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社員が不祥事(問題行動)を起した!経営者、会社がとるべき対応策9選

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国家資格キャリアコンサルタント。中高年危機脱出キャリアコンサルタント。ソフトウェア開発、システムエンジニアを経て、人事部(労務管理・人材育成・キャリア相談)業務に従事。企業における職場環境・人間関係・セカンドキャリアに関するコンサルティングの他、中高年の危機を乗り越える支援の専門家として活動中。高知県出身、広島県在住。【好き】広島カープ、WoWoW海外ドラマ、坂本龍馬、広島風お好み焼きなど

「幹部社員のカラ出張」「社員が傷害事件で逮捕」「経理が会社のお金を着服」「アルバイト社員のSNSの不適切動画投稿」このような不祥事の一報が入ったこんな時、あなたが経営者だったらどうしますか?

「ウチの社員に限って・・・・」という思いはあるでしょうが、社員はさまざまな思考、性格、背景事情を持っているので、社員の不祥事(問題行為)が起きない会社はないと言っていいのです。

そのような状況になった時、早期に事実確認をし、不祥事を起こした社員を処分するだけでなく、さまざまな利害関係者(被害者、社会)の状況を見極め、バランスを取りながら会社は対処していかなければなりません。

そこで、問題社員解決コンサルタントの坪根克朗が、社員が不祥事を起こした時の会社が取るべき9つの対応「初動対応」「不祥事調査(ヒアリング)」「不祥事調査(メール解析)」「社員への懲戒処分」「その他処分(退職勧奨)」「被害者対応」「広報対応」「警察対応」「不祥事の再発防止策」についてお話していきます。

社員が不祥事を起した!会社がとるべき対応策9選とは

会社で不祥事(問題行為)が発生した場合、下図のような対応が必要になってきます。

それでは、不祥事対応で一番重要な対応は何でしょうか。

それは調査です。調査の成功、不成功が広報含めたそれ以降の対応の命運を握っていると言って過言ではありません。

不祥事による会社が受けるダメージとは

社員が起こす会社の秩序の崩壊を「不祥事」といいますが、「子会社を使った数十億円にも及ぶ横領事件」から「社内での暴力事件」などピンキリです。

ただ、昨今のSNS安易な利用と共に、不祥事に関する情報は瞬時に社外の不特定多数の知るところになっていまい、会社が以下のようなダメージを受けてしまうのです。

信用の失墜

「内部統制のできていない会社」というイメージが広がり、長年かけて築き上げてきた「消費者・取引先」「株主」「求職者」からの信用が一気に失われることになります。

損害賠償・株主代表訴訟

株主代表訴訟の手続きが簡素化されたこともあり、コンプライアンス違反で企業がダメージを受け、株価が下がったような場合、株主は経営層に対して損害賠償を求める訴えを起こしやすくなりました。

企業風土の荒廃

あってはいけない会社の姿ですが、違法行為を当然とするような事業運営を行っていると、そこで働く従業員も不正を当たり前のように感じてしまうことがあります。

その結果、消費者や取引先への不当な営業、自社の物品や資金の横領、不良品の見逃しなど、会社風土が荒廃し、問題を起こしやすい環境になってしまいます。

不祥事の主体

不祥事を誰が起こしたか、会社との契約形態によって処分の仕方が違ってきます。

誰でも彼でも「会社の就業規則での懲戒処分」はできないのです。

社員が起こした不祥事に対して会社がとるべき対応策9選

ここから社員が不祥事(問題行為)を起した時の会社がとるべき対応策についてお話していきます。

【会社がとるべき対応策①】初動対応

初動対応とは、社員が起こした不祥事が「不正」に値するか、本格的に調査を開始するかどうかを判断することになります。

就業規則の懲戒事由の確認

「会社の就業規則の懲戒事由にない行為は、懲戒処分にできない」という法律があるため、まずは、通報者によってもたらされた不祥事が「就業規則の懲戒事由」に相当するかどうかの確認がいります。

