げられる。
日頃の勤務態度もまじめで、不満を抱えている様子も見えなかったのに、引き留めの甲斐もなく1か月後辞めてしまった・・・。
経営者の皆さん、こんな経験ありませんか?
1990年代に生まれたゆとり世代と言われる方々が、20代になった頃の2009年くらいから、大卒者が3年以内で早期退職(離職)する割合が3割を超える状態が続いています。
経営者の皆さんにとって、少子化と超売り手市場において、採用がままならない中での20代若手社員の早期退職(離職)は、人材の育成含めた会社経営においては喫緊の課題ですよね。
会社において、若手20代社員が「退職願いを口に出す」「辞表を持って来る」状態になったら、正直言って、早期退職(離職)を止めることはかなり難しいと思います。
そのためには、経営者の方々には、ゆとり世代と言われる若手20代社員の「思考特性や行動特性」を理解していただき、早期退職(離職)を決めた「理由・原因」を把握したうえで、ゆとり世代の早期退職(離職)を予防する、すなわち定着化させる鉄板5つの施策について、長年、地方企業の若手20代社員のキャリア相談にのってきた地方活性化キャリアコンサルタント@坪根克朗がお話をさせていただきますね。
若手20代社員の離職率の現状
2017年3月卒業者の離職状況(2017/9/15厚生労働省)は、新規高卒就職者40.8%、新大卒就職者の32.2%が就職後3年以内に離職しています。
新規学卒就職者の離職状況(平成26年3月卒業)
若手20代社員の早期退職(離職)の問題点
若手20代社員の早期離職は、会社にとって大きなデメリットがあります。
・採用コストが無駄になる
・教育コストが無駄になる
・新な人材確保(採用)が難しい
採用活動や人材育成にかけたコストおよび3年の間で支払った給与・賞与、社会保険料を考慮すると、1人あたり600万~700万の損失を被るという話をよく聞きます。
若手20代社員の思考特性と行動特性とは
現在20代社員は、1987年から1996年生まれで、「ゆとり教育」と呼ばれる2002年から2010年にかけて施行された学習指導要領に沿った教育を受けたので、ゆとり世代と言われています。
最近では、ゆとり世代の進化系として「もの事を悟っている」という意味で「さとり世代」も言われるようですが、思考特性や行動特性に違いはないようです。
まずは、私や職場の皆さんが感じているゆとり世代の若手20代社員の思考特性、行動特性についてご紹介していきますね。
「ゆとり世代」の思考特性と行動特性とは?
ポジティブ(好意的)な見方とネガティブ(否定的)見方の2種類あります。
ポジティブ(好意的)な見方
・自己充実思考(会社にいても、それ以外の時間も自分の持てる力を発揮したい)
・社会志向(社会に貢献したい、役に立ちたい)
・ワーク・ライフ・バランスに共感(仕事以外の時間が大切)
・まじめで優秀
・良好な人間関係を好む(意見の対立で、感情が表にでる人が苦手)
・仕事での同期、友達・仲間などの横コニュニケーションが大事
ネガティブ(否定的)な見方
・欲(昇進欲、物欲)がない
・打たれ弱い
・リスク回避志向が高く、無理しない
・指示したことしかやらない、指示したことしかできない
・報・連・相が苦手(相談や報告をためらう)
・しかるとすぐ不貞腐れる
・待ちの姿勢
ゆとり世代の方々への見方、なんだか不思議な状況で、矛盾しているように見えますよね。
ゆとり世代の時代にはどんな変化が起こったの?