もし、不祥事に該当する懲戒事由がなければ、社員に鉄槌を下すことはできないのです。

一言アドバイス

懲戒事由の漏れを防ぐためには、懲戒事由の最後に「その他前各号程度の不都合な行為のあった者」といった包括的規定を置く必要があります。

本格的な調査を開始するかどうかの判断

会社では、様々な通報が寄せられます。中には、怪文書まがいの通報や上司や同僚への誹謗中傷、いやがらせ、逆恨み、人事への報復として虚偽の通報が持ち込まれることがあります。

通報すべてについて、会社として正式な社内調査をすることは現実的ではありません。

まずは、通報者へのヒアリングを通して、話の信憑性を探る必要があります。

そのヒアリング方法については、「不祥事の調査(ヒアリング)」で詳しくお話していきます。

【会社がとるべき対応策②】不祥事の調査(ヒアリング)

それでは、不祥事の調査はどのように進めていくのでしょうか。

不祥事の調査プロセス

不祥事を調査するプロセスは以下の順番で行われます。

  1. 内部通報者からのヒアリング
  2. 誰に聞くか等調査の範囲、計画の策定
  3. 客観的な証拠資料(メール、社内文書、ビジネス手帳)の収集
  4. 関係者からのヒアリング
  5. 不祥事の嫌疑者からのヒアリング

ヒアリング調査のおける3つの原則

ヒアリングにあたっては、以下のような3つの原則があります。

  • 通報者保護:告発者探しをさせないためにも、通報者氏名等の秘匿は重要
  • 調査は秘密裏:不祥事行為者の証拠隠蔽や関係者への圧力をかけさせないために重要
  • 集中調査:話が広がり、証拠隠蔽や口裏合わせをさせないために重要

対象者別ヒアリング目的、内容と方法

「内部通報者」「関係者」「不祥事の嫌疑者」といった対象者別にヒアリングの目的、方法やヒアリングのポイントが違ってきます。

ヒアリング方法は、「オープン質問法」「一問一答法」の2種類あり、違いや特徴は以下のようになっています。

オープン質問法

オープン質問法とは、「話す内容について細かい条件を設定して話してもらうのではなくて、当該不祥事について知っていることを全て話してください」という姿勢で質問する方法です。

ただし、ヒアリング時には、以下の点に注意する必要があります。

  • 聞き役に徹し、話の腰を折らない
  • 誘導質問しない
  • 記憶を喚起する必要があるので、矢継ぎ早な質問をしない

一問一答法

一問一答を繰り返しながら、相手の発言を吟味し、発言間の矛盾をついていく方法です。

【会社がとるべき対応策③】不祥事の調査(メール解析)

メール解析は、今日では社内調査では最も効果的な調査手法です。

ただ、メールの解析は常に社員のプライバシー侵害問題と背中合わせとなります。

不祥事の嫌疑者のメール解析することができるのでしょうか

できます。不祥事が明確で、嫌疑者が明確になっているなら、嫌疑者のメールをチェックすることは法律で許されています。

【会社がとるべき対応策④】不祥事行為者への懲戒処分

懲戒処分とは、会社が従業員の企業秩序違反行為に対して課す制裁になります。懲戒処分を下す目的は二つあります。

懲戒処分を下す理由

  • 不祥事を起こした本人に制裁を加えることで、会社秩序の維持
  • 社員全員に対し、懲戒処分を受けた社員の問題行動が好ましくない行為であることを明確に示すことにより、会社秩序の維持

懲戒処分の内容と問題行動(判例から)

懲戒処分には、戒告・譴責、減給、出勤停止、降格、諭旨解雇、懲戒解雇等があります。

懲戒の意味だけでは、制裁の軽重がわかりにくいので、裁判で「妥当」との判例がでた問題行動を示します。

【会社がとるべき対応策⑤】その他処分(退職勧奨)