若手20代社員が生まれた1990年初頭にバブルの崩壊が起こり、日本の産業・経済の在り方、雇用形態が変化し、それに伴って、教育方針も変わりました。
バブル崩壊後の価値観の変化
ゆとり世代は、小さい時から不景気を経験しているので過剰消費に興味がなく、高望みはせず、いつも現実を重視するようになりました。
そして、リスク回避の堅実な生き方こそが安定した生活に繋がると信じています。
ゆとり教育による子供たちの「あり様」の変化
ゆとり教育によって、児童・生徒への評価方法が大きく変わったので、子供たちの「あり様」も大きく変わったと言われています。
1つ目は、「相対評価から絶対評価への転換」で他の人と較べる水平比較でなく、自分の中での成長を問う垂直比較が重視されるようになりました。
2つ目は、「知識や技能の獲得から、関心・意欲・態度を評価への変化」があげられます。
知識の獲得を問うテストで高い点を取ることだけでなく、「見えない学力」を問う授業への関心・意欲・態度で評価されるようになってきたのです。
これにより、挙手や発言に積極的に取り組む「真面目、素直な子」になっていくのです。
雇用形態の変化(終身雇用の崩壊)
バブル崩壊に伴い「いい会社に入れば、ある程度幸せな人生が送れる」という神話がなくなり、ゆとり世代は「自分で自分の生き方、キャリアを考え、決めていく」必要がで出てきました。
若手20代社員が早期離職し、定着しない原因とは
それでは、もう少しリアリティショックを具体的に観ていきますね。
仕事のリアリティショック
心理学者J・リチャード・ハックマンと経営学者グレッグ・R・オルダムが発表した仕事の特性に着目した「職務特性モデル」を使って、若手20代社員の仕事に関するリアリティショックについて考えてみたいと思います。
以下の「5つの特性」が、人の仕事へのモチベーションを左右する要因と言っています
- 技能多様性:多様な知識、ノウハウ、技術が必要な仕事である
- タスク完結性:一連の業務を最初から最後まで任されている
- タスク重要性:意義や価値の高い仕事である
- 自律性:自分のやり方で仕事を進めることができる
- フィードバック:仕事の結果・成果に関してお客様から反響や上司からのフォローがある
そして、モチベーションは、5つの特性を使って表わすと以下の式になるそうです。
モチベーション = (技能多様性+タスク完結性+タスク重要性)÷3
× 自律性 × フィードバック
若手20代社員は、5つの特性がある程度担保されていると思って入社してきます。
ただ、仕事を進めて行く中で、「自律性」「フィードバック」を感じない、例えば「自律性が全くない(=ゼロ)」または「フィードバックが全くない(=ゼロ)」と思ったとしたら、この状態を式に当てはめてみると「モチバーションが全くない(=ゼロ)」になってしまうことになります。
これでは、若手20代社員は、仕事でのリアリティショックで早期離職を考えてみるかも知れませんね!
頭の痛い話になりますね。
上下関係に基づくタテ社会となっている職場でのリアリティショック
ゆとり世代はフラットな横ネットワークを駆使して、お互いを尊重しながらコニュニティを構成して行動してきています。
そんな中職場に「上司は偉そうに振舞う」「上司が言うことは絶対、部下は黙って従えばいい」といった上下関係を重視するタテ社会のコニュニケーションがあったとしたら、リアリティショックを受ける若手20代社員もが出てくるのは当然のような気がします。
自己成長の仕組み(人材育成)へのリアリティショック
自己充実思考を持つゆとり世代は、会社が「自分を成長させてくれる」という期待感を持って入社してきます。
会社での人材育成は、先輩社員のやり方を「見て学ぶ」といった方法でのOJT(On the Job Training)がほとんどです。
職場のOJTの課題としては上げられる事は、仕事全体の意味、流れを把握していない若手20代社員にとっては、仕事を見せてもらっているだけでは、なかなか理解しにくいことです。
また、先輩社員も自分の仕事が手一杯で、彼らを教える時間が取れなく、若手20代社員をほったらかしにしている現実があります。
OJDがこの状況で、かつ若手20社員にとってのキャリアパス(教育や訓練での成長)が具体化されておらず、どのように仕事経験や知識をつけていけばいいのかステップアップの道筋が見えない会社には、リアリティショックを覚え、定着への不安を持ってしまいますよね!
人事評価(給料とのリンク)へのリアリティショック
会社では、若手20代社員といえども、早ければ3年目から、給料や賞与に差がつき始めてきます。
そして、横コニュニケーションで彼らは差をすぐ知ってしまい「同年代と同じ仕事をしているのに、なぜ給料と賞与に差が出るの」と会社の人事評価に疑問を持ちます。
会社においては、給料とか賞与を決める人事評価は、「絶対評価」は無理で「相対評価」にするしかありません。
給料や賞与を払うために原資(総額)から、社員の働きや成果に応じてお金を振り分けるのですから、相対評価にならざるを得ないのです。
これは絶対評価に慣れているゆとり世代にとって、リアリティショック以外のなにものでもないのです。
経営者必見の定着化施策鉄板5選
経営者の皆さんは、若手20代社員の5つのリアリティショックどのように感じましたか?