「電車での痴漢行為で警察に捕まった(刑が確定)」などの不祥事のケースでは、懲戒解雇などの重い処分をすることはできません。

しかし、そのまま会社にとどめておくことが難しい場合は、退職勧奨を勧めることがあります。

会社としては、訴訟リスクを無くし、不祥事行為者にとっても経歴に傷がつかないので、再就職に影響を及ぼさないというメリットもでてきます。

以前私のブログで問題社員を円満に退職させる方法(退職勧奨)について書いていますので、読んでみてください。

【会社がとるべき対応策⑥】被害者対応

社員の不祥事によって、会社以外にも社外の方にも被害を及ぼす可能性がでてきます。

被害者への対応を誤ると、被害者が会社に対する敵対感情を増大させ、さらなるトラブルに発展してしまいます。

したがって、会社は、被害感情をやわらげ、会社に対する反感の矛先を収めてもらうために会社としての適切な対応が必要になってきます。

被害者対応のプロセス

被害者対応は、以下のように進めます。

  1. 不祥事発生
  2. 被害者対応の要否判断
  3. 担当者(窓口)設定:責任者は、人事か総務の部門長クラス
  4. 被害者へコンタクト:メールではなく電話、被害者の自宅かその周辺
  5. 面談日設定:被害者の都合に合わせる
  6. 面談(初回):被害に応じた訪問者を決める
  7. 面談(2回目以降):事実関係の調査結果の報告

被害者対応の要否判断

被害者対応を会社がするかどうかの判断基準は、「会社側に使用者責任がある」場合は、必須になり、「会社に側に使用者責任がない」場合でも、被害者の会社へのクレームの有無やクレーム内容の程度によっては、対応せざるおれなくなります。

面談時の担当者の心構え

  • 会社として誠実に対応する姿勢を理解してもらう
  • 被害者のつらさは共感するが、会社の正当性は図らない
  • うそを言わない
  • わからないことをその場で答えない

初回面談時の留意事項

初回面談時での留意事項についてお話します。

  • 被害者が亡くなった場合の出席者は、社長、担当役員は必須
  • 面談にあたって、何を話すか決めて、想定質問も用意するなどの準備は必要
  • 謝罪については、事実関係の調査中なので「社員が不祥事を起こしたこと」のみ
  • 面談中のQ&Aは「事実関係を調査確認中」を全面に出して回答

2回目以降面談時の留意事項

2回目以降の面談時の留意事項としては、「会社側が放置している」と思われることはよくないので、面談以外でも電話等で連絡を取り合う必要はあります。

【会社がとるべき対応策⑦】広報対応

広報対応の目的

広報対応を行う目的は、不祥事が不特定多数、世間一般に誤った情報で拡散することを防ぎ、会社の信用棄損のリスクを回避、あるいは最小限にとどめることにあります。

広報対応するかどうかの判断基準

いかなる不祥事も広報対応するべきなのでしょうか。

広報対応する必要のない案件もあるのです。

ただし、以下については必ず広報対応をしなければいけません。

  • 二次被害の可能性の高い不祥事
  • 生命、身体、健康(食品等)に関係する不祥事
  • 一般投資家あるいは株式市場に関わる不祥事
  • 会社ぐるみの不祥事
  • ネットで拡散中の不祥事

広報内容

広報は株主、債権者、一般消費者等ステークホールダーや世間一般に対する不祥事原因等の公開である以上、世間の注視、関心、疑問、期待に応えることのできる内容でなければいけません。

  • 不祥事発覚までの経緯:不祥事発覚から、会社がどのよう対応してきたかも必要
  • 不祥事の原因:直接の原因だけでなく、背景要因や会社風土の分析も必要
  • 不祥事の危険性および社会的影響、二次被害の可能性
  • 過去の類似案件、類似事故の有無と内容
  • 再発防止策

【会社がとるべき対応策⑧】警察対応

社員が起こす不祥事の中には、犯罪に該当し、その結果警察に身柄拘束(逮捕・拘留)され捜査される場合があります。身柄拘束から裁判で判決が出るまでの各ケースで会社が対応する内容についてお話していきます。

司法における「無罪推定」の原則と懲戒処分

犯罪行為を理由として逮捕・拘留された場合であっても、起訴され、有罪判決がでるまでは「無罪推定」の原則が働くので、会社は有罪を前提とした懲戒処分を下すことはできません。