若手20代社員の早期離職の防止、定着化のためには「会社魅力認識」「採用」「職場(コニュニケーション)」「人材育成」「人事評価」について、会社全体を総合的に見直す必要であると思っています。
ただ、ゆとり世代の若手20代社員自身もリアリティショック対応として「環境対応力」を高めることも必要になってくるのではないでしょうか。
- 職場への好奇心:予期せぬ職場に配属されても、新しい世界に関心をもつ
- 当事者意識:希望しない仕事であったとしても、主体的に取り組む
- 達成意欲:やりきる力
- 自己信頼:将来に楽観的に評価を自分に下す
ここから、特に中小企業の経営者向けに若手20代社員の定着化に向けた5つの施策をお話していきますね。
【若手20代社員の定着化施策①】会社の魅力を再認識し、広報しよう
若手20代社員の離職はつらいです。ただ、20年、30年働き続けてくれている社員は辞めた人より多いはずです。
この方々がなぜ定着してくれたのか?
「働きやすい」「家の近所」「職場の雰囲気がいい」など個人個人違うでしょうけど何らかの思い、考えがあります。
その各自の思い、考えが会社の魅力なのです。
従業員からみた会社の魅力の調査
調査方法として、経営者と社員の方々が集まって話をするなんかがいいですね。
ただ、照れくさいという感じがあるでしょうから、第3者が、経営者や社員の方々からヒアリングしながら、まとめていく手もありますね。
また、いい話だけでなく、会社、職場としても問題点も出てくるので、その問題を経営者といっしょに考えることのできる人がいいと思います。
会社の魅力の発信
会社の魅力を共有するだけではもったいないので、アウトプットとして「会社パンフレット」「会社紹介HP」で紹介するといいと思います。
複数の年代の違う社員の方が登場して「会社の魅力」を語るなんていいですね。
経営者は、常に経営ビジョン、目標を語ろう
経営者は、会社を将来どのような会社にしたいか、どのような形で会社運営をしていきたいのか、経営ビジョンを常に語ってください。
そして、社員の目に届くところに、その経営ビジョン、目標を壁などに貼って、社員に会社が向かう方向を示してあげてください。
【若手20代社員の定着化施策②】採用活動を見直そう
仕事、職場、各種制度によるリアリティショックの原因は「本人の認識の甘さ」など個人の問題としがちですが、採用側でも会社のことをきちんと伝えられなかった部分での問題はあります。
このような場合は、採用活動の見直しが必要になってきます。
採用チャネルの拡大(リファラル採用の促進)
リファラル採用なんかどうでしょう。
リファラル採用
人材募集の際、社員を通して元同僚や学生時代の友人・知人といった人的ネットワークを通じて候補者を集めつつ、企業の社風・適性に見合った人材の採用選考を行い、基準を満たした人材を採用する
その他、アルバイトで働いてもらった方を候補者とするのもいいかもしれませんね。
仕事内容は理解してくれているし、会社の状況、様子もわかってくれているので即戦力で活躍してくれるのではないですか?
採用広報の見直し
採用広報とは、会社の魅力、強み、業務内容を知ってもらい応募者を集めることです。会社パンフレットでも会社HPでも以下の項目は最低ラインとして盛り込んでくださいね。
- 経営者のビジョン(思い)
- 主力製品
- 仕事内容
- 沿革(会社の歴史)
- 社員の声
広島県の尾道で、船に欠かせない「船舶艤装品」を造っている株式会社 京泉工業様では、「仕事の流れ」を社員で絵心がある人が漫画にして紹介したところ、大好評で応募者が増えたというお話を聞かせてもらったことがあります。
採用面接の見直し
まずは、今回採用したい人材、人数を会社と現場ですり合わせたうえで明確にしてくださいね。
そして、応募者も面接官を通して、会社を知ろうとしていますから、「雰囲気つくり」「質問の仕方」「聞いてはいけない質問」など面接ノウハウを身に着けて臨んでください。
面接時の重要なポイント
ぜひとも採用したい人が応募してきたら、あなたは会社にとって必要な存在ということを理由含めてストレートに伝えてあげてください。
人は、自分のことを必要としてくれる場所に身を置きたいと考えています。
そのために「なぜ必要とするのか」「応募者のどこを評価したのか」など明確に伝えてあげてください。
【若手20代社員の定着化施策③】職場のコニュニケーションを良くしよう
風通しのいい職場が良好な人間関係を生み出すと思います。
経営者や上司は、職場のコニュニケーションを良くするためにどんな心がけが必要になってくるのでしょうか。
社内コニュニケーションの場を意識的につくる
社員同士が話やすいコニュニケーションが取れる「場」を作ってまずは、コニュニケーションの「量」を増やしましょう。