「無罪推定」の原則とは、刑事裁判で有罪判決を受けるまでは、被疑者や被告人を無罪として扱わなければならないという原則

逮捕・拘留された場合の扱い

逮捕・勾留中の場合、会社に何の連絡もなく欠勤が続いた場合は「無断欠勤」に当たります。

しかし、家族から連絡があり、逮捕され身柄が拘束されているために出勤できない場合には、「欠勤扱い」もしくは「年次有給休暇の消化」という形で取り扱います。

不起訴とされた場合の扱い

検察官の捜査処理としては、不起訴の場合「起訴猶予」「嫌疑不十分」「嫌疑なし」という3種類があります。

不起訴になった場合でも、不起訴の内容によって、会社で下す処分に軽重をつけることができます。

起訴された場合の取り扱い

起訴された場合には、保釈されない限り勾留は続きます。

勾留期間は長引くので、年次有給休暇は消化されていまい、欠勤扱いになります。

欠勤が続いたことを理由に懲戒処分を下すのは、病気による欠勤との整合性からいってもできません。

「起訴休職」という処分になります。

そして「起訴休職」は無給です。また、保釈になっても「起訴休職」は続きます。

【会社がとるべき対応策⑨】不祥事の再発防止策

社会的に注目を浴びる不祥事ほど、今後の予防も兼ねた再発防止策が必要になります。

根本原因を「なぜなぜ分析」で見つけ再発防止策を練る

不祥事を起こさないようにするためには、まずは、不祥事が起こった原因の追究とそれに対する対策が必要になります。

原因には、表面上の原因である「直接原因」と真の原因である「根本原因」があります。

「根本原因」の対策でないと効果はありません。

「根本原因」を見つけるには、何回(目安3~5回)もしつこいくらい「なぜ」を繰り返すことによって「直接原因」から「根本原因」に達することができます。

根本原因がわかれば対策は、簡単にみつけることができます。

コンプライアンス意識の醸成

社内にコンプライアンス意識を醸成し、 従業員、役職員の一人一人が、法令に違反しないという意識を持つように することが不祥事予防の出発点になります。

そのためには、 以下のような施策が必要になります。

  • 「コンプライアンス方針」 など作成にてコンプライアンスに対する姿勢を明確にする
  • 「コンプライアンスマニュアル」のように具体的な注意点を記載した文書の作成と配布

コンプライアンスの社員研修の実施

次に、コンプライアンスに関する社員教育です。

実際に起きた不祥事の実例を生々しく紹介し、グループ毎に不祥事の事前対策 ・事後対応を議論し、発表させることで参加者の一人一人の意識を高めるような研修などが必要になります。

専門部署(コンプライアンス室など)の設置

社内にコンプライアンスを専門とする部署を設置し、不祥事につながる情報を集約し、大小を問わず、日々、内容を分析することすることで、不祥事の兆候を見逃すことなく迅速な対応ができるようになります。

まとめ

コンプライアンスに対して社会的な関心が高まったこともあり、不祥事対応を誤ったばかりに、会社イメージ、ブランドが大きく損なわれ、信頼を回復するには長い年月を要している会社は少なくありません。

不祥事対応は、リスク管理の一環で準備が重要なのです。

日頃から不祥事が起こった場合を想定して、何をすべきか考えておく必要があります。

TC坪根キャリアコンサルティングOfficeでは、社員の不祥事対応のコンサルティングや不祥事対応マニュアルの提供が可能です。社員の不祥事対応でお困りでしたら、ご連絡してください。

坪根克朗のプロフィール詳細はこちら>>

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国家資格キャリアコンサルタント。中高年危機脱出キャリアコンサルタント。ソフトウェア開発、システムエンジニアを経て、人事部(労務管理・人材育成・キャリア相談)業務に従事。企業における職場環境・人間関係・セカンドキャリアに関するコンサルティングの他、中高年の危機を乗り越える支援の専門家として活動中。高知県出身、広島県在住。【好き】広島カープ、WoWoW海外ドラマ、坂本龍馬、広島風お好み焼きなど










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