合併により1万人を超える大きな組織になった会社では、組織の一体感をつくるため運動会や事業部対抗の綱引き大会などを復活させて、若手社員にとっても好評だったと聞きます。
- 挨拶運動
- 年初のキックオフ/成果発表会の実施とその後の懇親会
- 運動会、スポーツ大会、野球観戦、慰安会
- 創立〇〇年記念パーティ
若手社員は、職場の人間関係の改善は希望していますが、「仲良し」になりたいわけではないということは、知っておいてくださいね。
若手20代の先輩社員がメンターに
若手20代社員の中には、仕事に行き詰まり、相談したいのだけど上司も先輩社員忙しそうで相談できないため、心理的に孤立してしまい早期離職を決めてしますという話も聞きます。
このようなケースの解決方法として、歳の近い先輩社員をメンターとして、メンタル面や仕事面でのサポート役になってもらうという手もあります。
【若手20代社員の定着化施策④】人材育成に投資しよう
ここでは、若手20代社員が成長のための教育/訓練の話と、彼らの「環境適応力」を高める方法について、お話していきますね。
教育/訓練方針の策定
まずは、会社として、社員の成長を「どのような考え」で「どのように進めていくのか」という基本方針を策定して、社員に公開し、共有する必要があります。
教育/訓練体系の整備
教育/訓練体系図とは、会社における役割(担当/リーダ/管理職)や職務(設計/製造/スタッフ)に対応する教育や訓練内容を記述したものです。
これにより、自分の立場(役割や職務)により、習得しなければいけない教育/訓練がわかってくるので、自分のキャリア形成のステップと目標が見えてきます。
従業員別の教育/訓練スケジュールの作成とフォロー
教育/訓練体系図に基づいて、社員各自の受講スケジュールを年度の開始時に、上司といっしょ作成し、上司は教育/訓練の受講の進捗状況をフォローする必要があります。
環境対応力を高めるキャリア面談の実施
若手20代社員の環境適応力を高めるために「好奇心が大切だ」「当事者意識を持て」と口頭で注意しても高まりません。
彼らに「自分がとっている行動、態度を変えなくては」と気づいてもらう必要があります。
1人で気づくことは難しいです。
そこで、節目(入社時、半年後、1年後・・)ごとに、今までの仕事や経験を振り返りながら、彼らの「環境対応力」を確認していくキャリア面談が必要になってくると思います。
【若手20代社員の定着科施策⑤】人事評価制度を見直そう
人事評価の透明化とは、人事評価基準を明確化し、そのうえで、上司と人事評価のレビューを行うことによって実現できるのではないでしょうか。
人事評価基準の明確化
日本で使われている人事評価基準を明確化する制度には、「職能資格制度」「職務等級制度」「役割等級制度」3種類あり、会社として扱いやすく、社員にとってわかりやすい人事評価制度を導入すればいいと思います。
- 会社が社員に期待する職務遂行能力を区分し、序列化する日本独自の等級制度
- 勤続年数が長くなれば、それだけ職務を遂行する能力が高いと定義付け等級制度
- 等級ごとに給料・賞与を決定
- 勤続年数に関係なく、仕事を基準にした等級制度
- 職務記述書に記載されている職務を基準に社員を区別・序列化
- 職務記述書に記載している職務に応じて、賃金・賞与を決定
- 仕事を基準にした評価のため、会社・社員ともに公正・公平な人事評価が可能
- 管理職・非管理職に関わらず、仕事や役職に求められる役割を基準に社員を区別・序列化
- 職能資格制度や職務等級制度のメリットを集約した等級制度
- 数値を基準とした目標設定を定めやすく、成果に応じた人事評価が可能
- 非管理職の一般社員にも企業が求める役割を設定しやすく、目標管理がしやすい
上司/部下の人事評価面談の必要性
人事評価は社員にとって納得感が重要になってきます。
そのためには、会社は社員と人事評価について話し合う必要があります。
会社側は、客観的な事実(勤怠、仕事ぶり、仕事の内容、成果等)に基づいて話を進め、厳しい話ばかりでなく褒めるべきところは褒めてあげてください。
このような話合いを繰り返すことによって、仕事の「フィードバックがゼロ」という事態は避けられますね。
まとめ
若手20代社員が感じる各種リアリティショックを背景にして、彼らの早期離職を防ぎ、定着化に向けての施策をお話してきました。
各種施策について全て一気に進めることはできないですが、会社に合うできそうな施策から取り組んでみてください。
そして、会社に必要なことは若手社員1人ひとりに向き合い、1人ひとりを理解しようとする努力です。
定着してもらう施策はそこから始まります。
定着を図るためには、経営者の皆さんの「観察力」から感じた施策にかかっています。
今後もその「観察力」を磨いていってくださいね。
若手20代社員の早期退職(離職)に会い、定着化で悩んでいる経営者の皆さんの参考になれば幸いです。